大規模再エネの「買取義務」「インバランス特例」廃止、市場連動型に

2019/08/06 14:15
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

 経済産業省は8月5日、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会を開催し、今年4月から議論してきた「2020年度末の固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直し」に関して、事務局(経済産業省)のまとめた中間整理案を公表した。

 事務局案では、これまで再生可能エネルギー電源をひとまとめとして固定価格買取制度(FIT)の対象としてきた推進政策から転換し、コスト競争力の向上を促す「競争電源」と、地域で活用される「地域電源」の2タイプに分け、異なる制度的アプローチを検討するとした。

 異なる制度的アプローチとは、「競争電源」については、入札制度によるコストダウンとともに電力市場との統合を促し、「地域電源」については、「現行のFITの基本的な枠組みを維持しつつ、電力市場との統合については、電源の特性に応じて検討していく」とした。

 「競争電源」の制度設計については、今後、詳細を詰めていくが、以下の4点を方向性として示した。(1)現行のFITで送配電事業者に課した「買取義務」をやめ、再エネ発電事業者自らが電気を販売する。(2)送配電事業者が発電予測を代行する「インバランス特例」を廃止して、再エネ事業者自らが発電量を予測する。(3)売電単価を固定せずに電力卸市場の価格に連動させる。(4)補助制度により投資回収について一定の予見性を確保しつつも、そのための補助の水準を縮小していく――などが軸となる。

FIT抜本見直しに向け、経産省案が示された
(出所:日経BP)

「地域電源」の条件が争点に

 そして、「例示」という形で、2つの電源に該当する再エネを示した。「競争電源」には、大規模事業用太陽光と風力、そして大規模地熱、中水力発電を挙げた。このうち大規模地熱と中水力については、「開発段階のリスクが高いことから、売電支援に偏重せずに新規地点開発を推進する」とした。

 また、「地域電源」には、住宅用太陽光、小規模事業用太陽光、住宅や工場など所内で活用する自家消費型太陽光、地域で集材した燃料による熱電併給型バイオマス発電、温水を地域で活用する地熱発電、地域の治水や農業と共生する小水力発電を挙げた。

 今後の制度設計で焦点となるのは「地域電源」と認定し、引き続きFITの対象とする案件の条件だ。特に議論となるのが、今回の中間整理案で「地域電源」として例示された「小規模事業用太陽光」の扱いだ。現行の入札制度のように「500kW未満の事業用太陽光」など単純な規模要件だけにするのか、自営線による自家消費を必須にするのか、託送により近隣に売電しているケースを認めるのか、その場合の「近隣」の範囲は――など論点が多い。

 開発件数の多い「10kW以上、50kW未満の事業用低圧太陽光」を規模以外の要件で「地域電源」か、否かを判断する場合、事務処理量が過大になって現実でないとの背景もあるが、すでに複数の委員会から、「単純に規模だけで判断すると、制度の隙間を付くような案件が続出するので、規模以外の条件を付けるべき」との意見が出ている。

 また、今回の小委員会で、JPEA(太陽光発電協会)は、「地域活性化にも貢献するソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)については、地域電源として、今後もFITの対象にして推進してほしい」と要望した。営農型については、新規開発を目指す動きも活発なだけに、検討課題の1つになる可能性もある。

ソーラーシェアリングは「地域電源」として認められるか?
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

売電と発電量予測の「代行業」に注目

 一方、今回、公表された中間整理案から、現行の入札制度の対象になっている500kW以上の太陽光に関しては、2021年度以降、「競争電源」として、既述した(1)~(4)の方向性による新制度に移行するのはほぼ確実となった。

 新制度のイメージに関しては、事務局は「FIP(フィード・イン・プレミアム)」制度などを例示している。すでに複数の委員から同制度への賛同が示されており、FIPを軸に検討が進みそうだ。FIPとは、再エネ発電事業者が電力卸市場への売却など市場価格で電力を販売する場合、プレミアムを上乗せする補助制度。売電単価に市場変動の要素を加味しつつ、プレミアム分によって再エネ普及を支援する。

 FIPにも複数の方式があるが、今回の中間整理案に「投資回収について一定の予見性を確保」との文言が入ったことから、市場価格が大幅に下がっても、一定以上には売電単価が下がらないように補助する「下限付きプレミアム方式」が有力になると予想される。

FIP(フィード・イン・プレミアム)には3タイプある
(出所:経産省)
クリックすると拡大した画像が開きます

 売電単価の決定方式については、今後、同小員会で議論を経て詳細な制度設計が進むことになるが、既述した方向性の(1)と(2)である「買取義務」と「インバランス特例」の廃止については異論がなかったことから、実現するのは確実だ。そうなると、太陽光発電事業者自らが売電先を探して契約し、日々発電計画を作成しなくてはならない。

 現実的には、こうした専門的で経験を要する作業を行うことは簡単ではないため、発電事業者からの委託を受け、発電量を予測して有利な価格で売電する代行会社の役割が重要になってくる。もしくは、太陽光発電所の設計・施工、運営・保守に加え、発電予測と電力販売までも一括して請け負うようなビジネス形態が出てくると予想される(関連記事:「FIT終了」に現実味、その時、太陽光ビジネスに求められるもの)。