再エネ蓄電池プロジェクト最前線

お茶どころ・掛川の製茶を支える自家消費システム

日中は冷凍や乾燥、余剰は貯めて事務棟に

2020/11/11 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 静岡県掛川市は、国内屈指の銘茶の産地として知られる。お茶の栽培に適した自然環境に恵まれ、茶畑が広がっている。

 このお茶どころを支える1社が、佐々木製茶(掛川市上内田)である。茶畑での栽培・育成・収穫から最終商品まで一貫で生産している。

 同社は2019年冬、自家消費用の太陽光発電と蓄電システムを導入した(図1)。

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図1●自家消費型の太陽光発電・蓄電システムを導入した佐々木製茶の本社
図1●自家消費型の太陽光発電・蓄電システムを導入した佐々木製茶の本社
(出所:佐々木製茶、上から3枚目はエネテク)
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 太陽光パネルは製造棟などの屋根上に並べた。パネルの出力は205.920kW、パワーコンディショナー(PCS)の出力は120kWとなっている。

 太陽光パネルはエクソル製の出力330W/枚を624枚、PCSは安川電機製の定格出力10kW機を12台設置した。

 蓄電池システムは、CONNEXX SYSTEMS(京都府精華町)製を採用し、定格容量4kWhの製品を2台導入した。

 太陽光発電電力は、製造棟が稼働している平日と土曜日は、全量自家消費している。稼働していない日曜日などに余った太陽光発電電力は、蓄電池に貯めて事務所で使っている。

 事務所では、おもにサーバーなどのIT(情報技術)機器で使っている。このため、蓄電池システムは事務所棟のサーバールーム内に置いている。

 同社は、食品安全管理の基準である「FSSC22000」を取得しているほか、掛川市と地球温暖化対策で協定を結ぶなど、環境配慮や安全に対する意識が高い。

 こうした中、いわゆる創エネと省エネを重視する考えを強め、その一環として、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自家消費システムを導入した。FSSC22000に準拠した新建屋も建てている。

 導入を前に、2018年に電力の使用状況を調査し、電力使用効率が良い設備、悪い設備や運営の手法を把握した。とくに効率が悪い設備は、古くから使い続けている冷凍設備や、空気圧縮機(コンプレッサー)だった。

 そこで、古い冷凍設備は省エネ型に交換した。自家消費用の太陽光発電システムとともに、「2019年度(平成31年度)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」(CO2削減ポテンシャル診断推進事業のうち低酸素機器導入事業)を活用した。ただし、蓄電池システムの導入では補助を活用していない。

 同社は同時に、お茶の最終製品の生産量も増加している。年産能力を約1.5倍に増やした。

 既存の状況で年産能力を1.5倍に増やすと、消費電力は1.5倍以上に増える。

 しかし、同社の場合、「冷凍庫内の冷凍設備の更新」といった生産設備の省エネを絡めて増強し、かつ、自家所消費型の太陽光発電システムを導入したことで、電力購入量が約5%減っている。

 消費電力は増えているが、省エネにより本来の増加量に比べて抑えた。さらに太陽光発電電力をフルに活用することで、買電量を減らすほどの効果を生んでいる。

 これによって、本来なら電力購入量が1.5倍以上に増えるところを、実際には、電力会社との契約容量(デマンド値)を従来より約30kW下げられるほどの効果という。

 太陽光の年間発電量は、約22万kWhを見込んでいる。このうち、自家消費できるのは20万kWhと試算している。ロス分は、主に日曜・祝日の未稼働日に生じる。

 1月~9月の発電量は、約17万kWhだった。これで消費電力の約30%を補えた。

 実は、この間の消費電力は、当初の予想よりも多かった。主に、新型コロナウイルスの感染抑制対策として、製造担当者の勤務体制・時間を変えたことによる。日曜日にも稼働する日が出てくるなど、設備の稼働時間としては長くなった。

 こうした発電量や消費電力の状況は、リアルタイムで把握できる。ひと目でわかる表示システムを採用した(図2)。

図2●ひと目でわかる表示画面
図2●ひと目でわかる表示画面
(出所:佐々木製茶)
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 このシステムは、太陽光発電・蓄電池システムのEPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスを担っているエネテク(愛知県小牧市)が構築した。

製茶の消費電力は、主に冷凍や乾燥

 お茶の製造で、電力を多く使うのは冷凍庫や乾燥機などである(図3)。

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図3●冷凍庫(上)、乾燥機
図3●冷凍庫(上)、乾燥機
(出所:佐々木製茶)
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 掛川では、茶畑から年に4回、お茶を摘む。4回とも茶の新芽を摘み、4月末~5月上旬に摘む「一番茶」、6月に摘む「二番茶」、7月末~8月上旬に摘む「三番茶」、9月末~10月上旬に摘む「四番茶」と続く。

 摘んだ時期ごとに、お茶の性質は大きく変わる。同じ性質のお茶は、年に一度だけの期間に摘んで、それをその後の1年間をかけて販売していく。

 しかし、お茶の葉は、そのままでは劣化してしまう。このために、摘んだ葉を揉んだ後、-27℃などで冷凍して保存する。

 お茶の小売店など顧客の需要に合わせて、冷凍保存してあるお茶の葉を解凍、ブレンドして出荷する。この解凍、ブレンド、出荷の作業は、佐々木製茶の場合、日曜日以外は日々、続けている。顧客が望むタイミングと量に合わせて出荷までの作業を進めていく(図4)。

図4●茶畑で摘んでからの製造工程
図4●茶畑で摘んでからの製造工程
(出所:佐々木製茶)
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 冷凍庫以外に電力需要の多い乾燥機などは、この作業に使う。

 これまでエネルギー面で困ったのは、最近では2018年秋の台風による停電だった。掛川市は、とくに復旧までの時間を長く要した。

 佐々木製茶でも、3日間停電が続いた。その間は、冷凍庫を開けないようにして、庫内の断熱効果を最大限に生かす運用を試みた。この結果、冷凍していたお茶の葉は無事で、品質に問題が生じることはなかった。

 冷凍庫については、停電しても自立型の太陽光発電システムと蓄電池があれば、ある程度、問題がないというのは、こうした運用の経験にある。製造が止まる17時以降は、冷凍庫を開けることがなく、外気温も低いので、冷凍庫の消費電力は大きく下がる。

発電は期待していた以上、他の工場にも広がる可能性

 太陽光発電システムの導入では、「机上の計画の通りに発電するものなのかどうか」など、やや懐疑的な面もあったという。

 導入してみると、予想していた以上に発電することを実感したとしている。2020年7月は雨が多く、この時だけは予想を下回ったが、ここまで極端な梅雨は滅多にないため、今後は好調に推移していくと予想している。

 導入時の施工については、日曜日は休業しているため、太陽光発電設備の搬入、とくに太陽光パネルの搬入と屋根上への荷揚げを日曜日に限定するほかには、大きな調整や問題は生じなかったという。

 蓄電池システムを設置した事務所棟の屋根上には、太陽光パネルは設置されていない。これは、耐荷重の面で制約があったことに加え、必要な枚数をすでに満たしていたので無理をすることは避けたとしている。

 蓄電池の容量は、今後、増やしていく可能性があるようだ。今回は事務所で使う範囲に留めたとしている。

 茶畑から製茶に至るプロセスでは、ほかにも太陽光発電や蓄電池システムを導入する余地はありそうだ。

 佐々木製茶によると、茶を揉む工場には、太陽光発電を設置できる可能性がある。問題は、この工場が稼働している時期が、4回の茶摘みごとに2~3週間のみ、年間で約80日と少ないことで、この条件で事業性を満たせるかが課題という。

 また、茶畑には一般的に、風車のようにみえる送風機がついている(図5)。

図5●茶畑にある送風機
図5●茶畑にある送風機
九州の茶畑における例(出所:日経BP)
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 これは、初春の低温の時期に、茶の新芽が霜によって凍結することを防ぐ役割がある。地上5mほどの高さにある暖かい空気を、新芽に向けて送る。

 茶畑は、このために3~4月といった短期で、送風機のために受電契約を結んでいる。この電力を賄える可能性もある。