緻密なシミュレーションが重要
屋根に設置できるかという技術的な問題のほか、そもそも需要家企業の経営の安定性や信用力も重要になる。そのうえで、需要パターンと太陽光の設置可能量を念頭に置きながら、全量自家消費なのか、余剰売電なのかを選択し、最も事業性の高い設置容量やシステムを設計する能力が必要になる。
実は、メトロキャッシュアンドキャリージャパンの20店舗のうち、当初5店が候補になった。だが、そのうち2店舗は、屋根構造の点から設置を見送ることになり、最終的に設置が決まったのは、「横浜いずみ店」のほか、千葉県の「流山店」「市川店」となった(図8)。
「METRO」の業態は、生鮮品や冷凍食品が多く、365日・24時間を通じて冷蔵や冷凍のための電力消費量が多く、また3店舗のエリアは送配電線に接続するための空き容量がなく逆潮できないことから、全量自家消費を前提に最適な発電出力を試算したという。
自家消費型太陽光の設計・施工では、各需要家や建物に合った正確な事業性のシミュレーションと、それを基にした提案力が重要になるという。
「横浜いずみ店」の年間の電力消費量は約171万7000kWhで、今回設置した300kWの太陽光発電設備により年間31万2700kWhの発電量が見込めることから、年間の受電量は約140万4300kWhに減ることになる。削減量は18%に過ぎないものの、もともとの電力消費量が多いことから、年間の電力料金の削減額は約700万円に達するという。
ユニバーサルエコロジーでは、「METRO」店舗のほか、流通店舗を中心にすでに約40店舗への自家消費型太陽光を設置した実績があり、そのうち約半分が需要家の所有、約半分が第三者保有型(TPO‐PPA)モデルになるという。また、このなかの数店舗は、BCP(事業継続計画)に配慮した蓄電池併設型太陽光になるという。
石田社長は、「全量自家消費に対応した逆潮防止機能付きPCSの製品化が進み、コストも下がってきた。産業向け自家消費市場は、政策支援がなくても自律的に成長する段階に入ってきた。今後、自立型機能付きPCSと蓄電池のコスト低下が進めば、BCPのニーズにも合った自家消費かつ自立運転可能な太陽光の普及も進むだろう」と見ている。