再エネ蓄電池プロジェクト最前線

「太陽光+EV」でエネルギー地産地消、出光が宮崎・国富町で実証

設備提供から設計・施工、発電、サービスまで一貫体制を狙う

2021/02/24 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 宮崎県国富町において、太陽光発電、定置型蓄電池とEV(電気自動車)を活用する2つのプロジェクトがはじまる。1つは太陽光パネルメーカーであるソーラーフロンティア(東京都港区)の国富工場、もう1つは国富町役場が舞台となる(図1)。

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図1●国富町役場(上)、ソーラーフロンティアの国富工場(下)
(出所:上は国富町、下はソーラーフロンティア)
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 太陽光発電電力を自家消費し、余剰電力を蓄電池に貯めて有効に活用する。蓄電池は定置型とEVに搭載した蓄電池を使う。需要のピークカットなどで電力購入コストを下げる効果も大きい。

 いずれも実証実験で、出光興産が主導する。ソーラーフロンティアは出光興産の子会社で、ソーラーフロンティアの工場がある国富町とも連携する。

 出光興産は、本業の石油関連などとともに、太陽光の電力を効果的に活用できる技術やサービスの開発に取り組んでいる。

 その1つは、地域内の太陽光発電所とEVを束ねるVPP(仮想発電所)である。例えば、太陽光の余剰電力をEVに貯め、地域で電力を地産地消するようなイメージだ。EVは移動することもあり、定置型蓄電池と組み合わせる必要はあるが、既存の給油サービス所をEVの充電拠点としても活用できるなど、同社の強みを生かしやすい。

 出光興産は、小売電気事業にも参入していることから、将来は、地域の太陽光発電からEV、定置型蓄電池など、いわゆる分散型電源を束ねて活用するアグリゲーター事業と電力販売を連携させることもできる。

 さらに、地域内の移動に適した小型EVの開発、製品化にも着手する(関連ニュース:出光が小型EV、年間100万台の需要想定)。太陽光発電とEVという2つの分散型電源を製品としても手掛けることになる。

カーポート型太陽光から

 国富町における2つの実証プロジェクトでは、カーポート型の太陽光発電と、定置型蓄電池、EVを活用する。どちらも規模は小さく、太陽光の出力は数kW、定置型蓄電池の容量は十数kWh、EVは2~3台である。

 違いは、ソーラーフロンティアの国富工場における実証は技術開発により重きを置き、国富町役場での実証は、より実践的になるという(図2)。

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図2●ソーラーフロンティアの国富工場における実証内容(上)、国富町役場での実証内容(下)
(出所:上は出光興産、日本ユニシス、下は出光興産、日本ユニシス、スマートドライブ)
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 いずれも、国や自治体の補助金を活用していない。一般的に蓄電池やEVを使う実証事業では、設備が高価なため、補助金の活用が前提になる。

 出光興産によると、今回、補助金を活用しなかったのは、同社が構想した実証内容に対して活用できる補助金制度がなったからという。それだけ独自の内容だといえる。

 カーポート型太陽光発電システム、蓄電池、EVの充電システムは、ソーラーフロンティアが供給し、出光興産が購入して設置する。EVは、国富町役場の3台は町が公用車として購入、ソーラーフロンティアの国富工場の2台は、1台はソーラーフロンティアの社用車、もう1台は同社従業員の所有車を使う。

 どちらの実証も、日本ユニシスと共同で実施する。日本ユニシスは、監視・制御システムや予測などを担う。

 国富町役場での実証では、さらにスマートドライブ(東京都千代田区)が加わる。同社の車両予約情報・車両移動情報・電力情報の取得・統合・可視化のシステム(「SmartDrive Fleet」と「Mobility Data Platform」)を活用する。

 ソーラーフロンティアの国富工場における実証は、2021年3月に開始し12月末に終える。太陽光、EV、蓄電池を組み合わせたエネルギー管理の技術を開発する。

 工場の事務棟の電力需要、太陽光発電量、EVの稼働状態、卸電力市場などの予測を基に、EVと定置型蓄電池の充放電制御を最適化することで、需要家の電力コストの低減や小売電気事業者の調達コスト低減などを模索する。

 国富町役場における実証は、4月にはじまり2023年3月31日までの2年間、実施する。より実践的な取り組みで、太陽光やEVの活用状況などを把握するまでに1年程度を要すると想定している。

 スマートドライブのEV関連システムを活用するのは、より高精度な予測などが必要なためという。同社のシステムは、広く活用されており実績がある。

 このEV関連システムの活用は、国富町にとって副次的な利点を生む可能性がある。公用のEVの予約や移動の状況を把握できるので、公用車の稼働状況を見える化できる。この結果、実際の稼働状況に合わせて、公用車を減らせる可能性がある。

 国富町役場では、非常時の電力供給、いわゆるレジリエンスの向上にも活用する。太陽光や蓄電池、EVからの放電を役場内の災害対策本部などに優先的に供給する。

 具体的には、(1)公用EVの予約情報と走行データを活用したEVの稼働状況予測に基づく充放電の最適化、(2)太陽光、蓄電池、EVという分散型電源の特性を踏まえた複合制御による電力のピークカット、(3)停電時の電力供給を考慮した蓄電池とEVの充電残量制御、などである。

 この(1)に関して、スマートドライブのシステムが大きく寄与する。EVの稼働状態の予測精度を高め、最適な充放電の計画を作成できるとしている(図3)。

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図3●EVの稼働状態の予測精度を高め、最適な充放電の計画を作成できる
「SmartDrive Fleet」、「Mobility Data Platform」の表示例など(出所:スマートドライブ)

 庁舎の消費電力はピーク時で約100kWとなっている。その一部を太陽光の自家消費で賄う。主に夕方に来る電力系統全体の需要ピークを抑える形で使う。太陽光が少ない時には、蓄電池とEVから庁舎に放電する。

 太陽光の余剰電力を、蓄電池とEVのどちらに優先的に貯めるのかは、検討中という。EVの日中の移動状況が大きく左右する条件となりそうだ。

 今後の事業化に向けて、技術面では、太陽光の予測精度がカギになるという。事業面では、固定価格買取制度(FIT)に頼らない太陽光発電システムの利点を、いかに打ち出せるかが肝になる。

 すでに九州では頻繁に出力制御指令が出されており、出力抑制時に太陽光の電力を蓄電池に貯めて、系統の電力消費のピーク時に放電すれば、電力系統の安定化や系統側の予備電力などのコスト削減につながり、利点が大きい。

 今後、九州以外でも太陽光に対する出力抑制が想定されていることからも、こうした太陽光と蓄電池、EVを最適に制御する取り組みは欠かせない。出光興産のようなエネルギー大手が取り組む意義は大きい。