新エネ・システム最前線

徳之島で順調に稼働する「蓄電池併設メガソーラー」

産業向け自家消費型太陽光でも蓄電池併設に取り組む

2020/08/25 05:00
金子 憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

「蓄電池併設型」の先駆け

 固定価格買取制度(FIT)のスタートによって全国にメガソーラー(大規模太陽光発電所)が続々と稼働し、電力系統の安定的な運用に影響を及ぼすケースも出てきている。こうした課題に対応するため、メガソーラーに併設した蓄電池が導入され、稼働し始めている。

 今年7月には、蓄電池併設型メガソーラーとしては、国内最大規模になる「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク 2」が稼働した。太陽光パネルの出力約64.6MW、連系出力は48MW。蓄電池の容量約は19MWh、出力約34MWとなる。

 ソフトバンクグループで再生可能エネルギー事業などを展開するSB エナジー(東京都港区)と三菱UFJリースの設立した特定目的会社(SPC)が事業主体で、EPC(設計・調達・施工)サービスは東芝と東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が共同で担った。

 こうした蓄電池併設型メガソーラーの先駆けの1つとなったのが、鹿児島の南南西約500kmに位置する徳之島にある太陽光パネルの出力2.6MW、連系出力1.75MWのサイトだ。2017年3月に連系して運用を開始して以来、約3年半が経過している。

 事業開発とEPC(設計・調達・施工)サービスは、再生可能エネルギーの開発・運営を手掛けるユニバーサルエコロジー(名古屋市西区)が担当した。太陽光パネルは中国ジンコソーラー製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図1)。

図1●徳之島のメガソーラーに設置したTMEIC製蓄電池システム(出所:日経BP)
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 蓄電池システムは、TMEIC製を導入し、メガソーラーと連係した全体システムの設計を三菱電機が担当した。蓄電システムに組み込んだ電池ユニットは韓国LG化学製のLiイオン蓄電池、双方向型のPCSはTMEIC製を採用した(図2)。

図2●電池ユニットは韓国LG化学製のLiイオン蓄電池を採用(出所:日経BP)
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「短周期変動」対策で蓄電池が条件に

 自然変動電源であるメガソーラーの稼働によって、系統運用に問題が起きる原因には、大きく「長周期変動」と「短周期変動」がある。前者は、太陽光の時間単位の出力変動に起因し、需要を超える出力によって需給バランスが崩れ、場合によっては大規模な停電につながる。後者は、秒から分単位の急峻な出力変動によって電力系統の周波数が変動する。

 太陽光の長周期変動への対応として、2015年から一部の離島において、2018年から九州本土で再生可能エネルギーへの出力抑制が始まっている。

 一方、短周期変動への対策に関しては、系統に連系する際の条件として蓄電池の併設を求めることで、系統への影響を緩和している。具体的には、九電管内の離島や北海道電力、沖縄電力の管内では、すでに一定規模以上の太陽光には蓄電池の併設を求めている。

 北海道や徳之島など離島で稼働し始めた「蓄電池併設型メガソーラー」は、こうした短周期変動への対策として蓄電池を併設したものだ。徳之島では2013年から、北海道では2015年からの連系申し込み案件から、蓄電池の併設が前提となった。

 ディーゼルエンジン発電機で電力を供給している離島では、太陽光の出力変動に対応し、エンジン発電機の出力を増減することで、需給バランスを維持している。九電によると、1分当たり総需要の3%を超える急峻な負荷変動にはエンジン発電機が追従できないという。徳之島の場合、昼間最低負荷は11MWなので、エンジン発電機が追従可能な許容出力変動幅は「約5kW/秒」となる。

 そこで、メガソーラーと蓄電池の合成出力の変動を、「5kW/秒」以下に抑えることを求めている。5kW/秒を超える急峻な変動幅の場合、蓄電池の充放電によって変化をランプ状(傾斜状)に緩やかにするという制御が必要になる(図3)。

図3●徳之島で稼働中の蓄電池併設型メガソーラーの全景(出所:ユニバーサルエコロジー)
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TMEIC製の統合制御システム採用

 こうしたメガソーラーと蓄電池を連係したリアルタイム制御は、高度なノウハウが必要になる。そこで、ユニバーサルエコロジーでは、FIT以前から実証事業などで、離島での短周期変動対応の蓄電池システムの構築で実績のあった三菱電機に相談し、全体システムの設計を依頼することにした。

 三菱電機は、これまで離島の変電所内に大型蓄電池を設置し、系統周波数の変動対策に使うシステムを構築してきた。こうした電力系統に直接、連系する「系統蓄電池」では、系統全体の周波数変動を指標にし、蓄電池の充放電をリアルタイムに制御し、周波数変動を緩和する制御手法を採用することが多い。

 一方で、メガソーラーに併設した蓄電池の場合、メガソーラーの出力変動を指標として監視しつつ、その変動を打ち消すように蓄電池の充放電をリアルタイムに制御する必要がある。そのためには、メガソーラーのPCSと蓄電池のPCSの両方を統合管理する上位系のコントローラーが必要になる。

 こうしたタイプのLiイオン蓄電池システムでは、すでにTMEICが「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」を製品化していた。TMBCSでは、メガソーラーに設置した多数台のPCSを統合して制御する「メインサイトコントローラー(MSC)」が、蓄電池のPCSとも連係制御し、サイト全体の連系点の発電量をリアルタイムに監視しながら、蓄電池を充放電制御できる。

 三菱電機は、TMEICと連携してTMBCSを今回の蓄電池併設型メガソーラーの基幹システムとして採用した。これまでの離島での大型蓄電池システムの運用経験も加味し、九電の要求する「約5kW/秒」という出力変動の範囲に抑えるシステムを構築した。

 導入した蓄電池は、容量1.029MWhだが、高入出力特性を持つため、定格出力2MWのPCSで制御することで、連系出力である1.75MWと同等の出力を10分以上、余裕で充放電できる。このためメガソーラー出力変動をセンシングし、蓄電池を機敏に充放電させれば、秒単位の急峻な変動を平滑化できる計算だ(図4)。

図4●蓄電池併設型メガソーラーの先駆けとなった(出所:日経BP)
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意外に多かったPCSの停止

 こうしたリアルタイム制御の考え方や設計に関して、連系協議の場などで九電に説明し、系統接続を認められたという。

 ユニバーサルエコロジーの石田友則社長によると、2017年3月に系統に連系して運用を開始して以来、短周期変動を緩和するための蓄電池の充放電制御は、順調に機能しているという。実際に「5kW/秒」内の変動幅を達成しているのか、九電が常時監視しているわけでないが、島内系統の周波数への影響に関して問題になったことはないという。

 ユニバーサルエコロジーの塚田隆久取締役技術部長は、今後、注視していきたい点として、蓄電池の劣化度合いを挙げる。「充放電回数が増えるに従って性能が落ちていくなか、11年目にどの程度、設備更新が必要になるのか否か、検討することになる」と言う。

 こうした短周期変動対策のほか、系統規模の小さい離島でのメガソーラー運営には、本土にない苦労も多いという。塚田技術部長によると、これまでのところ離島のメガソーラー運営で予想以上に手間がかかっているのが、九電による出力制御指令への対応と、停電などでPCSが停止した後、手動による再稼働の作業が頻発することという(図5)。

図5●蓄電池制御は稼働以来、順調に推移(出社:日経BP)
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 本土に比べると、相対的に停電が多いことに加え、系統側の電圧が規定値以上に変動することもあり、その場合、PCSの安全装置が働いて停止することもあるという。

 運転停止の場合、保安業務委託している島在住の電気主任技術者が現場で状況を確認後、手動で再稼働の作業を行う。島内に数少ない資格者が他社サイトを含めて複数の太陽光発電所の保安業務を担っているため、再立ち上げに時間を要することもあったという。

 そこで、遠隔による再稼働が可能なシステムを導入し、場合によっては、電気主任技術者が現場に行かなくても、運転を復帰できる体制に変更したという。

「METRO」3店舗に自家消費型

 今後、さらに成長が期待できる太陽光発電の分野として、ユニバーサルエコロジーの石田社長は、事業向けの自家消費型太陽光を挙げる。「太陽光のシステム価格が下がってきたことで、条件によっては十分に経済性を確保できる。補助金制度などをうまく活用できれば、蓄電池付きシステムの自立型システムも提案してきたい」と話す。

 自家消費太陽光に関しては、実際に導入例も出てきた。横浜市泉区にある「メトロ(METRO)横浜いずみ店」は、ドイツの流通チェーン大手の日本法人、メトロキャッシュアンドキャリージャパン(東京都品川区)の展開する食品スーパー10店舗のうちの1つだ(図6)。

図6●「メトロ横浜いずみ店」の外観(出社:日経BP)
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 東海道新幹線の高架線に近い住宅街に隣接し、紺をベースに黄色の文字でデザインした「METRO」がひときわ目立つ。店内には青果や鮮魚、精肉、冷凍品のほか、ワイン、コメ、調味料など、世界中から取り寄せた豊富な食材が並ぶ。地上からは見えないが、屋根には約300kWの太陽光発電設備が設置され、全量を店舗で自家消費している。2019年4月に稼働した(図7)。

図7●「メトロ横浜いずみ店」の屋根上太陽光(出所:ユニバーサルエコロジー)
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 この自家消費型太陽光設備を提案し、設置したのがユニバーサルエコロジーだ。石田社長は、「産業用の自家消費型太陽光に事業性が出てきたといっても、実際に導入に適したケースは多くなく、市場開拓には適切な知識や経験が必要」と言う。

緻密なシミュレーションが重要

 屋根に設置できるかという技術的な問題のほか、そもそも需要家企業の経営の安定性や信用力も重要になる。そのうえで、需要パターンと太陽光の設置可能量を念頭に置きながら、全量自家消費なのか、余剰売電なのかを選択し、最も事業性の高い設置容量やシステムを設計する能力が必要になる。

 実は、メトロキャッシュアンドキャリージャパンの20店舗のうち、当初5店が候補になった。だが、そのうち2店舗は、屋根構造の点から設置を見送ることになり、最終的に設置が決まったのは、「横浜いずみ店」のほか、千葉県の「流山店」「市川店」となった(図8)。

図8●「流山店」の屋根上太陽光(出所:ユニバーサルエコロジー)
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 「METRO」の業態は、生鮮品や冷凍食品が多く、365日・24時間を通じて冷蔵や冷凍のための電力消費量が多く、また3店舗のエリアは送配電線に接続するための空き容量がなく逆潮できないことから、全量自家消費を前提に最適な発電出力を試算したという。

 自家消費型太陽光の設計・施工では、各需要家や建物に合った正確な事業性のシミュレーションと、それを基にした提案力が重要になるという。

 「横浜いずみ店」の年間の電力消費量は約171万7000kWhで、今回設置した300kWの太陽光発電設備により年間31万2700kWhの発電量が見込めることから、年間の受電量は約140万4300kWhに減ることになる。削減量は18%に過ぎないものの、もともとの電力消費量が多いことから、年間の電力料金の削減額は約700万円に達するという。

 ユニバーサルエコロジーでは、「METRO」店舗のほか、流通店舗を中心にすでに約40店舗への自家消費型太陽光を設置した実績があり、そのうち約半分が需要家の所有、約半分が第三者保有型(TPO‐PPA)モデルになるという。また、このなかの数店舗は、BCP(事業継続計画)に配慮した蓄電池併設型太陽光になるという。

 石田社長は、「全量自家消費に対応した逆潮防止機能付きPCSの製品化が進み、コストも下がってきた。産業向け自家消費市場は、政策支援がなくても自律的に成長する段階に入ってきた。今後、自立型機能付きPCSと蓄電池のコスト低下が進めば、BCPのニーズにも合った自家消費かつ自立運転可能な太陽光の普及も進むだろう」と見ている。