「託送」による配電が可能に
しかし、今年に入り、系統停電時の「託送」に関する北電の姿勢が、積極的に協力したいとの方向に変わってきたという。これを受け、東急不動産は、託送供給を前提にしたマイクログリッド構築に向け、本格的に動き出した。
6月30日には、経済産業省の「令和2年度 地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業のうち、マスタープラン作成事業)」に採択されたことを受け、7月17日にマイクログリッド構想について発表した。
2020年度中にマスタープランを作成し、2021年度以降にマイクログリッドの構築を実現する計画だ。松前町の総合計画にある「災害に強いまちづくり」を支援するとともに将来的に、松前町で消費される電力が「100%再エネ由来」とすることを目指すと表明した(図7)。
非常時におけるマイクログリッド運用下の需給バランスなどに関しては、現在、詳細なシミュレーションに取り掛かった段階という。蓄電池から送電する場合、需要に応じてPCSを通じて出力されるため、需給管理は比較的、容易になるものの、需要の大きい特定の設備(負荷)の扱いや、長期間、安定的に送電することを前提にした場合、配電区域をどのように設定するのが適当かなど、運用面で検討すべき課題も多いという。
また、技術的には、北電系統が停電時にいかに「松前町マイクログリッド」を立ち上げるのか、という課題もある。というのは、TMEIC製の蓄電池用PCSは連系する系統が停電していても自立運転できるが、風力発電のPCSには自立運転機能がない。
そうなると、蓄電池からは送電できるが、風力発電設備は稼働できないため、蓄電池の充電量が尽きてしまえば、それ以上、送電できなくなる。
そこで、まず、蓄電池だけでマイクログリッド運用を開始し、それを系統電力と見立てて風力発電設備のPCSを立ち上げて送電する、という手順で、非常時にも風力発電を稼働できるよう、技術的な検討を進めているという。