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松前町「マイクログリッド」構築へ、風力と蓄電池で全町自立(page 2)

非常時に北電の配電線を使って町全域に再エネ電気を「託送」

2020/09/24 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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北電の要請で蓄電池を併設

 松前町に国内有数の規模となるウィンドファーム「リエネ松前風力発電所」が稼働したのは2019年4月。定格出力3.4MWの風車12基が海風を受けて悠然と回り始めた。東急不動産と日本風力開発(東京都港区)の出資による松前ウィンドファーム合同会社が事業主体で、年間発電量は一般家庭約3万世帯分に相当する1億590万kWhを見込んでいる。

 風力設備はスペインSiemens Gamesa Renewable Energy製で、タワーの高さは94m、ブレード(羽根)の長さは54mで回転直径は108m。ブレードが上方になった際の最高点は148mに達する。これは札幌市の大通公園にあるテレビ塔とほぼ同じ高さになる(図3)。

図3●「リエネ松前風力発電所」の出力3.4MWの大型風車
図3●「リエネ松前風力発電所」の出力3.4MWの大型風車
(出所:東急不動産)
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 蓄電池は日本ガイシ製ナトリウム硫黄(NAS)電池、蓄電池用パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用している。出力18MW、容量約130MWhという規模は、全国でも最大級の蓄電池システムになる(図4)。

図4●日本ガイシ製ナトリウム硫黄(NAS)電池、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製蓄電池用パワーコンディショナー(PCS)
図4●日本ガイシ製ナトリウム硫黄(NAS)電池、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製蓄電池用パワーコンディショナー(PCS)
(出所:日経BP)
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 「リエネ松前風力発電所」が大型蓄電池を併設したのは、北電が2016年4月に出した「風力発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」に対応したものだ。相対的に系統規模の小さい北電管内では、自然変動電源である太陽光と風力によって、系統周波数への影響が大きくなる。技術要件は、そうしたなかで太陽光・風力を系統に接続していくために、蓄電池を併設し、出力の急峻な変動を緩和する基準を規定している。

 北電ネットワークは、風力に対する技術要件で、短周期と長周期の両面での出力変動の緩和を求めている。短周期変動では、風車と蓄電池の合成出力の変化速度を「発電所定格出力の毎分1%以下」に緩和することを求める。これは、道内に設置する新規のメガソーラーに対して求めている短周期変動の緩和と同じ技術要件となっている。

 加えて、長周期の出力変動の緩和対策では、以下4つの指定時間帯において、合成出力の変動方向を制御することを求める。具体的には、「7~10時に(合成出力を)減少させない」「11時30分~13時30分に増減させない」「16~19時に減少させない」「20~23時に増加させない」というものだ。これらは北電の火力発電所での出力調整が厳しい時間帯に需要変動を拡大させない方向への制御を要請している。

 松前町のウィンドファームに、出力18MW、容量約130MWhもの大容量蓄電池を併設することになった理由は、短周期に加え、長周期の出力変動にも対応する必要からだ。

 実際の運用では、風車からの交流と蓄電池からPCSを介した交流を合わせた合成出力を北海道電力の系統に送電する「ACリンク」という方式を採用した。変動する風力発電の出力を蓄電池への入出力で補うことで、秒単位の短周期変動を平滑化しつつ、時間単位の長周期変動をある程度、平準化することで、北電の系統運用に対する負荷を軽減している。

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