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「系統蓄電池に求められる高速制御、0.5秒の応答性を実現」、TMEICの澤田執行役員に聞く

英国で合計100MWのプロジェクト着工、北米・日本の市場拡大に備える

2022/02/09 12:00
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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日本工営と東芝三菱電機産業システム(TMEIC)など日系企業5社は、英国で大規模な蓄電池を使った系統安定化事業に乗り出す。合計約100MWの蓄電池を電力系統に接続し、太陽光・風力発電の増大で不安定になる需給バランスを安定化させるサービスなどを提供する。前回の同コラムで日本工営の秋吉博之副社長に系統蓄電池ビジネスの方向性を聞いたのに続き、TMEICの澤田尚正執行役員に系統蓄電池に求められる制御技術などについて聞いた(関連記事:「太陽光・風力の急増で、系統蓄電池によるサービス事業が拡大へ」、日本工営の秋吉副社長に聞く)

国内で300MWhの蓄電池システム構築

TMEICの澤田尚正執行役員
TMEICの澤田尚正執行役員
(撮影:清水盟貴)
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――電力系統に直接、連系して市場を通じて事業収益を得る「系統蓄電池」は、世界的にも黎明期で、事業リスクもあります。政府などからの支援なしで、日系企業が海外でこうした新ビジネスに乗り出すのは、異例です。

澤田 英国は、太陽光・風力発電といった変動性再生可能エネルギー(VRE)比率が高く、それに対応した各種の電力市場が立ち上がり、活発化しています。そうした先進的な市場環境で系統蓄電池のビジネスに取り組むことは、今後、蓄電池システムに求められる制御の高速化、高度化のニーズを把握するうえで、たいへんに意義があります。

 TMEICは、太陽光向けパワーコンディショナー(PCS)をはじめとして、再エネの普及に貢献できる事業に積極的に取り組んでおり、系統蓄電池もその1つです。

 再エネの導入に熱心な先進国では、太陽光・風力の導入が進んでおり、それによる系統運用への影響を抑制するため、「需給安定化市場」とも言える新ビジネスが立ち上がってきています。

 まず地域的に、メガソーラーや大型風力に併設した蓄電池が求められますが、一般的にVRE比率が20%を超えてくると系統全体の運用が不安定になってくるため、それに対応した各種市場が整備されます。そうなると系統蓄電池に事業性が出てきます。英国はすでにその水準に達しています。今後、北米や日本もこうした段階に入っていきます(関連記事:「系統蓄電池」解禁へ、10MW以上は「発電所」に)。

 TMEICは、北米においてメガソーラー向けPCSで累計15GWを超える納入実績があり、メガソーラー併設蓄電池でも、テキサス州で242MWの太陽光に96MWの蓄電池を併設した大型プロジェクトを受注しています。実は、系統蓄電池の市場も立ち上がりつつあり、小規模ですが、25MWの系統蓄電池を納入し、すでに稼働しています。

 日本では、北海道と離島で再エネ併設型蓄電池が稼働しています。TMEICは、北海道八雲町で国内最大規模となる52MWの蓄電池システムを構築したほか、同じく北海道において安平町で34MW、登別市で18MW、白老町で16MW、知内町で12.5MWなど、累計で出力230MW、容量300MWhを超える蓄電池システムを国内で構築した実績があります。

 今後、日本でも2024年には系統安定化のための各種電力市場の運用が本格化します。これを機に国内で系統蓄電池市場が立ち上がると見ており、実際すでに多くの日本企業から引き合いをもらっています。英国のプロジェクトや国内の大規模システムで蓄積したノウハウを生かし、系統蓄電池事業に取り組む企業をサポートしたいと考えています(関連記事:「八雲町に国内最大の蓄電池併設メガソーラー稼働」)。

TMEICが構築した約52MWの国内最大規模の蓄電池システム。北海道八雲町のメガソーラーに併設した
TMEICが構築した約52MWの国内最大規模の蓄電池システム。北海道八雲町のメガソーラーに併設した
(出所:日経BP)
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