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風力産業の拠点化に着々、北九州市「十年の計」

響灘地区、再エネ集積地から洋上風力の拠点港へ

2021/08/25 01:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ
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「製造業の基盤が生かせる」

 北九州市が洋上風力産業の総合拠点を目指し、着々と環境整備を進めている。日本の産業近代化を支え、公害を克服してきた同市が、新たな成長分野として「洋上風力」に着目し、その総合拠点となるビジョンを掲げたのは2011年。国のカーボンニュートラル宣言で洋上風力への期待が高まる中、これまで打ってきた布石が10年を経て実を結びつつある。

 洋上風力のアジアにおける「総合拠点」を目指す戦略は「グリーンエネルギーポートひびき事業」としてスタートした。同市の考える「総合拠点」とは、洋上風力発電事業に関する以下4つの拠点機能を備えるものだ。(1)風車部材の輸出入・移出入、(2)風力発電関連産業の集積、(3)組み上げた風車の洋上への積み出し、(4)O&M(運用・保守)――。

 つまり、風車やその部品を受け入れて組み上げ、洋上の設置場所に向けて積み出す建設拠点とともに完成後のO&M機能も備え、それらを支える風力関連産業を周辺に集積させることを目指す。欧州が洋上風力の低コスト化に成功し、普及が進んでいるのは、こうした「洋上風力産業化システム」ともいえる基盤が地域に整備され、機能してきたからだ(図1)。

図1●洋上風力の拠点港のイメージ
(出所:北九州市の資料を元にひびきウインドエナジーが修正・加筆)
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 北九州市港湾空港局で同事業を担当してきた光武裕次理事は、「1995年の阪神淡路大震災をきっかけに日本の港湾は競争力が落ち、何もしなければますます存在感が低下する。港湾と製造業を基盤にした北九州の強みを生かせる分野として洋上風力に着目し、欧州で成功した風力の拠点を何度も視察し、必要となる機能などを研究してきた」と話す。

 同市でこうした機能を担う主な舞台は、若松区の響灘地区になる。沿岸に位置する約2000haの広大な埋立地で、リサイクル関連などの工場のほか、固定価格買取制度(FIT)を利用した風力発電やメガソーラー(大規模太陽光発電所)、バイオマス発電施設が立地し、すでに全国有数の再生可能エネルギーの集積地になっている。

 同地区のなかで、洋上風力の建設拠点となる基地港湾など「風力関連ゾーン」では、2023年の完成を目指して、すでに港湾設備の建設工事が始まっており、岸壁やその地耐力強化、泊地、洋上風力設備の保管ヤードなどの建設が進んでいる(図2)(図3)(図4)。

図2●響灘地区では洋上風力関連産業ゾーンの整備が進んでいる
(出所:日経BP)
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図3 ●洋上風力設備の重量に耐えられる岸壁の建設が始まった。400tを超える地耐力を確保する
(出所:日経BP)
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図4●拠点港には風車部材の仮置きヤードが必要になる
(出所:日経BP)
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