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「再エネ水素」と「再エネ酸素」で陸上フグ養殖(page 5)

壱岐市で始まる「太陽光+水素貯蔵システム」実証

2020/12/29 05:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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フグの陸上養殖を事業化

 また、東京大学先端科学技術研究センターと壱岐市が連携して実施する、太陽光と水素貯蔵を活用したエネルギーマネジメント実証では、なかはらが運営しているフグの陸上養殖場がプロジェクトの舞台となる。

 なかはらでは、以前からトラフグを海の生け簀で育てる「海面養殖」を手掛けてきたが、2011年から陸上に設置した水槽で育てる「陸上養殖」の事業化に取り組み、2019年には数千匹を出荷するまでにこぎつけた。場内には、16の水槽に成魚と稚魚を合わせて約5万匹が養殖されている(図7)。

図7●水槽を泳ぐトラフグ
(出所:日経BP)
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 なかはらの陸上養殖では、通常の海水より、低い塩分濃度で育てていることが大きな特徴になっている。海水の塩分濃度が3.5%なのに対して、0.9%にしている。この濃度は、一般的な哺乳類や魚類の体液(生理食塩水)とほぼ同じで、生態環境水と呼ばれる。

 海に棲む魚は、3.5%の塩分濃度をエラで排出するが、その際、体液との浸透圧調整のためにエネルギーを消費している。生態環境水の中で育てることで魚のストレスが減り、その分、成長が早くなる。こうした作用は、2011年に東京大学の金子豊二教授が見出して論文として公表したものという。なかはらは、この理論をもとに世界で初めて、「低塩分陸上養殖」の事業化に成功したという。

 壱岐では深い地下水は真水、浅い地下水は塩水になっている。なかはらの陸上養殖場では、地下から汲み上げた塩水と淡水を適切に混ぜることで、0.9%の塩分濃度にしている。場内には、微生物分解によるろ過施設があり、水槽の水は8割を循環利用しつつ、2割をろ過後に排水することで周辺環境にも配慮しているという。

 地下水を活用することで、年間を通じて20℃前後に維持される利点もある。魚に適した温度は18~24℃なので、これによっても生育が早まるという(図8)。試食会を通じて、海面養殖フグに比べても、歯ごたえのある食味が好評という。

図8●陸上養殖のフグは成長が早く食味も良くなる
(出所:日経BP)
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