伊勢のメガソーラー内に「ビオトープ」、絶滅危惧種を保全

2019/08/16 00:15
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 三重交通グループホールディングスの事業会社である三交不動産(津市)は、三重県伊勢市や多気郡明和町などにまたがる地域に立地しているメガソーラー(大規模太陽光発電所)「大仏山メガソーラー発電所」の敷地内にビオトープを整備し、絶滅危惧種の魚類を保全している。

整備したビオトープ
(出所:三交不動産)
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池から捕獲した「カワバタモロコ」
(出所:三交不動産)
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 ビオトープは、人による影響を極力、排除し、その地域に在来する希少な動植物などが生息しやすい環境を維持するエリアを差す。

 メガソーラーの開発に際し、同社は三重県の環境保全条例に従って、野生の動植物に関する調査を実施した。

 その結果、敷地内のため池に、希少種の魚である「カワバタモロコ」が生息していることがわかった。このため、カワバタモロコを保護・保全するために、ビオトープを整備した。

 「カワバタモロコ」は、コイ目コイ科で、全長約3~6cmの日本以外では見ることのできない日本固有種である。国内では、静岡県を東限に生息するとされ、本州の中部以西、四国の瀬戸内海側、九州の北西部で生息が確認されている。

 生息している場所が減ってしまったのは、外来の肉食魚の密放流に大きな原因があるという。

 絶滅の危機にあり、環境省のレッドリスト(絶滅の危険度一覧)で絶滅危惧IB類に、三重県のレッドデータブックで絶滅危惧IA類にそれぞれ分類され、三重県の指定希少野生動植物ともなっている。

 三交不動産では、「カワバタモロコ」の保護・保全にあたり、三重県のほか、希少種の魚の知見が豊富な三重大学大学院 生物資源研究科、鳥羽水族館の協力を得て、計画を立案・実行した。この協力に際し、4者の間で「みえ生物多様性パートナーシップ協定」も締結した。

 「カワバタモロコ」が生息していた池は、メガソーラーの敷地内の調整池としても活用する。そこで、池の元の土をそのまま使いながら、調整池としての機能も加えることで、魚が生息していた環境をできるだけ維持した。

 さらに、新たにビオトープも整備した。このビオトープにも、元の池の土を使った。これによって、元の池に生えていた水草の種子などを含んだままビオトープを構成し、実際に水草などが元の池と同じように復元した。カワバタモロコにとって、同じ餌を得られる環境となっているという。

放流の様子
(出所:三交不動産)
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地元の小学生などが参加
(出所:三交不動産)
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 造成や、池の改修、ビオトープの整備といった工事中は、池に住んでいたカワバタモロコを捕獲し、三重大学と鳥羽水族館が分担して飼育した。

 メガソーラーが完成し、池とビオトープの環境も整ったことから、4月にカワバタモロコをメガソーラー内の池とビオトープに放流した。この本放流の前に、2018年12月に、試験的に放流し、状況を確かめていた。

 4月の放流には、三重大学、鳥羽水族館、地元小学校の生徒など約50人が参加した。三交不動産では今後も、発電所内でカワバタモロコの生息状況について、観察を続けるとしている。

 大仏山メガソーラー発電所は、太陽光パネル出力が約13.81MW、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力が10.50MWで、特別高圧送電線に連系している。

大仏山メガソーラー発電所
(出所:三交不動産、エスエス 名古屋支店)
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 年間発電量は、一般家庭約4700世帯の消費電力に相当する、約1694万kWhを見込んでいる。買取価格は36円/kWh(税抜き)で、中部電力に売電している。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは千代田化工建設が担当し、太陽光パネルはソーラーフロンティア製、PCSは中国の華為技術(ファーウェイ)製を採用した。O&M(運用・保守)は、千代田化工グループの千代田システムテクノロジーズ(横浜市)が担当している。