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ホンダが需要家で世界最大のNAS電池、瞬低対策用を系統安定化に活用(page 6)

2018年初の大寒波時には、東電の遠隔DRで実運用も

2019/10/02 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
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負荷平準化、瞬低対策からDR、VPPまで

 こうした構内系統において、NAS電池はまず、負荷平準化や瞬時電圧低下(瞬低)による影響回避に使ってきた。

 負荷平準化では(図9)、NAS電池を、季節の変動に応じて高効率な運転パターンでスケジュール運転し、所内の他の電源と連携させている。ガス発電の設備利用率の向上や、太陽光発電の有効活用にも寄与している。

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図9●負荷平準化した所内の需給例
(出所:本田技術研究所)
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 瞬低対策では、NAS電池の瞬低補償機能を活用し、電力品質の安定性が求められる重要な研究設備への影響を最小化している(図10)。重要な設備への電力供給を、短時間で系統電源から蓄電池の放電に切り替える。電力系統側の瞬低(電圧低下が約70ms継続)に対して、所内の重要設備側の電圧低下を6ms程度に短縮している。

図10●瞬低システム動作時の波形例
(出所:本田技術研究所)
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 瞬低は、試験データの欠損や試験品質の低下につながり、再試験を実施しなければならない場合もある。これを防ぐのが目的である。

 また、東電グループと連携し、NAS電池を使ったVPP(仮想発電所)やDR(需要応答)の実証試験に取り組んできた。

 例えば、2016年から、東電グループとともに、高度制御型DR実証事業に参画している。2016年度は、NAS電池に対して、閉域通信網から10分前指令による自動増出力制御で、高速なDRの動作を成功率92%という高精度で成功させた(図11)。

図11●DRの実証試験時の動作例
(出所:本田技術研究所)
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 ここでは、DRの動作後の負荷変動をNAS電池で制御しつつ、基準値に準じた予定DR出力に対して、平均誤差を±5%未満に維持できた。

 NAS電池は、定格の放電パターンに対して、一定の放電余力を有している。これを有効活用し、送配電事業者に対して、需給調整力や予備力を提供できることを示せたとしている。

 2018年1月末~2月初旬にかけての大寒波の時には、東電からの要請を受け、実際に遠隔からの自動DR指令により増出力運転し、調整力として活用した(図12)。

図12●大寒波時の指令発動時の動作例
(出所:本田技術研究所)
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 この時、東電管内では需給がひっ迫していた。アグリゲーターである東電からの要請を受け、暖房需要が増える朝夕の時間帯に、朝3時間、夕3時間の合計6時間の遠隔からのDR指令に対し、完全自動運転で東電管内の需給改善に寄与した。この要請は連日のものとなったが、機動的に対応でき、高速で信頼性の高いDR動作を実現したとしている。

 今後、将来的な運用の姿として、近隣する複数の事業所をネットワーク化する試みがある(図13)。

図13●広域での活用のイメージ
(出所:本田技術研究所)
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 こうした取り組みでは、宇都宮市の清原工業団地において、3社の7事業所に対して、東京ガスが6MW級5台のコージェネを主体とした電力と熱を供給するオフグリッドの「清原スマートエネルギーセンター」の例が先行している。今後、こうした複数企業・事業所間をネットワーク化し、かつ、自家発電のみで賄うオフグリッドへの動きが加速していくと見られる。

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