新エネ・システム最前線

蓄電池によるピークカットで経済性、将来は太陽光と連係制御

米原市で太陽光と蓄電池を導入した三友エレクトリック

2020/04/07 05:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

本社工場に350kWの太陽光

 滋賀県米原市は、近畿地方にありながら、雪の多いことで知られる。西にびわ湖、東に県内最高峰・標高1377mの伊吹山があり、湿った空気が日本海とびわ湖を通って同山にぶつかって大雪をもたらす。東海道新幹線でもこの区間、車窓から雪景色を目にすることが多い。

 三友エレクトリック(米原市)は、この地に本社と生産拠点を構え、電源盤や電源装置などを製造している。従業員165人、売上高23億1000万円(2018年度)のEMS(電子機器製造受託サービス)企業だ(図1)。

図1●米原市にある三友エレクトリック本社
図1●米原市にある三友エレクトリック本社
(出所:三友エレクトリック)
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 同社は2013年12月、本社工場の一部に出力100kWの太陽光発電設備を設置した。さらに2015年3月には、250kW分増設して、合計出力350kWとした。元々、市に貸していた土地で、グラウンドとして利用されていたが、契約期間が満了して返却されていた。

 全国有数の積雪地域で日照時間も全国平均を下回るなど、必ずしも太陽光発電に向かない土地柄にも関わらず、敷地内に太陽光パネルを設置したのは、同社の事業ともかかわりがある。パワーエレクトロにクスの知見を持つことから、太陽光発電システムの心臓部ともいえるパワーコンディショナー(PCS)の製造受託なども手がけてきたからだった(図2)。

図2●敷地内に設置した太陽光発電所
図2●敷地内に設置した太陽光発電所
(出所:三友エレクトリック)
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除雪なしでも設備利用率13%

 太陽光パネルは、三菱電機製で最初の100kWでは255W/枚、増設した250kW分については261W/枚の製品を設置した。PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製・100kW機と250kW機を採用した。ただ、接続箱に関しては、すべて三友エレクトリックの技術者が内製したという(図3)。

図3●東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のPCS
図3●東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のPCS
(出所:三友エレクトリック)
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 積雪対策としては、設置角を15度としつつ、除雪作業を前提にせず、雪がパネルの上にある程度の時間、積もっていることを想定した。そのため、架台の骨組み構造に、柱と梁に加え、斜めに入れる方杖(ほうずえ)を多用して強度を高めた。(図4)。

図4●積雪に備えて、架台には斜めに入れる方杖を多用
図4●積雪に備えて、架台には斜めに入れる方杖を多用
(出所:日経BP)
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 稼働して6年間の発電状況は順調で、雪の重みによる損傷もないという。年間平均の設備利用率は約13%で、雪国ながら国内の平均値とほぼ同水準になっている。積雪時は、パネル上を覆ってしまい半日以上、発電しない状況になるが、事前の想定通り、一度も除雪作業は行っていないという(図5)。

図5●近畿地方ながら、日本有数の積雪地域でもある
図5●近畿地方ながら、日本有数の積雪地域でもある
(出所:日経BP)
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 それでも、平均的な設備利用率を維持しているのは、日照の弱い中でも相対的に発電量が伸びる特徴のあるTMEIC製PCSの効果ではないかと見ている。

 100kWを設置してから2年後に、さらに250kW増設したのは、積雪のハンディがあっても不具合はなく、予想以上に発電量が伸びて投資効果が高いことから、将来の再生可能エネルギーの本格活用も見据え、さらなる投資に踏み切ったという。

200kWhの蓄電池を導入

 同社は2015年12月、太陽光パネルに続いて、本社工場に大容量のLiイオン蓄電池システムを導入した。蓄電池の容量は200kWh。日常的には電力需要のピークカットに使うことで電気代を削減し、災害時には非常用電源として活用する。従来、こうした大容量の蓄電池システムは、系統側の瞬停対策やBCP(事業継続計画)としての価値があるものの、設備コストが高いため、経費節減の観点から導入するのは難しかった(図6)。

図6●200kWhのTMEIC製蓄電池システムを導入した
図6●200kWhのTMEIC製蓄電池システムを導入した
(出所:日経BP)
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 しかし、三友エレクトリックでは、「ピークカットによって契約電力を下げられ、電気代を削減できる。補助金制度も合わせれば、蓄電池の導入コストは10年以内で回収できる」と話す。同社の工場では、電源製品の試験などで一時的に大電流を使うことがあり、空調と併用する夏場など、需要ピークが500kWを超える恐れがあった。

 高圧の業務用電気の料金メニューは、500kWを境に基本料金が大きく変わる。当時の関西電力の料金体系では、工場向けの基本料金は、500kW未満だと1360.8円/kWなのに対し、500kW以上になると1863.0円/kWに跳ね上がる。同社では、最大電力需要が500kWを超えないように、製品試験を夜間にシフトしたり、日中の試験時には、空調を切ったりするなどしてデマンド(需要)管理を徹底してきたが、それも限界に近付いていた。

 「200kWhの蓄電池があれば、余裕をもって契約電力を400kW程度に抑えられる。中堅メーカーにとって利点が大きい」という。加えて、今回の蓄電池システムが、経済産業省の「定置用リチウムイオン蓄電池導入支援事業費補助金」の対象となり、投資負担が3分の2で済むことから、導入に踏み切ったという。

夜間の電源試験を回避

 蓄電池を導入して3年は、こうした事前の目論見通り、空調の抑制など需要管理に気を使わなくても、余裕をもって500kW以下にピーク需要を抑えることに成功していた(図7)。

図7●蓄電池導入によるピークカットのシミュレーション
図7●蓄電池導入によるピークカットのシミュレーション
(出所:三友エレクトリック)
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 しかし、2018年に本社工場に2500m2の新棟(G棟)を増設して生産活動が増して以降、夏場に空調などがフル稼働した場合、蓄電池を活用しても500kW近くまで需要が伸びることが出てきたという(図8)。

図8●契約電力と最大需要電力の推移
図8●契約電力と最大需要電力の推移
(出所:三友エレクトリック)
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 そこで、さらにと蓄電池を100kW増設することも検討しつつ、電力会社と契約電力を引き上げた場合についての電気料金の交渉を始めた。その結果、電力自由化による競争環境が浸透してきた影響もあり、従来、想定したよりも電気料金が上がらないことになった。それにより、ピークカットする電力量を増やしても、経済メリットがそれほど大きくならないことから、蓄電池のさらなる増設は見送ったという。

 とはいえ、200kWの蓄電池を運用する利点は大きく、電力会社との交渉力を高めると共に、夜間の電源試験によるピークシフトが必要なくなったことなど、労働環境の改善にも効果を発揮しているという。

TMEIC製の蓄電池システム

 三友エレクトリックに蓄電池システムを納入したのは、TMEICだ。導入した蓄電池システムを据え付けた筐体にある「TMBCS」は、「TMEIC Battery Control System(蓄電池コントロールシステム)」の略で、PCSと蓄電池、そして蓄電池制御装置を1つのシステムにまとめたものである(図9)。

図9●PCSと蓄電池、そして蓄電池制御装置を1つのシステムにまとめた
図9●PCSと蓄電池、そして蓄電池制御装置を1つのシステムにまとめた
(出所:日経BP)
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 三友エレクトリックの工場に設置したTMBCSには、東芝製のLiイオン蓄電池「SCiB」を採用した。TMEICでは、東芝製のほか、サムスンSDI製、LG化学製などの蓄電池での実証試験を終えており、システム構成が可能という。

 TMEICによると、蓄電池用PCSの出荷容量は、「これまで国内の実証事業の案件が多かったが、企業がピークカットに活用する例も出てきた。蓄電池の価格が下がってきたことに加え、補助金制度を利用すれば経済メリットを出せるようになった」と言う。

 Liイオン蓄電池単体のコストは、現在、日本メーカー製で10万円/kWhを切るまで下っており、海外製はすでにその7割程度といわれる。今後さらに下がっていけば、補助金なしでもピークカット用途にさらに蓄電池の普及が進む可能性が高い。

「FBCS」がセルを監視し、最適に充放電

 蓄電池システムを収めた筐体に入ると、蓄電池とPCSが手前に置かれ、奥に「FBCS盤」と書かれた制御装置が設置されている。FBCSとは、「Front Battery Control System」の略。蓄電池盤とPCSを管理するTMBCSの頭脳とも言えるものだ。

 蓄電池システムの基本的な原理は、蓄電池の充放電する直流をPCSで交直変換し、変圧器を通じて連系する。蓄電池セル(電池素子)のSOC(残容量)などの状態は、蓄電池メーカーの支給したBMU(Battery Management Unit:電池管理装置)が監視し、過電圧など深刻な異常事態が発生した蓄電池を回路から解列させる。

 FBCSは、BMUとは別に電池セルを個別に監視し、充放電を最適に制御する。例えば、一部のセルに異常事態の発生する兆候を感知した場合、PCSに指令を出し、該当するセルに充電しないようにする。事故リスクを減らすだけでなく、セルへの負荷低減によってシステム全体の長寿命化にもつながるという(図10)。

図10●「FBCS」は、すべての蓄電池の状態を監視しつつ、電池特性に合わせて充放電量の制御とインターロックを行う
図10●「FBCS」は、すべての蓄電池の状態を監視しつつ、電池特性に合わせて充放電量の制御とインターロックを行う
(出所:東芝三菱電機産業システム・TMEIC)
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 「BMUは、安全面での最後の砦として重要だが、監視するだけで、制御機能はない。FBCSでセルを監視しつつ、PCSで充放電制御することで初めて、システム全体の安定的な運用や劣化の抑制などが実現できる」とTMEICの技術者はいう。

 一般的に、蓄電池メーカーは、セル単体の評価試験データしか提供してくれないという。システムとして安定運用するには、連続充放電による温度特性やセル電圧のバラツキなど、統合的に監視・制御することが重要という。

FIT終了後は、太陽光と蓄電池で自家消費

 三友エレクトリックでは、先行して導入した太陽光は、経済性を重視して固定価格買取制度(FIT)を活用し、現在は関西電力の高圧配電線に連系し、全量売電している。

 だが、買取期間が終わった20年後に電力会社と契約できる買取価格が購入価格のより低ければ、自家消費の方が経済的に有利になる。同社では「その際には、蓄電池に充電して自家消費率を高めることも検討する」としている。

 一般的に中堅企業の場合、電力料金は15円/kWhを超えるなど、価格競争が進んだ大手企業の大工場向け料金に比べると割高になっている。減価償却の済んだ太陽光発電設備を自家消費する利点は大きい。

 現在、350kWの太陽光発電設備で導入しているPCSは、6.6kⅤの系統連系が前提で自立運転機能はないが、FIT終了後は、工場の6.6kⅤの構内系統に連系し、余剰分を蓄電池に貯められる。蓄電池用の双方向型PCSは、商用系統の停電時を想定した自立運転機能があるので、太陽光の電力を貯めておき、非常時に活用することも可能になるとみている(図11)(図12)。

図11●三友エレクトリックの現状の蓄電池システム構成
図11●三友エレクトリックの現状の蓄電池システム構成
(出所:三友エレクトリック)
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図12●三友エレクトリックの将来(非常時含む)の蓄電池システム構成
図12●三友エレクトリックの将来(非常時含む)の蓄電池システム構成
(出所:三友エレクトリック)
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 今回、導入した200kWhの「TMBCS」は、500kWのPCSを搭載しているため、太陽光を自家消費に転換し、蓄電池を巡る事業環境が整えば、増設することも想定しているという。

 また、今後、電力システム改革の進展で、「蓄電池アグリゲータ」や「VPP(仮想発電所)」などのサービス事業者が登場すれば、蓄電池を貸すことで、さらに事業性を高めることも可能になる。

 三友エレクトリックの需給状況では、空調需要と電源試験が重なる場合などに需要ピークとなるため、夏場と冬場はリアルタイムでデマンド監視し、蓄電池を充放電制御している。一方、空調負荷の少ない春と秋は、蓄電池を使用しない運用を基本とし、充放電回数を増やさずに電池セルの劣化を抑制しているという。

 逆に言えば、春と秋は、蓄電池が「遊んでいる」ことになる。将来、この時期に、アグリゲータやVPP事業者に、蓄電池の充放電機能を貸せば、稼働率が増して投資回収が早められる。三友エレクトリックでは、こうした太陽光と蓄電池を複雑に連係制御する将来システムも睨み、ノウハウを蓄積していきたいという。