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北九州市、「再エネ水素」の製造・運用を実証(page 5)

IHI、太陽光・風力・ごみ発電から低コストで水素製造

2022/03/03 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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水素からアンモニア、メタンへ

 IHIは、再エネからの効率的な水素製造に取り組みつつ、さらにその先を睨んだカーボンニュートラル実現に向けた技術開発に着手している。

 北九州市で始まった「CO2フリー水素製造・供給実証」では、製造した水素を運ぶため、13MPaに圧縮してカードルに貯め、トラックに載せて運んでいる。今後、水素が再エネの運搬手段として社会に広く普及していくためには、こうした水素の「運搬効率の悪さ」を克服する必要がある(図13)。

図13●響灘地区で製造した水素を貯め、水素ステーションに運ぶカードル
図13●響灘地区で製造した水素を貯め、水素ステーションに運ぶカードル
(出所:日経BP)
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 その解決策として現在、提案されているのが水素を-253℃に冷却して液化する方法やアンモニアや有機ハイドライドに変換して、運搬性を高める技術だ。

 IHIでは、これらの技術のなかでも、アンモニアに着目している。すでに肥料の原料などとして水素からアンモニアを製造する手法やインフラが確立しており、液化しやすいため、水素キャリアとしてトータルで最もコストが安くなると見ている。

 加えて、アンモニアは燃えるため、水素に再変換せず、火力発電所や工業炉などでそのまま燃料として利用できる点も魅力という。IHIでは、石炭火力やガスタービンで水素を50%以上混焼する技術にめどをつけており、将来的には100%専焼を目指している。

 こうしたアンモニアの利点は、海外の低コストの再エネを日本に輸入するプロジェクトで発揮される。すでにIHIと丸紅は、オーストラリア・タスマニア州の水力発電からアンモニアを製造し、日本やアジアに運搬して利用するプロジェクトの事業性調査を進めている(図14)。

図14●オーストラリアのグリーンアンモニア実証の流れ
図14●オーストラリアのグリーンアンモニア実証の流れ
(出所:日経BP)
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 さらに同社では、化石燃料の燃焼時に出るCO2を回収・貯留しておき、カーボンフリー水素と反応させることで、メタンやオレフィン(不飽和炭化水素=プラスチック原料の1つ)を合成する「カーボンリサイクル」技術にも取り組んでいる。

 すでに「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」では、メガソーラーの電気で製造した水素と、CO2からメタンを合成する「メタネーションプラント」を設置している。こうした技術は、工業都市である北九州にも適用しやすい。

 響灘地区のある九州では太陽光の導入が進み、需給バランス維持のために余剰となった再エネを出力抑制する状況が頻繁に発生している。こうした余剰再エネを有効活用することで、CO2フリー水素を製造し、将来的にアンモニアやメタン、オレフィンに変換できれば、ガス事業や素材など幅広い業種でカーボンニュートラルへの移行を後押しできる。

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