新エネ・システム最前線

サーキット場跡に稼働した35MWの「蓄電池併設メガソーラー」

リアルタイム制御で「変動率毎分1%」をクリア

2020/11/26 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

全長2550mの本格サーキット場

 北海道南部の白老町竹浦にあった「白老カーランド」は、全長2550mの道内有数となる本格的なサーキット場だった。札幌からクルマで約2時間とアクセスが良いこともあり、耐久レースやバイクレースなどに利用されていたが、2017年10月に閉鎖された。

 今年10月30日、このサーキット場跡地に、出力約35MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「白老町竹浦ソーラー発電所」が商業運転を開始した。

 サーキット場跡地を中心に163.5haに約9万2000枚の太陽光パネルを敷き詰めた。太陽光パネルの出力は34.56MW、連系出力は19.97MWになる。パネルの設置サイトから約2km離れた連系変電所には、出力16MW、容量15.585MWhの蓄電池システムを併設した。その充放電によって太陽光発電の急峻な出力変動(短周期変動)を緩和して電力系統への負荷を減らした上で、北海道電力に送電している(図1)。

図1●サーキット場跡地を利用した「白老町竹浦ソーラー発電所」
(出所:大和エナジー・インフラ)
クリックすると拡大した画像が開きます

 事業主体は「アフターフィット大和白老町竹浦ソーラー合同会社」。同社には大和証券グループの大和エナジー・インフラ(東京都千代田区)が出資するとともに、大和証券グループの媒介によりグリーンボンドのスキームで資金を調達した。

 施工は、京セラコミュニケーションシステム(京都市)を元請けに、afterFIT(東京都港区)が一次請けを担った。完成後のアセットマネジャーは大和リアル・エステート・アセット・マネジメント(東京都中央区)、O&M(運営・保守)サービスはafterFITが担当する。

ホームストレート両側にパネル

 閉鎖した「白老カーランド」は、緑豊かな丘陵の頂にあった。全国的にも珍しい左回りのコースで、観客席とピット(車両整備エリア)に挟まれた、約800mの直線路(ホームストレート)はほぼ真南に向かい緩やかな下り坂になっており、第1コーナーから第2コーナーを回って緩やかに上ってホームストレートに戻る。周回コースの東側半分は窪地に樹木が茂っており、林間を抜ける形になる。

 太陽光パネルを設置したのは、南に下るホームストレートの両側で、サーキット場全体の西側半分になる。樹木の茂る東側はそのまま残した。ホームストレートの走路は、幅を狭めつつ残し、太陽光発電設備の管路として利用している。このため発電所となった今でも、全長2550mのコースを1周できる(図2)。

図2●ホームストレートのコントロールライン(フィニッシュライン)付近に設置した太陽光パネル
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 実は、旧サーキット場内に設置した太陽光パネルは、全体(34.56MW)の21.6MWで残りの12.96MW分のパネルは、旧サーキット場の北西に隣接した敷地を新たに確保して設置した。森林だったため、林地開発許可を取得して造成し、調整池を新設して治水に配慮した。

 連系出力19.97MWに対して、過積載比率1.7倍以上となる約35MWもの太陽光パネルを設置できたのは、隣接地の新規開発エリアが大きく貢献している。

 この新規開発エリアに関しては、コンピューターによる3D(3次元)設計を駆使することで、東西方向に段差や法面がないように緩やかな傾斜をつけて土木造成を行った結果、調整池を十分に確保しつつ、パネルを最大限に設置できたという(図3)。

図3●サーキット場北西の新規開発エリア
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

両面受光パネルを採用

 「白老町竹浦ソーラー発電所」では、太陽光パネルに中国JAソーラー製の単結晶シリコン型(375W/枚)、パワーコンディショナー(PCS)に東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(2.5MW/台)を採用した(図4)。

図4●JAソーラー製の太陽光パネルに東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を採用した
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 JAソーラー製の単結晶シリコン型パネルは、両面受光型セル(発電素子)を表裏ともガラスで挟んだタイプで、セル間のすき間を透過した光が裏面に反射して発電量が増す。特に冬季の積雪時には、裏面に当たる散乱光が増すので発電量の増大が期待できる(図5)。

図5●両面ガラスの両面受光型パネルを採用した
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 積雪対策としては、太陽光パネルを縦置き2段(枚)で設置角30度に傾け、地面とアレイ(太陽光パネルの設置単位)最低部との設置高を120cm確保した。加えて、パネルメーカーに特注してフレームとカバーガラスとの境界をコーキング材で埋めた(図6)。

図6●カバーガラスとフレームの間をコーキングして段差をなくした
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

除雪作業は想定せず

 太陽光パネルに積もった雪が滑り落ちにくくなる原因に、フレームの段差がある。メガソーラーのアレイ設計では、パネル横置きで3~4段が一般的だが、パネルを縦向きに2段にすることで、積雪の滑落を妨げる横方向のフレームが2つに減る。さらにフレームのコーキング仕上げにより、カバーガラスとの段差がなくなり雪が滑りやすくなる。

 実際、工事期間中、積雪に見舞われたが、夜明けとともにすぐに滑り落ちたという。稼働中のアレイは、発電によりパネルの温度が上がるため、さらに雪が落ちやすくなる。

 白老町では、最深積雪量は最大で70cm程度とされており、こうした滑り落ちた雪がアレイ前に山になっていっても、設置高120cmであれば、パネル最低部とはつながらないと見ている。そのため冬のO&Mでの除雪作業は想定していないという(図7)。

図7●設置角30度、設置高120cmを確保して除雪作業を不要に
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

「変動率毎分1%」が接続条件

 「白老町竹浦ソーラー発電所」に蓄電池を併設したのは、2015年4月に北海道電力が公表した「太陽光発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」に対応するためだ。北電は、接続申し込みが400MWを超えた分の2MW以上のメガソーラーについては、この技術要件を適用し、蓄電池の併設を求めている。白老町のサイトも系統連系に申し込んだ順番から、この要件の対象となった。

 2012年に固定価格買取制度(FIT)がスタートして以降、国内各地でメガソーラーの開発が活発化したが、相対的に系統規模が小さい北海道では、その出力変動による周波数への影響を火力発電などでカバーし切れない懸念が出てきた。そこで、北電は、大容量の蓄電池を併設してメガソーラーの短周期変動を緩和することを系統に連系する条件とした。

 この要件では、メガソーラー出力の変動幅を、蓄電池の充放電との合成出力で、1分間にPCS定格出力の1%以内に収める「変動率毎分1%」を求めている(図8)。

図8●「変動率毎分1%」以内を制御イメージ
(出所:北海道電力)
クリックすると拡大した画像が開きます

 「白老町竹浦ソーラー発電所」の場合、1分間の主力変動幅を、PCS出力(19.97MW)の1%である199.7kW内に抑えることが求められる。世界的に再生可能エネルギーの大量導入が始まり、出力変動の激しい太陽光や風力発電の接続に対し、蓄電池による短周期変動対策を求めるケースが増えている。ただ、ここまでの小幅な変動抑制の要件は珍しい。

16のコンテナに収納

 「白老町竹浦ソーラー発電所」では、TMEICが「変動率毎分1%」を実現する制御システムを構築した。韓国サムスンSDI製のLiイオン蓄電池ユニット(容量15.585MWh)とTMEIC製PCS(出力16MW)で蓄電池システムを組み上げ、TMEICの開発した「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」で制御する(図9)。

図9●サムスンSDI製の蓄電池ユニットをTMEICが蓄電池システムに組み上げた
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 これらの蓄電池システムは、太陽光パネルを設置した旧サーキット場のサイトから直線距離で約2km離れた連系変電所内に設置されている。太陽光パネルサイトから連系変電所までは総亘長3.3kmの自営線を高架で敷設して送電している。

 蓄電池は、ピンクに「afterFIT」と塗装された16個のコンテナに収容されている。コンテナ1台には、蓄電池ラックが16組あり、1つのラックには、1つ7.61kWのサムスンSDI製の蓄電池ユニットが8つで構成されている。これらを出力500kWのTMEIC製双方向型PCS2台で制御している(図10)(図11)。

図10●蓄電池システムは16のコンテナに収納した
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます
図11●コンテナは桃色にロゴを塗装した
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 太陽光パネルサイトで22kVに昇圧して連系変電所に送られてきた交流電流は、変電所内の蓄電池からの22kⅤの交流電流と合成されて北電に連系する。 

太陽光のPCSとも連係制御

 TMBCSは、メガソーラーに設置した多数台のPCSを統合して制御する「メインサイトコントローラー(MSC)」が、蓄電池のPCSとも連係し、サイト全体の連系点の発電量をリアルタイムに監視しながら、太陽光の急峻な出力変動を緩和する方向で、蓄電池を充放電制御する仕組み(図12)(図13)。

図12●TMEIC製の蓄電池用双方向型PCS
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます
図13●「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」では「メインサイトコントローラー(MSC)」が太陽光発電と蓄電池のPCSを統合制御する
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

 例えば、太陽が雲間に隠れて急に太陽光発電からの出力が急減した場合には蓄電池が放電し、逆に雲間から太陽が現れて太陽光発電の出力が急増した場合には蓄電池に充電するという制御になる。

 TMBCSは、太陽光パネルのPCSとも連係制御することで、相対的に少ない蓄電池容量で、メガソーラーの急峻な出力を平滑化できるという。また、安全面では、すべての蓄電池ユニットの状態を監視して、電池の特性に合わせて、充放電量の制御とインターロック(安全制御)を行う「FBCS(フロント・バッテリー・コントロール・システム)」と呼ぶ装置を組み込んで、安定的に蓄電池を制御できることも特徴になっている(図14)。

図14●「FBCS(フロント・バッテリー・コントロール・システム)」が蓄電池ユニットを安全面から監視する
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

スマホから「変動毎分1%」を確認

 今回の場合、蓄電池の最大出力(16MW)よりも、PCS出力(19.97MW)の方が大きいため、太陽光の急峻な出力変動を完全に平滑化できず、「変動毎分1%」を逸脱する可能性もあり、その際は、急な出力増の場合であれば、太陽光の出力を抑制することになる。蓄電池の容量をさらに増やせば、出力抑制の量や逸脱は減るものの、その分、初期投資が膨らむため、投資対効果の視点で最適な蓄電池容量を決めることになる。

 北電でも、「変動毎分1%」からの逸脱について、一定程度より少なければ、許容しているようだ。afterFIT・苫小牧支店の松岡康弘さんによると、「毎分1%」より逸脱した場合、O&Mを担当するafterFIT担当者とともに北電にもアラームが届くようになっているという。「頻繁に1%を逸脱するようだと、北電から対応を求められることになるだろう」(松岡さん)という。

 商用運転が始まって1カ月経つが、「これまでのところ1%からの逸脱は1度もない」(松岡さん)という。「白老町竹浦ソーラー発電所」の発電量データは、太陽光パネル用PCSからの出力、蓄電池の充放電量、それらを合成した連系出力の3つの情報が刻々と送られてグラフ化され、遠隔監視画面で確認できる。これらの情報は、O&M担当者のスマートフォンからも見られるようになっている。

 このグラフを見ると、日照の急減で太陽光パネルからの出力が減ると、ほぼ同時に蓄電池が放電するリアルタイム制御の様子がよくわかる。「TMBCSによる蓄電池の充放電制御によって、太陽光発電の急峻な出力変動が見事に緩和されている」(松岡さん)という。

「白老町竹浦ソーラー発電所」から北西のオロフル山を望む
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます