「増え続ける高圧太陽光に、減っていく電気主任技術者」、経産省が対策を検討

2019/09/14 12:53
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
中部電気保安協会によるドローンを使った太陽光パネル点検の様子
(出所:日経BP)
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北海道電気保安協会による積雪期の太陽光発電所の点検の様子
(出所:日経BP)
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太陽光発電所の事故件数が増え、事故率も高まっている
(出所:経産省)
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第3種の電気主任技術者の需給ギャップが拡大
(出所:経産省)
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スマート保安
(出所:経産省)
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 経済産業省は9月9日、「電気保安人材・技術ワーキンググループ(WG)」の第1回の会合を開催した。同省の産業保安グループ 電力安全課によるもので、産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会の下に設置された。

 検討する内容は主に2つある。1つは、業務用のビルや太陽光発電所が急増し、高圧の自家用電気工作物が増えている中で、いかに適切に保安・管理できる環境を維持し続け、国民生活の安全・安心を維持できる状況を確立できるのかである。

 もう1つは、こうした電気工作物の安全・安心を担ってきている電気主任技術者が、現在の状況のままでは、将来的に不足すると予想されることへの対策である。

 自家用電気工作物で増えているのは、高圧の業務用ビルと太陽光発電所である。ビルは、老朽化による建て替えや、都市開発に伴う。太陽光発電所は、固定価格買取制度(FIT)の開始によって増えている。

 自家用電気工作物の事故は、年間でおよそ500件前後、起きている。こうした事故を防ぐには、適切な設備の設置とともに、運用中には、電気主任技術者による適切な保安・管理が重要になる。

 今回のWGで、とくに指摘されたのは、太陽光発電所の事故件数の増加と、事故率の高さである。

 報告されている太陽光発電所における事故は、FITの開始年である2012年は0件だった。2013年は2件(100万kWあたりの事故率:1.1%、以下同じ)、2014年は8件(2.0%)、2015年は13件(2.3%)、2016年は33件(3.6%)、2017年は89件(7.1%)となった。

 この件数に、小出力の太陽光発電設備は含まれておらず、報告されていない事故もあると思われることから、実際にはもっと多い。

 中でも、2018年には、台風に伴う強風や豪雨によって、西日本各地で太陽光発電設備の被災が報じられることが多かった。テレビのニュースなどでも報じられ、一般社会に太陽光発電所の安全・安心に対する社会的な関心が高まっていると指摘している。

 一方で、増え続ける電気工作物を適切に管理できる電気主任技術者を、いかに適切に確保できるかという課題は、また別の問題による面が大きい。


 とくに足りなくなると予想されているのは、第3種の電気主任技術者である。太陽光発電所では、高圧の配電線に連系している発電所で、外部委託制度を活用し、一任していることが多い種別である。

 2020年以降に需給ギャップが急拡大し、現状のままでは、2030年には本来必要な人数の1割に相当する、約2000人の不足が予想されるという。

 電気主任技術者が足りなくなるのは、自家用電気工作物が増え続ける一方で、新任の電気主任技術者の数が限られるためである。

 電気主任技術者は、高齢化が進んでいる。約6割が50歳以上、約4割が60歳以上となっている。

 これは、新たに電気主任技術者を目指す若年層の受け皿となる、工業高校の電気科などの認定校の卒業生が減っていることに加えて、卒業生が電気保安の道を目指さず、報酬が多いメーカーや電力会社などの専門職を目指す傾向が強まっていることによる。

 認定校の卒業生が減っている背景には、工業高校を含めた高校の統廃合の影響もある。

 志望者が減っていくのであれば、電気保安管理業務の手法を変えて、安全・安心を担保しつつ、これまでは取り込めなかったタイプの人材に、保安業務を担ってもらうしかない。

 そのための議論が、電気保安管理業務のスマート化である。遠隔監視システム、人工知能(AI)、ドローン(無人小型飛行体)などを積極的に活用するもので、経産省はこれを「スマート保安」と呼んでいる。新たな手法によって、これまでと同じような安全・安心を、より幅広い人材によって実現できる環境を整備する( 関連記事:太陽光発電にもAI活用、O&Mコストが大幅に低下)。

 また、会合では、「これまでは男性がほとんどだった電気保安の分野に、女性が多く進出できる機会になるのではないか」という期待も寄せられた。

 WGは、年内に3回の会合を予定するなど、長期的に検討を進めていく。直近では、制度運用の変更によって可能になる点を、小委員会などに進言し、喫緊の課題に対応していく。

 喫緊の課題とは、例えば、現状では、経産省は、自家用電気工作物の設置者にしか指導できない点である。

 太陽光発電所は、電気のプロではない事業者が設置していることがほとんどで、かつ、電気保安管理業務を外部委託していることが多い。こうした事業者に指導しても、適切に対応できないケースも出てくる。それならば、電気保安管理業務を受託している電気主任技術者に、直接、指導できる形に制度の運用を変えたほうが、効果的という議論である。