新エネ・システム最前線

能登のメガソーラーを牽引する重光商事、本社をNearly ZEBに

EV35台導入して太陽光を自家消費、光熱費・年間200万削減

2021/12/15 23:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

地方中堅企業が11MW建設

 金沢市に本社を構える重光商事(金沢市)は、タオルなどを扱う貿易商社で、売上高約30億円、従業員約60人の地方中堅企業だ。タオルは自社企画の製品をベトナムと中国から輸入し、2000点以上の種類と常時10億円分もの在庫を持つ。顧客から注文を受けると必要な分を翌日に配送する体制を整えている。

 東日本大震災を受け、政府が固定価格買取制度(FIT)をスタートさせたのは2012年7月。重光商事では、経営トップが早くからFITの仕組みに着目し、2012年9月には、1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「第1太陽光発電所」を稼働させた(図1)。

図1●重光商事の「第1太陽光発電所」
図1●重光商事の「第1太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 石川県かほく市にある同社の物流センターの屋根上に設置した。これは北陸電力送配電管内で運転を開始した最初のメガソーラーとなった。

 FIT開始当初、北陸では、太陽光発電に乗り出す機運が一気に高まったとは言えない。というのは、全国的に見れば、年間を通じて相対的に日照に恵まれず、冬は積雪も多く発電量のロスも予想された。このため、当初、大手資本の太陽光デベロッパーにとって、北陸地域での開発は優先順位が低かった。

 そんななか、重光商事では、いち早く運開した「第1太陽光発電所」の発電量が予想以上に好調だったことから、その後、「第2太陽光発電所」から「第10太陽光発電所」まで10サイトで合計11MWまで次々にメガソーラーを建設し、能登半島地域の太陽光開発を牽引してきた。

 売上高30億円程度の中堅企業で、10MWを超えるメガソーラー設置に必要な資金を金融機関から調達することは通常、難しい。重光商事では、当初から発電設備をオフバランス化して財務指標の健全性を維持するため、設備所有権を持たないリースのスキームによってメガソーラーを導入した。ただ、リースといってもローン(融資)であることには変わりなく、「当初リース会社からは、重光商事の企業規模では5MWまでが限度と言われてきた」と、同社でメガソーラー事業を率いてきた中谷浩登取締役は打ち明ける。

 しかし、能登半島でのメガソーラー事業に自信を得ていた中谷取締役は、さらなる新規開発を目指し、ファイナンスの可能性をリース会社と粘り強く交渉し、「最終的に本業の安定性も評価してもらい、さらに5MW程度の開発が可能になった」(中谷取締役)という。

能登半島の5市町に10サイト

 10サイトの立地は、かほく市が3カ所(太陽光パネル出力1.43MW、同1.25MW、同1.2MW)、羽咋市が3カ所(同2MW、同1MW、同0.5MW)、能登町が2カ所(同1MW、同0.75MW)、志賀町が1カ所(同1MW)、輪島市が1カ所(同0.8MW)となり、半島の北部まで範囲を広げてきた。

 また、用地については、2カ所は自社倉庫の屋根と敷地内、4カ所が羽咋市や能登町、輪島市といった自治体からの賃借、4カ所が民間企業からの賃借となっている。FITによる買取価格は40円/kWhが4カ所、36円/kWhが3カ所、32円/kWh、24円/kWh、18円/kWhが各1カ所。FIT開始から迅速に動いて40円/kWh案件を5MWまで確保し、その後、約5MW分まで追加融資を得たことで、順次、新規開発を進めたことを物語る。

 最初の発電所となった「第1太陽光発電所」は、かほく市にある自社倉庫「かほく物流センター」の屋根上に設置した。同倉庫は、敷地面積7900坪(約2.6ha)、倉庫面積2900坪(約0.957ha)で、当初、ほぼ屋根上の全面を使って約1MWの太陽光パネルを設置し、2012年9月に運転を開始した。

 太陽光パネルは三菱電機製の単結晶シリコン型(250W/枚)を3990枚、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW機、250kW機の合計750kW)を導入した。太陽光パネルは、折板屋根に傾斜角2度で設置した。設計・施工事業者は北菱電興(金沢市)で、以降、建設した発電所も北菱電興が設計・施工、太陽光パネルは三菱電機製、PCSはTMEIC製という組み合せが基本になっている(図2)。

図2●「第1太陽光発電所」のパワーコンディショナー(PCS)。北菱電興が設計・施工し、パネルは三菱電機製、PCSはTMEIC製を採用した
図2●「第1太陽光発電所」のパワーコンディショナー(PCS)。北菱電興が設計・施工し、パネルは三菱電機製、PCSはTMEIC製を採用した
(出所:日経BP)
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雨水が溜まり、水平設置を改修

 「第1太陽光発電所」は2015年8月に敷地内の空きスペースを使って430kW増設して、全体で1.43MWの発電所になった。この増設分は、当初屋根上に合わせてほぼ水平に設置したものの、雨水が溜まることから、その後改修して角度を付けた(図3)(図4)。

図3●「第1太陽光発電所」の増設分(改修前)。当初は水平設置だったため、雨水が溜まりやすかった
図3●「第1太陽光発電所」の増設分(改修前)。当初は水平設置だったため、雨水が溜まりやすかった
(出所:日経BP)
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図4●「第1太陽光発電所」の増設分(改修後)。傾斜を付けたことで、雨水が溜まらなくなった
図4●「第1太陽光発電所」の増設分(改修後)。傾斜を付けたことで、雨水が溜まらなくなった
(出所:日経BP)
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 最大規模となったのが、羽咋市新保町の工業団地内に設置した出力2MWの野立て太陽光「第3太陽光発電所」で、羽咋市から工業団地内の遊休地を賃借したものだ。2013年3月に稼働した(図5)。同発電所に隣接した用地には、同社の倉庫「羽咋物流センター」があり、2019年9月には、同センターの屋根上にも、0.5MWの屋根上太陽光を新設した。

図5●2MWの野立て太陽光「第3太陽光発電所」
図5●2MWの野立て太陽光「第3太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 一方、2017年にはシャープエネルギーソリューションと共同で、モンゴルのダルハンで10MW、2018年には同国ザミンウードで15MWのメガソーラー事業を開始した。これは日本政府の2国間クレジット制度を利用したもので、現地企業との合弁になる。もともとはシャープエネルギーソリューションが企画したが、メガソーラーに熱心でアジアともかかわりがある企業として重光商事に共同事業者として提案があり、参加したという。

これまでに雪害被害はなし

 北陸に立地する太陽光発電所にとって、大きな課題が積雪への備えだ。中谷取締役は、「冬の12~2月は、ほとんど発電しないという想定で事業計画を組んでいる」と言う。ただ、実際には、雪が降らない日の方が多く、それなりの発電量になるため、それが年間を通して予想より上振れする要因にもなっている。

 野立て太陽光に関しては、太陽光パネル・横置き・4段のアレイ(パネルの設置単位)を採用し、設置角10~20度で設置している。積雪時には、パネル上、パネル下とも除雪を行わず、自然に融け落ちるのを待つ、という考え方で運営している(図6)。

図6●設置角10度でパネルを取り付けた「第6太陽光発電所」
図6●設置角10度でパネルを取り付けた「第6太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 「積雪後は、長時間、パネルの上に雪が載っていることになるが、それを想定して架台の強度を設計しているため、これまで一度も、架台の損傷はない」(中谷取締役)という。

 雪国では、設置角を30度以上に傾けて早く雪を落とすという設計もあるが、その場合、パネル下に雪の山が出来てアレイの先端とつながって融ける際に架台が損傷したり、それを回避するために雪山の除雪が必要になったりする。重光商事の野立て太陽光は、あえてパネルから雪を滑り落さないことで、こうした手間や損傷リスクを下げている。

県内初の「Nearly ZEB」

 重光商事は、本社建屋を建て替え、2020年9月に竣工した。延床面積・約1976m2の3階建てで、石川県内で初の「Nearly ZEB(ニアリーゼブ)」を取得した。Nearly ZEBとは、省エネと再エネを組みわせ、従来ビルに比べエネルギー消費を75%以上減らした建物。100%減らすZEB(ゼブ)の一歩手前という位置づけだ。

 新本社ビルは金沢市大野町にあり、海岸から1㎞程度で相対的に風が強い。そこで、建物の形状を流線形にして強風を受け流し、外装の金属素材はチタン亜鉛合金を採用して、対候性能を高めている(図7)。

図7●重光商事の本社ビル外観
図7●重光商事の本社ビル外観
(出所:日経BP)
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 地上からは見えないが、屋根上には出力70kWの太陽光パネルを設置しており、自家消費を基本に、余剰分を売電している。建物周囲の駐車場には、8基の電気自動車(EV)用の普通充電器に加え、EVと連係制御するV2Hシステムが3基、導入されおり、同社が保有する35台のEV(日産自動車製「リーフ」)を駐車している場合、充電制御することで太陽光発電の自家消費率を高めている。

 正面玄関から中に入ると、内部空間は3フロアの吹き抜けになっている。その大空間を囲むようにタオル商品の収納棚が配置されいる。そこには、色とりどりのタオルが置かれ、自社商品の展示がインテリアにもなっている(図8)。

図8●吹き抜け空間の棚に自社商品であるタオルを展示
図8●吹き抜け空間の棚に自社商品であるタオルを展示
(出所:日経BP)
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「リーフ」35台を運用

 省エネに関しては、外壁や屋根に高性能の断熱材を施工し、窓は複層ガラス、室内には全室LED照明と人感センサー・明るさ検知システムを採用した。空調に関しては、高効率ビル用マルチエアコンを採用し、主要な部屋は床吹きにして、快適性と省エネ性を両立させた(図9)。

図9●人感検知、明るさ検知付きのLED照明
図9●人感検知、明るさ検知付きのLED照明
(出所:日経BP)
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 そして、こうした電気設備などを統合制御するBEMS(ビル・エネルギー管理システム)を導入して、負荷制御を可能にするとともに、電気の使用状況を見える化することで、社員に省エネ意識を喚起する効果も狙っている(図10)(図11)。

図10●採用した省エネ技術
図10●採用した省エネ技術
(出所:重光商事)
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図11●壁に取り付けたモニター画面で需給状況を見える化。この日は曇りだったが、それでも需要の約半分を屋根上太陽光で賄っている
図11●壁に取り付けたモニター画面で需給状況を見える化。この日は曇りだったが、それでも需要の約半分を屋根上太陽光で賄っている
(出所:日経BP)
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 重光商事では、2014年から「リーフ」を導入し始めた。会社が購入し、社員に貸し出して通勤に利用してもらう仕組みで現在、35台を運用している。リーフ利用者は、通勤後は会社の駐車場に止めておき、普通充電器やV2Hシステムに接続して充電できる。同システムは、系統停電時には、太陽光とともにビルに給電できるため、災害時に備えたBCP(事業継続計画)対策の強化にもなっている(図12)(図13)。

図12●35台の「リーフ」を社員に貸与して通勤に利用
図12●35台の「リーフ」を社員に貸与して通勤に利用
(出所:日経BP)
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図13●V2Hシステムを導入しBCP機能を高めた
図13●V2Hシステムを導入しBCP機能を高めた
(出所:日経BP)
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 日中、晴れていれば、屋根上の70kWの太陽光発電でほぼ本社屋の電力需要を賄えるという。夜間や曇りの日を含めても、年間でエネルギー削減率は省エネと太陽光発電を合わせて通常の建物に比べて80%近い削減率になり、Nearly ZEBを達成している。

 年間の電気料金で見ても、新社屋として初めて1年間の運用となる2021年は、旧社屋に比べて年間180万円のコスト削減になりそうという。加えて、余剰売電による収入が20万円ほど見込めるので、年間の経済効果は200万円に達する見込みという。

コロナ禍で収益を下支え

 屋根上太陽光については、当初は全量自家消費でスタートし、余剰分は出力抑制するという運用だった。だが、週末の休業日など予想以上に抑制する分が多くなることから、事後的に北陸電力送配電と交渉し、1kWh当たり数円と低単価ながらも売電が可能になったという(図14)。

図14●本社屋根上に設置した出力70kWの太陽光パネル
図14●本社屋根上に設置した出力70kWの太陽光パネル
(出所:重光商事)
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 重光商事は、メガソーラー事業から、EVの導入、Nearly ZEBへの本社建て替えなど、地域でも率先して環境問題に取り組んできた。ただ、こうした取り組みは、ランニングコスト削減以外にも経営の安定化に貢献しているという。

 同社の主力製品であるタオルは、新型コロナウイルスの感染予防対策で旅行客や出張客が減ると、ホテルでの需要が縮小する。「タオルの売り上げが大幅に落ち込む中、例年通りの売電収入を着実に確保できるメガソーラー事業は、ほんとうにありがたかった」と、中谷取締役は言う。社内的にメガソーラー事業が再評価され、「定期的な除草も含めて、改めて計画的なメンテナンスをキッチリやっていこうとの機運になった」(中谷取締役)。

 同社では、メガソーラー事業の次の一手を模索している。地域共生型が重視される中で注目される営農型のほか、10年後のFIT終了を睨み、売電収入を最大化するためのアイデアを企画し、早めに手を打っていきたいという。