再エネ蓄電池プロジェクト最前線

太陽光とEVでVPP、充放電システムが支える

各地の実運用や実証で実績の双方向充電器

2020/06/24 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 愛知県豊田市内にある公共施設や企業の事業所において、電気自動車(EV)の蓄電池を束ねて電力会社の系統と充放電するVehicle to Grid(V2G)を実施し、仮想発電所(VPP) として活用する実証が行われた。

 この「V2Gアグリゲーター」実証事業は、豊田通商と中部電力が共同で実施した。

 目的は、太陽光発電などの再生可能エネルギー発電電力をより多く活用できる仕組みの確立にある。EVの蓄電池に再エネの余剰電力を貯めたり、商用系統の需給調整に活用したりするための技術やシステムを検証した(図1)。

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図1●豊田通商と中部電力による実証
図1●豊田通商と中部電力による実証
(出所:椿本チエイン)
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 実証は2018年、豊田市の市民文化会館の駐車場を活用してはじまった。2019年には、自動車部品メーカーである椿本チエインの豊田営業所も加わった。この2カ所で、V2Gの調整力や、無効電力を系統に送った場合の電圧変動対策などを検証した。

 V2Gの調整力では、中部電力による需給調整の指令をもとに、実際に営業などの業務で使われているEV、従業員が通勤に使っているEVの両方の蓄電池を制御して需給調整のために運用して検証した。

 こうした仕組みは、再エネとEVが大量に導入されていく過程で必要と予想され、技術の課題は克服しつつあるが、現時点では、制度面で環境が整っていない。VPP実証などの動向を見据えつつ、準備を進めるという方向性になっている。

 複数のEV蓄電池を束ねてVPPとして使う場合、全体のエネルギー管理システム(EMS)の制御に従って、スムーズにそれぞれを連動できることが理想となる。

 EV自体にそうした機能はない。そこで、V2Gの充放電システムがカギを握る。EVの蓄電機能を多く取り込んだVPPやV2Gに必要な機能の多くを、EVの充放電システムが担うことができれば、全体のシステムを簡素化、低コスト化できる。

 この需要を見据えたEVの充放電システムが登場している。例えば、豊田通商と中部電力による実証では、要求を満たすEV充放電システムとして、椿本チエインの「eLINK」を採用した(図2)。

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図2●V2Gの機能を持つEVの充放電システム
図2●V2Gの機能を持つEVの充放電システム
(出所:椿本チエイン)
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 「eLINK」はEVと商用系統間の充放電にとどまらず、EVとビルや工場などの構内系統と連系しつつ、太陽光発電と連携するさまざまな充放電の制御を可能とする。現時点で実用的な用途である、停電時の非常用電源やピークカットに使う仕組みとして、公共施設などに採用実績がある。

 EMSの指令による高精度・高応答な充放電制御だけでなく、無効電力も注入できる。これによって、商用系統の電圧安定化への貢献など、分散型電源に求められている連系要件をすでに実現できる仕様となっている。

 こうした機能を持つEVの充放電システムを使って、オフグリッド型で太陽光発電電力を最大に活用する企業も出てきた。

 例えば、福岡県大牟田市にあるバイオマス発電所を運営しているシグマパワー有明である。同市にある三川発電所の事務所では、太陽光とEV、定置型蓄電池を連携制御している(図3)。

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図3●太陽光発電とEV、定置型蓄電池を連携制御
図3●太陽光発電とEV、定置型蓄電池を連携制御
(出所:上はみずほ東芝リース、そのほかはシグマパワー有明)
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 太陽光パネルはカーポートの上に並べた。社用のEVが1台、定置型のリチウムイオン蓄電池(東芝の「SCiB」)がある。太陽光の発電量が多い時間帯には事務所内で自家消費しつつ、余剰分をEVと定置型蓄電池に充電する。太陽光の発電量が少ない時は、EVと定置型蓄電池から放電して事務所の電力需要を賄う。

 こうして太陽光発電電力を無駄なく使いつつ、系統電力の受電量を最小化できる。

 カーポート型太陽光発電システムと定置型蓄電池は、リースを活用して導入した。リースはみずほ東芝リースが担っている。

 災害時にも電気を使えることから、大牟田市はシグマパワー有明と災害時の電気供給に関する協定を締結している。

 さらに発展すると、都市部の大規模なオフィスビルにおいて、敷地内の太陽光発電、EV、定置型蓄電池を連携させることも想定できる。

 実証段階だが、西日本電信電話(NTT西日本)の山口支店では(図4)、日産自動車、NTTスマイルエナジーと連携した。日産はEV関連、NTTスマイルはビルの構内系統との充放電を担った。

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図4●NTT西日本の取り組み
図4●NTT西日本の取り組み
(出所:NTT西日本、日産自動車)
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 NTT西日本の山口支店では、カーポート型の出力16.5kWの太陽光発電、社用EVとその充放電システム3台ずつを連携させた。EVの充放電はクラウドコンピューティングを活用して制御した。

 カーポート型太陽光の電力は、オフィスビルで自家消費する。太陽光とビル内の消費電力の状況に応じて、ビルの消費だけでは余ってしまう時間帯、逆に足りない時間帯にはEVの蓄電池を充放電する。本業の業務におけるEVの活用状況を変えることなく、系統電力の受電量をいかに削減できるか、2018年12月から検証した。

 その間に、実証用EV以外に、訪問者がEVに乗ってくることがある。この場合を想定し、充放電システムのタッチパネルを通じた認証によって、来客のEVに実証の充放電をしない仕組みとした。

 実証では、夏季のピークカットの効果を確認できた。系統からの受電量、日射量の予測に基づく太陽光発電量の予測、オフィスビルの電力需要の予測などから、需要ピーク時間帯(9時~15時)にEV3台の蓄電池を同時に放電するように設定した。

 太陽光発電の自家消費で6.6kWh、EVから放電した7.5kWhと合わせ、14.1kWhのピークカット効果が得られた(図5)。

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図5●効果の例
図5●効果の例
(出所:NTT西日本)
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 対象日の予測精度は89%、ピークカットを狙った時間帯に限れば94%となり、概ね精度よく予測できたとしている。

 同じように日産のEV「リーフ」を使った例として、神奈川県の横須賀市の取り組みがある。横須賀市では、8カ所(追浜、田浦、衣笠、大津、浦賀、久里浜、北下浦、西)の行政センターに「リーフ」を1台ずつ導入した。平常時の行政センターにおける需要ピークのカットと停電時の非常用電源として活用している(図6)。

図6●行政センターでの導入例
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図6●行政センターでの導入例
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図6●行政センターでの導入例
(出所:横須賀市)

 EVの充放電システムは椿本チエインの「eLINK」を導入し、ピークカットや節電要請時の制御を担っている。他の例と同じように、停電時には分電盤で系統から切り離し、EVから行政センター内の機器やコンセントに電気を供給できる。

 この取り組みは、椿本チエインの主要な事業所のある地方自治体に展開していく。6月には、京都府京田辺市に寄贈した。同市では、産業用チェーン工場を操業している。

 同じように今後、埼玉工場のある飯能市、長岡京工場のある長岡京市にも寄贈する予定としている。