「卒FIT」太陽光向け買取単価が出揃う、一覧表から傾向を分析

新電力が約2円高め、エリア別では「東高西低」

2019/07/05 02:00
金子 憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ、工藤 宗介=技術ライター

「卒FIT」商戦が始まる

 今年11月、固定価格買取制度(FIT)の買取期間が終了する、いわゆる「卒FIT」住宅太陽光発電が現れる。その件数は、2019年だけで53万件・約200万kWに達する。2020年以降も毎年20~30万件が新たに「卒FIT」を迎え、2023年までに累計で165万件・670万kWもの住宅太陽光が、これまでの旧一般電気事業者との売電契約が終了する(図1)。

図1●「卒FIT」となる住宅太陽光設備の推移
(出所:経済産業省)
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 「卒FIT」住宅太陽光からの電気は、FITを利用して売電する再生可能エネルギーと違い、温暖化ガスを排出しない「環境価値」を持っている。一方で、小口でかつ出力が変動するため、電力小売りの電源として調達した場合、需給バランスの難易度が上がる。

 積極的に調達するか否か、小売事業者によって評価が分かれるものの、複数の新電力会社に加え、2018年内に旧一般電気事業者の全社が「卒FIT」太陽光の余剰買取の方針を示し、6月までに買取単価を公表した。11月を前に買取契約の受注合戦が活発化している。

 「卒FIT」商戦を巡っては、現在、余剰電力を買い取っている旧一般電気事業者が有利なことから、経済産業省の審議会で、2019年6月までに旧一般電気事業者が具体的な買取メニューを示し、それを踏まえたうえで、新電力が買取メニューを公表するというスケジュールが決まっていた(図2)。

図2●「卒FIT」向け買取サービスのスケジュール
(出所:経済産業省)
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 余剰電力の買い取りでは、kWhあたりの買取単価を設定し、他の契約などを条件にせず、電力量に応じて買い取る形が基本サービスとなる。ただ、全国一律の買取条件にしている企業のほか、エリア別の買取単価を設定したり、設定した買取単価を適用する条件に電力小売り契約や設備の導入などを前提にするなど、買取メニューを複線化しているケースも多い。また、北陸電力は、余剰電力量によらず、契約電力量に応じた買取料金を年額で一括払いする方式も採用している。

 このほか、余剰電力を一時的に預かり電気料金に充当する「仮想蓄電池サービス」、ポイントサービスへの還元などが発表されている。

 

旧一般電力は7~8円、新電力は8~10円

 これまでに公表された買取単価を見ると、条件やエリアによってかなり異なるものの、条件設定のない余剰買取の「基本サービス」では、概ね旧一般電気事業者は7~8円/kWh程度、新電力は8~10円/kWh程度が中心価格帯になっている。一覧表は、本記事の最終ページに掲載した。

 地域別では、需要に占める太陽光発電電力の比率が多くなる傾向のある南のエリアほど買取単価が低くなる傾向がある。これは日本卸電力取引所(JEPX)の昼間時間帯のエリアプライスを反映していると見られる。地域間連系線の制約からエリア間の値差が生じる国内の電力卸市場の課題を表しているとも言える。

 特に、2018年から事業用太陽光に対する出力制御を実施している九州エリアでは、出力制御指令の出る春秋の昼間軽負荷期には、市場価格はゼロ円近くまで下がるため、FIT外で太陽光を数円で購入した場合、その時間帯は確実に逆ザヤが発生することになる。

 九州電力が7円/kWh(以下同)に設定したほか、全国展開するエネットは東日本エリア9.3円、西日本エリア8.4円、九州エリア7.2円とした(図3)。また、出光昭和シェルとソーラーフロンティアは、九州エリア7.5円、その他のエリア8.5円に設定している。

図3●エネットは3エリア別に買取単価を設定
(出所:エネット)
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 それとは逆に、東日本ではベースとなる需要が大きく、相対的に昼間軽負荷期にも太陽光の電力を受け入れやすい。東京エリアと同エリアとの連動制が高い東北エリアのJEPXのプライスは、これまでのところ昼間帯の低下度合いが小さい。このため東電エナジーパートナーが8.5円、東北電力が9円と旧一般電気事業者のなかで最高値となっている。

 ちなみに、新電力のダイレクトパワー(東京都新宿区)は、7月3日現在、詳細な買取サービス体系を発表していないが、JEPXの仕入れ価格に可能な限り近い価格での買い取りを表明している。同社によると、2017年の平均仕入れ価格(関東エリアプライス)は10.15円/kWhだったという。

 こうしたエリアによる買取単価を表にしてみると、概ねそのエリアの旧一般電気事業者の単価を底値に、関東では8~10円、中部では7~10円、関西では8~10円、九州では7~10円となっており、旧一般電気事業者と新電力間の差は、最大で2~3円となっている(図4)。基本サービスにおいてこうした差が出るのは、インバランスリスクの考え方のほか、環境価値を収益につなげていく事業モデル、そして買取サービスをほかのビジネスにつなげる事業戦略の違いなどが背景にありそうだ。

図4●主要エリア別の買取・基本サービス単価の一覧
(出所:日経BP メガソーラービジネス)
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高額買取で電力小売りの新規開拓

 新電力各社は、「卒FIT」太陽光の余剰買取を表明していない事業者も多いものの、買取サービスを公表した企業は旧一般電気事業者よりも高めの設定が目立つ。これは、電力小売り事業の販促策としての意味合いも持たせているからと思われる。

 本来、余剰電力の買取契約(基本サービス)と電気小売り契約は別のもので、それぞれ異なる事業者を選ぶことも可能だが、新電力の場合、両契約をセットにすることを前提に買取単価を設定しているケースが多い。すでに小売り契約している顧客を囲い込んだり、余剰買取契約を機に電力小売りの顧客として新規に開拓したりすることを狙っている。

 この背景には、太陽光設備を設置している戸建て住宅は、相対的に建屋規模が大きく家族構成や電力消費量が多い傾向にあることから、電力小売りのターゲットとして収益性が高いであろうとの読みもありそうだ。

 東急パワーサプライが自社電力小売りとの契約を前提に10.9円という関東圏では最高値の水準を設定しているのを始め、東京ガスが10.5円、東邦ガスと大阪ガスが9.5円、市民生活協同組合ならコープが11円、宮崎電力が10円など、いずれも自社の電力小売り契約を前提に高めの単価を設定している(図5)。

図5●東急パワーサプライは、業界トップクラスの買取単価をアピール
(出所:東急パワーサプライ)
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 一方、ハウスメーカーによる余剰電力買取サービスは、既存の自社住宅オーナーへのサービスという側面が強い。積水ハウスと積水化学工業、旭化成ホームズは、それぞれ自社で販売する太陽光発電設置住宅の顧客向けに余剰電力の買い取りを行う。買取単価は、積水ハウス11円、旭化成ホームズ10円(蓄電池なし)、積水化学工業9円(蓄電池なし)となっている。

 ただ、これら買取サービスを表明したハウスメーカーは、買い取った電力を自社の事業所や展示場などで活用する方針をとっており、環境価値のある「卒FIT」電力の利用を自社のCO2削減策として位置づけている。

「仮想蓄電池サービス」とは?

 ほとんどの旧一般電気事業者は、通常の買取契約のほかにも、顧客の余剰電力を一時的に預かる「仮想蓄電池サービス」を用意した。同サービスでは、預かった余剰電力を、太陽光発電が利用できない時間帯などで自家消費されたものとみなして、月額の電気料金から差し引く。結果的に、顧客宅に蓄電池を導入した時と似たような効果が期待できる。

 差し引き電力の算定方式は、東北電力では月当たりの上限を超えた電力は翌月に繰り越し、四国電力では上限を超えた電力を買い取り、中国電力や北陸電力では料金区分や使用時間ごとに買取単価を定めて単価の高い料金区分から順に割り当てるなど、事業者によって異なる(図6)(図7)。また、東北電力や四国電力では、月額利用料金を設定している。

図6●四国電力の仮想蓄電池サービス「ためトクサービス」のイメージ
(出所:四国電力)
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図7●「ためトクサービス」を適用した場合の電気料金(税込・季節別時間帯別電灯の場合)
(出所:四国電力)
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 「仮想蓄電池サービス」は、余剰電力の「みなし蓄電量」を電気料金から差し引く仕組みのため、余剰電力の売電先と電気小売り事業者は同じ事業者になる。その意味では、新電力各社の電力小売り契約とのセットによる囲い込みという側面を持つ。

 ただ、発表された「仮想蓄電池サービス」を見ると、顧客のライフスタイルや電気料金プランによっては、みなし蓄電量から差し引いた電気料金単価がシンプルな余剰電力買取単価より低くなってしまうケースも考えられる。「卒FIT」住宅オーナーにとっては、どちらが経済的に有利か、十分に検討する必要がある。

 このほかにも、旧一般電気事業者各社とも余剰電力の自家消費を希望する顧客向けに蓄電池やヒートポンプ給湯機の販売・リース契約の提案を行っていくことも表明している。旧一般電気事業者以外でも、ハウスメーカーが蓄電池の設置を想定したり、シェアリングエネルギーも蓄電池の販売を表明している。

 そして、各社とも、こうしたエネルギー関連機器を設置した場合の買取単価を高めに設定している。積水化学工業と旭化成ホームズが12円を付けている。典型的なのがパナソニックで、蓄電池とその遠隔監視装置、ヒートポンプ給湯機などのフルセットで16円(東日本エリア)という高値を設定した。ただ、この単価の適用は1年間限定なので、エネルギー機器販売を奨励するキャッシュバックのような意味合いを持つと言えそうだ。

ポイント還元は有利に

 他とは異なる特徴的な買取契約としては、中部電力の「これからデンキ」では、通常の買い取りのほか、Amazonギフト券やイオンのポイントサービスであるWAONで還元するプランを用意した。ギフト券の場合は8.1円、ポイントの場合は9円相当(7円+2ポイント)と、いずれのプランも通常の買い取りよりも実質的に高額な単価になる。また、秩父新電力は地域通貨をプレゼントするメニューも設定した。

 北陸電力では、過去1年間の余剰電力実績が一定の基準を超えた場合に、契約需給電力に応じて年間定額で一括払いするプランを用意した。具体的には、契約需給電力が2.0kW以上3.5kW未満で年間600kWh以上の場合に年額1万5000円、3.5kW以上5.0kW未満で年間1000kWh以上の場合に年額2万5000円、5.0kW以上で年間1400kWh以上の場合は年額3万5000円になる。

 余剰電力の実績基準を買取単価に換算すると25円となり、通常の買取プランと比較しても魅力的な価格設定となっている。だたし、余剰電力がそれぞれ年間1875kWh以上、3125kWh以上、4375kWh以上発生する場合は、通常の買取プランの方が有利になる。

 このほかにも、V-Powerとトラストバンクは、任意の地方自治体に「卒FIT」余剰電力を寄附できる新サービスを立ち上げると発表した。余剰電力を寄付した「卒FIT」住宅オーナーには、返礼品として地域ポイントや特産品を還元することを検討している。トラストバンクは、地方自治体向けにふるさと納税業務の支援サービスを展開しており、これらのノウハウを活用してエネルギーの地産地消を目指すとしている。

図8●旧一般電気事業者の買取単価
(出所:日経BP・メガソーラービジネス)
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図9●新電力の買取単価
(出所:日経BP・メガソーラービジネス)
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