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東北大、ペロブスカイトで革新、太陽電池の新材料に

2019/09/21 01:02
工藤宗介=技術ライター
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今回観測したバルク光起電力効果の概念図
キラルな関係にある半導体に光を照射すると、界面なしの物質単体で光起電力が発生し、電場を印加しない状態でも電流が観測される(出所:東北大学)
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 東北大学は9月19日、高効率の太陽電池材料として注目される有機・無機ハイブリッド層状ペロブスカイト型半導体に、右手と左手の関係のような鏡像対称性を持たないキラルな分子を組み込むことで、光起電力効果(バルク光起電力効果)を発生させることに成功したと発表した。電位差界面を使わない新しい光起電力材料の開発の指針になると期待される。

 従来の太陽電池は、他の物質を貼り合わせた界面(p-n接合界面、光吸収層-電子/正孔輸送層界面)で電位差を発生させて光起電力を作り出している。電位差界面を用いずに物質単体で光起電力を発生できれば、界面制御プロセスが不要となるため、より効率的な光起電力新材料の開発・設計が可能になると考えられる。

 単体で光起電力効果を発生できる物質のひとつに、強誘電体などの空間反転対称性の破れた物質が挙げられる。しかし、無機化合物は物質設計の自由度が低く、空間反転対称性の破れを制御して新しい物質を開発するのは困難とされる。研究グループは今回、有機・無機ハイブリッド層状ペロブスカイト型半導体であれば、物質設計性の高い有機分子部分を介して対称性の制御が可能ではないかと考えた。

 有機・無機ハイブリッド層状ペロブスカイト型鉛ヨウ化物の構成要素である有機層部分に、反転心を持たないキラルな分子を導入することで対称性の制御を行った結果、キラリティと極性を併せ持つ空間反転対称性の破れた新規半導体が得られた。キラルとは、物質とその鏡像を重ね合わすことができない性質のことで、右手と左手の関係(右手の掌と左手の甲を向かい合わせても重ね合わない)から対掌性とも呼ばれる。

 得られた半導体の単結晶に白色光を照射し、電流-電圧特性を測定したところ、バルク光起電力効果の観測に成功した。また、得られた物質の結晶構造を詳細に調べたところ、導入したキラル分子の電気双極子モーメントが整列して電気分極を鉛ヨウ素無機層の二次元層と平行に発生しており、光起電力は電気分極の方向に沿って発生していることが分かった。

 さらに、導入する分子のキラリティに応じて発生するバルク光起電力の符号を反転させられるという、他のバルク光起電力材料では見られない新しい性質を発見した。今後は実用化に向けて、今回観測されたバルク光起電力効果の機構を解明し、それに基づいた物質設計を通じてより大きな光起電力を実現する物質の探索に取り組むという。

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