可視光で水を水素と酸素に分解、光触媒で新材料

2019/07/23 19:31
工藤宗介=技術ライター
今回開発したY2Ti2O5S2光触媒の電子顕微鏡写真と吸収スペクトル
(出所:NEDO、ARPChem)
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 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)は7月3日、東京大学や信州大学などと共同で、可視光で水を水素と酸素に分解する酸硫化物光触媒を開発したと発表した。

 酸硫化物光触媒で実際に水を分解した事例は世界初という。

 太陽光の強度のピークは主に可視光領域(400~800nm)にある一方、従来の光触媒は吸収波長が主に紫外光領域(400nm以下)に限られるものが多く、太陽光のエネルギーを効率的に利用するには光触媒の吸収波長を長波長化することが課題のひとつだった。

 酸硫化物光触媒は次世代の光触媒材料として2000年ごろから有望視されていたが水中での光照射下で光触媒材料自身が分解しやすいという問題があった。研究チームは、より安定した酸硫化物光触媒材料を探索するとともに、水分解反応の条件や水素生成反応と酸素生成反応を効率よく進行させる助触媒の研究を進めてきた。

 今回開発した光触媒はY2Ti2O5S2という酸硫化物半導体で構成され、波長640nm以下の太陽光を吸収し、弱アルカリ性水溶液中で水を水素と酸素に分解できるバンド構造を持つ。従来の酸硫化物光触媒は酸素を発生させられなかったが、Y2Ti2O5S2光触媒は20時間にわたって持続的に水を水素と酸素に2対1の比率で分解できることを確認した。

 Y2Ti2O5S2に水素生成反応を促進する助触媒としてCr2O3で被覆されたRh微粒子を、酸素生成反応を促進する助触媒としてIrO2微粒子の両方を担持する手法を開発。さらに、反応溶液のpH値を調整することで、光励起された電子と正孔を水分解反応に有効利用できるようになり、可視光による水分解が可能になった。

 今後、Y2Ti2O5S2の合成法や反応活性点となる助触媒の担持法の改良、その他の酸硫化物光触媒材料への技術展開に伴う水分解用微粒子光触媒の機能改良とともに、酸硫化物光触媒シートの大面積化に取り組む。太陽光を使って製造する水素と、工場などから排出されるCO2を利用して化学品を製造するプロセスの実現に向けた研究開発を進めていく。