1.2kmの水素パイプライン
菅前総理大臣のカーボンニュートラル宣言で、水素を活用したエネルギーシステムが脚光を浴びている。福岡県と北九州市は、約10年前から水素に着目し、連携して実証事業などに取り組んできた。
北九州市東田地区もその舞台の1つで、日本製鉄の遊休地を活用し、2011年から「北九州水素エコタウン」が稼働している。日鉄の工場で発生する副生水素を燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションに供給するとともに、1.2kmものパイプラインを市街地まで敷設して直接、水素を供給し、博物館や実証住宅に設置した定置型燃料電池システムで活用している(図1)。
また、福岡市や久留米市内でも、水素ステーションの運営や、商業施設での燃料電池フォークリフトなどで水素を活用してきた。
ただ、これらの実証で使われてきた「副生水素」は、工場で使われる化石資源の利用過程で排出されるものなので、「CO2フリー」ではなかった。こうした化石由来の水素は、「グレー水素」と呼ばれる。燃料電池による発電システムは、エンジンなど内燃機関に比べて効率が高いため、省エネに貢献するものの、「グレー水素」では脱炭素は難しい(図2)。