「工事費負担金」の一部返還求め東北電を提訴、秋田の太陽光発電事業者

2019/08/23 19:02
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

工事費負担金が「約1億円」増額

 秋田県の太陽光発電事業者が、東北電力を相手取り、太陽光発電所の配電線への接続に際して支払った工事費用の一部返還を求めて、6月下旬に仙台地方裁判所に提訴した。

 訴えを起こしたのは秋田県内の事業者で、すでに同県内に稼働している出力1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)に関し、接続契約締結時に支払った工事費負担金約1億2500万円のうち、約9800万円分について不服として返還を求めていている。

 訴状によると、以下のような経緯になる。問題となっている案件は、2014年9月に東北電力に接続検討の申し込みを行い、2015年1月に東北電力から工事費負担金として約2700万円が示された。発電事業者(原告)はこれを受け、同年4月に事業用地と太陽光パネルを購入し、電気工事契約を済ませつつ、系統接続を申し込んだところ、同年11月に東北電力から、工事費負担金が約1億2500万円に増額になるとの連絡を受けた。

 東北電力は、負担金が増えた理由として、先に接続を申し込んだ他の事業者によって系統変電所の変圧器の容量が足りなくなったため、としていた。事業者が1億円近い増額に至ったより詳細な理由や経緯の説明を求めても、「容量がいっぱいになったから」などの回答で詳しい説明はなく、負担金の支払いがないと接続できないとの回答だった。

 事業者は、負担金の増額に関しては不服だったものの、期限までに支払わないと接続できる権利を失う恐れもあり、2016年11月に増額分も含め「再エネ発電設備からの電力受給契約に関する要綱」に基づき同意の意思を表明して全額を支払った。系統増強工事は2018年6月頃に完了し、実際にかかった費用と支払い金額を清算し、約2000万円が返還された。

接続検討から接続契約などに関する流れ
(出所:東北電力)
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争点は大きく2つ

 訴状では、大きく2つの点から、増額分の約9800万円に関して返還を求めている。

 1つ目は、負担金支払いを求める法的な根拠となる「電力受給契約に関する要綱」にある「(提示された工事費負担金などに関する)発電事業者の同意」(第33条ロ)の条項自体が、民法の定める「公序良俗違反」、独占禁止法の定める「一方の優越的地位の乱用」に該当し、「正常な経済的秩序に反しており無効」と主張している。

 2つ目は、負担金増額の理由として、東北電力が説明する「空き容量がない」というのは、複数の再エネ電源から上位系統に向かう潮流(電気の流れ)の最大値を単純に足し合わせた算定方法によるもので、実際には上位系統から下位系統への逆の潮流と相殺されるため、容量は十分にあると主張している。

 また、訴状では、増額分の算定根拠となった系統変電所内の変圧器の増強(10MVAから20MVAへの交換)に要したコストに関して、「工事完了後は送配電事業者(被告である東北電力)の所有物になる設備のコストを、接続申込時にたまたま容量を超えた発電事業者が全額負担するのは納得できない」との疑問も、公序良俗違反の1つに挙げている。

 今回の負担金返還訴訟で、その根拠して挙げられたこうした論点は、「電力受給契約に関する要綱」の在り方や、系統空き容量の算定方法、系統接続コストに関する特定負担(発電事業者側の負担)と一般負担(送配電事業者側の負担)の割合に関するもので、固定価格買取制度(FIT)開始当初からその適切性(FIT電源は当初、全額特定負担)を巡って疑問の声が多かった。裁判所が司法の立場からこうした論点にどんな判断を示すのか、たいへんに注目される。

変電所内の設備増強に関わるコストが争点の1つになっている(画像はイメージで訴訟とは関係ありません)
(出所:日経BP)