新エネ・システム最前線

北海道安平町、「石炭」と「新エネ」で復興!?

道の駅「D51ステーション」盛況、「蓄電池併設メガソーラー」運転開始

2021/07/26 19:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

安平町復興のシンボル

 北海道南西部に位置する安平町は、名馬ディープインパクトを生むなど、サラブレッドの産地として知られるが、明治中期には、夕張炭鉱の石炭を港に運ぶ機関車の中継基地が置かれ、「鉄道のまち」として繁栄した。国鉄最後のSLが走っていた場所でもある。

 こうした歴史にちなみ、2019年4月、同町に「道の駅あびらD51ステーション」が開業した。駅舎や機関庫をイメージした建物に鉄道資料館や蒸気機関車「D51 320号」を展示した。特産品の販売やベーカリーではご当地ソフトクリークが人気だ。敷地内には約34kWの太陽光パネルを設置し、平常時は需要のピークカット、非常時は蓄電池に充電して照明やパソコンなど重要な設備に利用できるようにしている(図1)(図2)。

図1●「道の駅あびらD51ステーション」に展示されている蒸気機関車「D51 320号」
図1●「道の駅あびらD51ステーション」に展示されている蒸気機関車「D51 320号」
(出所:日経BP)
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図2●「道の駅あびらD51ステーション」の敷地内に設置された出力約34kWの太陽光パネル
図2●「道の駅あびらD51ステーション」の敷地内に設置された出力約34kWの太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 オープン以来、わずか1年3カ月で来場者が100万人を超え、『北海道じゃらん』による道の駅満足度ランキングで2020年に道内8位、2021年に道内9位となった。

 実は、「道の駅あびら」の建設が進んでいた2018年9月6日、「北海道胆振東部地震」が起きた。震源地域だった安平町は震度6強に見舞われ、3000戸以上の住宅が被害を受けた。町では、道の駅の開業を延期することも検討したが、むしろ、復興のシンボルとして位置づけて予定通りに開業した。町の新名所として見事にその役割を果たしている(図3)。

図3●「道の駅あびらD51ステーション」の全景。イベント時には機関車をSL車庫から出して野外に展示する
図3●「道の駅あびらD51ステーション」の全景。イベント時には機関車をSL車庫から出して野外に展示する
(出所:安平町)
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飛行機から見える巨大施設

 道の駅の開業からさらに約1年後、こちらも震災を乗り越えて予定通り営業運転を開始した施設が町内にある。2020年7月に稼働した大規模太陽光発電所(メガソーラー)「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」だ。出力約65MWの太陽光発電所に大容量蓄電池を併設した。蓄電池併設型メガソーラーとしては、国内で最大級になる(図4)。

図4●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された蓄電池
図4●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された蓄電池
(出所:日経BP)
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 苫東(北海道苫小牧市)が所有する約90 haの土地に設置した。ソフトバンクグループで再生可能エネルギー関連事業を手掛けるSB エナジーと三菱UFJリースが設立した特定目的会社(SPC)が運営主体となる。EPC(設計・調達・施工)サービスは東芝と東芝三菱電機産業システム(TMEIC)が共同で担った。太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は太陽光・蓄電池用ともTMEIC製を採用した。

 太陽光パネルの出力約64.6MW、連系出力は48MW。蓄電池はリチウムイオン電池で容量約は19.0MWh、出力約34MWとなる。年間発電量は一般家庭約1万9854世帯分の電力消費量に相当する約7147万7000kWhを見込んでいる。

 ソーラーパーク2の西隣を流れる安平川の対岸には、出力約111MW(PCS出力は約79MW)の「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」が立地し、すでに稼働していた。2つのメガソーラーは、別々に系統連系しており固定価格買取制度(FIT)の認定上は2つの発電所になるが、いずれもSBエナジーを主体に開発・事業化され、東芝がEPC(設計・調達・施工)とO&M(運営・保守)サービスを担当するなど、一体的な運営になる。

 両サイトを合わせるとパネル出力約175.6MWとなり、日本で最大級の太陽光集積地になる。その広大さは、新千歳空港に発着する飛行機の車窓からも、はっきりと視認でき、日本を代表する巨大再生可能エネルギー施設になっている(図5)。

図5●飛行機の窓から見た「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」(奥)と「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」(手前)
図5●飛行機の窓から見た「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」(奥)と「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」(手前)
(出所:日経BP)
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「変動率毎分1%」を蓄電池で達成

 太陽光パネルは両サイトとも東芝製、PCSはTMEIC製を採用した。架台は、「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」では、南北方向1本脚のタイプを採用したが、ソーラーパーク2では、南北方向に2本脚に変更した(図6)。

図6●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された太陽光パネル
図6●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 ソーラーパーク2に蓄電池を併設したのは、2015年4月に北海道電力が公表した「太陽光発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」に対応するためだ。メガクラスの太陽光発電所が系統連系するにはこの要件を満たす必要がある。

 先に稼働した「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」の着工時には、まだ、こうした接続時の要件がなかった。その後、道内の電力系統に多くのメガソーラーが接続される中、その出力変動による周波数への影響を火力発電などでカバーし切れない懸念が出てきた。そこで、北電は、大容量の蓄電池を併設してメガソーラーの短周期変動を緩和することを連系する条件とした。

 この要件では、メガソーラー出力の変動幅を、蓄電池の充放電との合成出力で、1分間にPCS定格出力の1%以内に収める「変動率毎分1%」を求めている。ソーラーパーク2の場合、1分間の主力変動幅を、PCS出力(48MW)の1%である480kW内に抑えることが求められる(図7)。

図7●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された見学者用の掲示板。蓄電池の充放電によって「変動率毎分1%」を維持する
図7●「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」に設置された見学者用の掲示板。蓄電池の充放電によって「変動率毎分1%」を維持する
(出所:日経BP)
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蓄電池と太陽光を統合制御

 特別高圧送電線に連系するソーラーパーク2には、電気保安業務を担当する専任の電気主任技術者が必要になる。北海道電力OBの技術者で、現在、東日本フィールドエンジニア(北海道苫小牧市)の増山豊さんがその役割を担っている。

 電気保安業務のベテランである増山さんにとっても、これだけ大容量のリチウムイオン蓄電池の運用を管理するのは初めてという。

 増山さんは、「人間の目では日射量の変化をそれほど感じられなくても、太陽光パネルは、雲の動きなどによる日照の変化に応じて敏感に出力が変動している。これまでは、その変動分をすべて電力系統が吸収してきたが、需要が少ない地域では系統側の対応力にも限界があり、これからの太陽光は、蓄電池を使ってこうした出力変動を緩和して、系統への負担を減らすことが重要になる」と話す。

 蓄電池は、1つの筐体(エンクロージャー)に出力1MW分のシステムを収納し、LG化学製の蓄電池セル(充放電素子)と、交流と直流を双方向で変換できるTMEIC製PCSで構成されている。各筐体は、エアコン3台が装備されており、温度を一定に維持している。

 連系変電設備の横に、34もの筐体がずらりと並んだ様子は壮観だ。「これら蓄電池システムとメガソーラー全体をまとめて制御している、発電所の心臓部がこの小さな制御システムです」。増山さんがこう説明するのが、「メインサイトコントローラー」だ(図8)。

図8●蓄電池併設メガソーラーの心臓部である「メインサイトコントローラー」
図8●蓄電池併設メガソーラーの心臓部である「メインサイトコントローラー」
(出所:日経BP)
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 ソーラーパーク2では、まずTMEICの開発した「TMBCS(TMEIC蓄電池コントロールシステム)」が蓄電池システム全体を制御する。「メインサイトコントローラー(MSC)」は、メガソーラーのPCSとTMBCSを統合管理する最上位の制御システムになる。MSCは、サイト全体の連系点の送電量をリアルタイムに監視しながら、太陽光の急峻な出力変動を緩和する方向で、蓄電池を充放電制御しつつ、それでも「変動率毎分1%」が達成できないと判断した場合は、メガソーラー側の出力を抑制する。

 「MSCによって、最後の手段としてメガソーラー側の出力を機敏に抑制できることで、変動率毎分1%の達成可能性がかなり高まる。稼働して約1年経つが、変動率毎分1%を逸脱したことはほとんどない」と言う。

筐体1つに3台のエアコン

 増山さんによると、蓄電池運用の安全管理で重要なポイントの1つは、温度管理という。「変動率毎分1%を達成するリアルタイム制御では、天候によってはかなりの速度で充放電を繰り返すため、蓄電池セルの発熱が激しくなる。これを1筐体あたり3台ものエアコンで一定以上に温度が上昇しないようにしている。エアコンの故障で筐体内の温度上昇を抑え切れないと、アラームが働き、その蓄電池ユニットは稼働できなくなる」という。

 通常、メガソーラーで設置される1MW程度のPCSを収納した筐体にはエアコン1台で温度管理することが一般的だが、蓄電池セルも収納したソーラーパーク2の筐体では、3台ものエアコンで庫内温度を制御している。中に入ると夏でもひんやりして涼しい(図9)(図10)。

図9●蓄電池システムを収納した筐体はエアコン3台で庫内温度を管理する
図9●蓄電池システムを収納した筐体はエアコン3台で庫内温度を管理する
(出所:日経BP)
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図10●蓄電池システムを収納した筐体の中は真夏でも涼しい
図10●蓄電池システムを収納した筐体の中は真夏でも涼しい
(出所:日経BP)
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 「MSCで、蓄電池とメガソーラーの双方を統合制御できることで、蓄電池への過度な充放電によって温度が急上昇するような運用を防ぐこともできる。蓄電池併設メガソーラーという新しいタイプの電気設備の安全な運用にとってもMSCの役割は大きい」(増山さん)。

 今後、エリア全体の需給バランス維持やノンファーム型接続によって、メガソーラーに対する出力抑制の頻度が上がっていくことが予想され、送電できない分を充電しておき、空き時間に売電するという役割からも、蓄電池を併設した太陽光や風力発電が一般的になる可能性もある。ソーラーパーク2は、その先駆けとして注目されそうだ。

1本脚を2本脚で修復

 実は、2018年9月6日の北海道胆振東部地震では、建設中だったソーラーパーク2に影響はなかったものの、すでに稼働していた「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」では、強い揺れによって一部の架台が傾いた(図11)。

図11●地震で傾いた「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」の架台
図11●地震で傾いた「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク」の架台
(出所:日経BP)
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 同発電所では、杭基礎に架台を固定し、アレイ(パネルの設置単位)を設置角30度で取り付けている。アレイはパネル42枚(14段×3列)で構成し、1アレイを前後1本、横方向に9本の杭基礎で支えている。積雪に配慮して地面からのパネル最低部の設置高は1m。結果的にアレイの最高部は地面から2.5mに達する。

 地震後、一部のアレイが前側(南側)に杭基礎ごと前のめりに傾いた。傾いたアレイは、正常なアレイとの間に隙間ができていた。明らかな傾きが見られるのは10アレイ前後で、パネル数百枚分になるが、発電自体に支障はなかった。

 ただ、傾きの大きな架台に関しては改修に乗り出し、その際、前後1本脚タイプを前後2本脚タイプの架台に設計変更することで万全を期した(図12)。

図12●傾いた架台の一部は、2本脚タイプの架台にして修復した
図12●傾いた架台の一部は、2本脚タイプの架台にして修復した
(出所:日経BP)
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 安平町では、早来大町にある早来神社の石灯籠がすべて倒れ、拝殿の一部が倒壊して屋根が落ちるなど、大きな被害を受けた。その拝殿は、多くの人の義援金など2020年までに再建され、真新しくよみがえり、新名所「道の駅あびらD51ステーション」も開業した(図13)(図14)。

図13●地震で損壊した早来神社
図13●地震で損壊した早来神社
(出所:日経BP)
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図14●再建された早来神社
図14●再建された早来神社
(出所:日経BP)
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 町を代表する新旧施設の被災が克服されるとともに、D51ステーションやソーラーパーク2など、今後を担う新たな設備も順調に動き始めた。かつて石炭を運ぶ「鉄道のまち」として栄えた安平町は、災害を乗り越え、町に保存されていた機関車という資源、そして太陽エネルギーを新たな糧として、新しい時代を歩み始めた(図15)。

図15●復興のシンボルとなった「道の駅あびらD51ステーション」
図15●復興のシンボルとなった「道の駅あびらD51ステーション」
(出所:日経BP)
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