トヨタがFCV500台を提供
東京2020大会の期間中は、浪江町から東京都江東区にあるENEOSの水素ステーション「Dr.Drive セルフ潮見公園店水素ステーション」に運んだ。FH2Rで満タンになった圧縮水素トレーラーは、運搬車の後部に連結し、浪江町と都内まで約300kmを走行して潮見の水素ステーションに運ばれ、トレーラーが切り離された(図10)。
今回の大会では、トヨタ自動車が約500台のFCV「ミライ」を提供し大会運営に利用された。その一部が、「Dr.Drive セルフ潮見公園店水素ステーション」で充填した。同ステーションはセルフ式ガソリンスタンドと水素ステーションの併設店で、1つの給油所でガソリン、軽油のほか「水素」も選択できる近未来的な給油所になっている(図11)(図12)。
FCVへの水素の充填サービスは、高圧ガス保安法に基づき、資格と経験のある保安監督者のもと、教育・訓練を受けた作業者が担当している。セルフ式に関しても、すでに「セルフ充填ガイドライン」が制定され、認められる方向になっているが、潮見の水素ステーションでは、セルフでなく作業者によるフルサービスでの充填になっている。
東京2020大会は無観客になったことで、FCVの運用台数が500台より減ったものの、それでも午前中など充填の集中する時間帯には、次々にFCVが訪れた(図13)。
水素ステーションでは、19.6Mpaの圧力でトレーラーに貯められている水素を0.6Mpaに減圧して圧縮機に送り込み、82Mpaに圧縮して蓄圧器に貯めておく。FCVが来ると、FCVの水素タンクとの差圧を利用してディスペンサーからFCVに水素を注入する。水素は圧縮すると高温になって膨張するため、冷却器でマイナス40度に冷やしつつ充填する(図14)。
トヨタでは、FCVのほか、蓄電池を搭載した電気自動車(EV)を約850台、大会運営のために提供し、FCVは主に会場と会場との輸送、EVは主に会場内での移動に利用された。走行時にCO2を排出しないEVとFCVの活用台数として、東京2020大会は、オリンピック・パラリンピック大会史上、最大となった。