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480MWの「宇久島プロジェクト」、8月にようやく着工!(page 3)

主体が九電工に代わり、土地や許認可の準備を急ぐ

2019/08/01 07:10
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
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主体がフォトボルトから九電工に

 宇久島の太陽光発電プロジェクトは、宇久島出身で現在は山口県に拠点を置く不動産会社の役員が旗振り役となり、始動した。この役員は、発電事業者の主体が変わる中でも、土地のとりまとめに関わり、島の地権者と発電事業者を結び付けている。

 五島列島というと、キリスト教関連の施設や遺跡、美しい海や料理などに代表される観光地というイメージが強い。

 しかし、宇久島には、キリスト教関連の史跡は少ないとされ、他の観光資源にもそれほど恵まれていない。旅館は島内に3軒ほどで、飲食店も限られる。見かける店舗はほぼ、食材や生活資材、燃料などを扱うものに限られる。このように、観光で潤う島ではなく、島民は他の地域に流出しがちで、過疎化が進んでいる(図3)。

 逆にいうと、古くからの日本の島の風景や、手つかずの自然環境が多く残る場所となっている。

 

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図3●島の中心部、宇久平港の周辺の様子
風力発電の開発会社の事務所もある(出所:日経BP)

 宇久島にとって、巨大な太陽光発電プロジェクトが立地する利点は、雇用機会や交流人口の増加によって、こうした課題を少しでも改善できることである。

 出力480MWという規模の太陽光発電所の維持や管理には、日常的に人手を要する。これによる雇用が生まれ、これまでならば島を離れていた若者が、島に留まって従事する、あるいは、他の地域から島に移住して従事するといった理想的な展開も期待できる。

 また、島に滞在する関係者が多くなることから、宿泊や飲食をはじめ、さまざまな島内経済への波及効果も見込める(図4)。島内の関係者たちは、こうした島内経済の活性化、島の再生につながると考え、プロジェクトを後押ししてきた。

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図4●新たに開店したコインランドリー店
地元の関係者によると、メガソーラー関連の需要を狙った開店のようだという(出所:日経BP)
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 当初、宇久島のプロジェクトを事業主体となって進めてきたのは、ドイツの太陽光発電開発会社であるフォトボルト・デベロップメント・パートナーズ(PVDP)だった。同社は2013年4月から手掛けてきた。

 2014年6月には、フォトボルトのほか、九電工と京セラ、みずほ銀行、オリックスの5社が協力し、この営農型プロジェクトの検討を進めていくことで基本合意したと発表していた(関連ニュース:基本合意、 同ニュース:連系承諾)。

 その後、大きな転換を迎える。フォトボルトやオリックスが抜け、九電工が主体となる枠組みに代わった。2018年1月に、この新たな体制による再スタートが発表された(図5新たな枠組みでの再スタートの関連ニュース)。

図5●2018年1月に発表された新たな枠組み
(出所:京セラ)
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 九電工は、フォトボルトが主体だった時期から、実務上では主導している状況に近かった。宇久島では元々、同じ担当者が長年常駐し、駐在所を置いていない九州電力の実務も代行している。住民とも深いネットワークを築き、今回の太陽光発電プロジェクトでも、島の関係者との交渉や調整でも大きな力を発揮してきた。

 最終的に九電工が主体となり、京セラが最大の出資者となった。プロジェクトファイナンスによる融資を取りまとめるみずほ銀行も、従来から意向を変えずにかかわり続ける。長崎市に本拠を置く十八銀行も、融資の取りまとめに加わった。

 枠組みの変更によって、新たな特定目的会社(SPC)「宇久島みらいエネルギーホールディングス合同会社」が、フォトボルトから権利を取得し、新たな計画として再始動した。現在の発電事業者である、宇久島みらいエネルギー合同会社は、このSPCの子会社となる。

 新たなSPCには、フォトボルトとオリックスが離脱した一方で、九電工と京セラのほか、タイの太陽光発電事業者であるSPCG社、東京センチュリー、古河電気工業、坪井工業の4社も、新たに出資した。SPCの資本金や出資比率などは、非公開としている。

 SPCG社と東京センチュリーは、京セラと太陽光発電所の開発・運営で関係が深い。東京センチュリーと京セラは、合弁で多くのメガソーラーを開発している。

 SPCG社は、タイ国内で多くの太陽光発電所を開発・運営し、その多くに、京セラが太陽光パネルを供給している。さらに、日本でも、京セラと東京センチュリーが共同で開発している、鳥取県米子市の出力約30MWのプロジェクトに参画している。

 EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスは、九電工が担当する。従来のフォトボルトの計画では、九電工と京セラが共同で担う構想で、これが九電工の単独に変わった。

 新たな枠組みでの宇久島のプロジェクトの総投資額の予想は、2000億円程度としている。フォトボルトの計画時に発表していた約1500億円から、500億円程度上回る。

 一方、年間発電量は、約51.5万MWhを見込んでいる。一般家庭約17万3000世帯の消費電力に相当する。

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