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2.5倍の過積載による余剰分を夜間に売電、蓄電池併設の低圧太陽光

マイクログリッド運用、ノンファーム型接続に応用も

2022/02/14 15:04
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 鹿児島県東串良町に、蓄電池システムを併設した低圧連系の太陽光発電所がある(図1)。連系出力は48.6kWで、太陽光パネルの出力は約122.4kWと過積載率は2.5倍近い。ここに容量が270kWhの蓄電池を併設している。

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図1●蓄電池システムを併設した太陽光発電所
図1●蓄電池システムを併設した太陽光発電所
(出所:エイワット)
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 開発・運営しているのは、エイワット(大阪府堺市)である。

 同社は、栄和鉄工所として1972年に設立され、1990年代から太陽光発電や風力・水力発電などの再生可能エネルギー発電を手がけてきた。火力発電設備などにも関わってきた柴田政明社長の経験をいかし、再エネ発電では開発から施工、運営まで手掛けている(関連コラム:影による発電量の低下を最小化、パネル単位の制御・監視システムの効果)。

 鹿児島の蓄電池併設型太陽光は「EIWAT SOLAR STORAGE I」(エイワット ソーラー ストレージ ワン)と称し、2017年1月に売電を開始した。固定価格買取制度(FIT)による売電価格は24円/kWh(税抜き)である。蓄電池の導入では、補助制度も活用した。

 FIT初期の売電単価30円以上/kWhの太陽光の場合、稼働後、事後的に太陽光パネルを増設して高倍率の過積載にしたうえで、事後的に蓄電池を設置して、連系出力を超える発電分を貯めておき、夜間に売電するという仕組みに事業性があった。

 しかし、こうした過去の高いFIT単価を利用した事業が国民負担を増大させる恐れがあることから、「事後的過積載」と「事後的蓄電池」の設置は禁止された。

 「EIWAT SOLAR STORAGE I」の売電単価は24円/kWhなので、一般的に蓄電池による夜間売電モデルでは事業性に乏しくなる。

 エイワットは、蓄電池設置の事業性については非公表としてるが、蓄電池導入に補助金を活用して初期投資を抑えたことで、事業性を確保しているとみられる。加えて、過剰に大きい収益性がないとしても、将来のマイクログリッド運用やノンファーム型接続による売電事業に蓄電池制御ノウハウを蓄積できることが大きな利点としている。

 九州電力との連系協議において、強く問われたのは、系統から購入した電力を貯めて、その電力を売電しないようにすることだった。この点もクリアし、事業化できた。

 日中は、太陽光発電電力を売電しながら、過積載による余剰分を蓄電池に充電する。夜間は、日中に充電した電力を売電する。これによって、過積載分の太陽光発電電力も売電できる(図2)。

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図2●過積載分による余剰発電分を貯めて、夜間に売電している日の例
図2●過積載分による余剰発電分を貯めて、夜間に売電している日の例
(出所:エイワット)
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 技術的には、一定量を売電し続けるようなベースロード電源のような運用も可能である。将来的には、地域の再エネ電源として、1つの在り方を示している。

 九州で頻発している出力制御(出力抑制)指令の出された日には、抑制時間帯の発電電力を蓄電池に貯めておく。抑制対象の時間が過ぎたら、蓄電池から放電して売電する。このように、出力抑制によるロスの影響がかなり軽減でき、蓄電池を併設したことによる経済性が高まった。

 蓄電池システムには、水性ハイブリッドイオン型で非爆発・不燃性の蓄電池を採用した(米Aquion Energy社製:関連ニュース)。電解液は塩水である。

 このような蓄電池併設型太陽光発電所の運用では、充放電回数などマネジメントのバランスなどが重要という。

 この低圧太陽光発電所での成果を、高圧の配電線に連系する、より規模の大きな太陽光発電所で事業化する予定だった。しかし、その後、過積載や認定後の蓄電池の追加に関するルールが変わったことで、この計画は断念した。

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