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「着床してもOK」、土木の知見で開発された異色の水上太陽光フロート(page 3)

安全性を徹底、コストを上げても防火対策を強化

2020/04/22 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 フロートの開発では、土木の技術者やコンサルタントとして積んできた経験を生かした。開発のヒントになったのは、土木で広く使われている「発泡スチロール土木工法(EPS土木工法)」だった。大型のブロック状の発泡スチロールを積み重ねていく工法で、土の使用量を抑えつつ盛土を代替できる。

 フロートにおいて、水面に浮かせる役割を担う材料には、EPS土木工法で使うような大きな発泡スチロールを使っている。食品トレーなどと同じ食品衛生基準を満たした材料でもあり、ため池の水の汚染リスクも低いとしている。これは、積水化成品工業が供給している。発泡スチロールの寸法は1m×2mで、これを12.5枚つなげて5m×5mの島を形成し、これが1個のフロートとなる。

 発泡スチロールで形成した5m×5mの島は、フロートフレームと呼ぶ鋼材の部材で側面から補強し、外力に対する構造的な強度を増す。さらにその外側をアルミ板で覆っている。このため、側面からみると発泡スチロールは見えず、アルミ板のみが見える。

 上面も発泡スチロールは見えない。セメントボードで覆っているためである。側面をアルミ板、上面をセメントボードでそれぞれ覆うのは、発泡スチロールの劣化要因となる紫外線が当たることを防ぐことと、機械的な強度を増す理由のほか、さらに、万が一、発電設備が発火した際に、フロートへの引火を防ぐ効果もある。

 上面には、セメントボードの上に架台が固定されている。太陽光パネルの前後は歩ける構造になっている。この架台も鋼材で構成し、高耐食性めっきが施されている。

 鋼材は日鉄物産が、アルミ板は住商メタレックスが供給している。

 水に浸かる下面は、発泡スチロールそのままである。着床する運用に対応できることを強調しているのは、水面側の発泡スチロールに何かが刺さったり、穴が開いたりして傷ついても、大きな寸法の発泡スチロールということもあり、損傷するのは部分的で浮力などの性能に大きな影響がなく、かつ、損傷個所の修理が容易なためとしている。

 こうしたフロートの構成は、必要に応じて柔軟に変えられる。例えば、姫路インザイの野田池の水上太陽光発電所向けには、上面を覆う材料として、これまでのセメントボードから鋼板に変えた(図4)。

図4●両面発電パネル用に白っぽい鋼板に
(出所:日経BP)
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 理由は、この発電所が採用した両面発電の太陽光パネルによる発電量をさらに増やす狙いからだった。

 反射光を増やして、両面発電型太陽光パネルの裏面の発電量を増やすことが目的だったが、何らかの事情で発電設備が発火した場合にフロートへの引火を防ぐ点でも、より優れていることがわかり、今後は上面の材料をセメントボードから銅板に変えていく方針という。コストは上がるが、安全性をより優先したいという。

 また、鋼板やアルミ板といった金属系材料を、すべてステンレスに変える開発にも取り組んでいる。海水が入ってくる場所における水上太陽光発電所からの引き合いに対応するためとし、試作品の浮力テスト中で、年内には製品化する予定としている。

 フロートの最後列に並ぶ太陽光パネルの裏には、緑色のひらひらした部材が見える。これは、パネルの裏側方向からの強風によってまくれ上がるような応力を緩和する目的という。

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