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温室効果ガス80%削減、「達成費用は小さい」、京大など解析

2019/11/14 13:40
工藤宗介=技術ライター
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マクロ経済への影響の解析結果
(出所:京都大学)
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 京都大学、滋賀県立大学、立命館大学らの研究グループは、日本が長期戦略として掲げる「2050年に温室効果ガス(GHG)80%削減」という目標について、新しいシミュレーションモデルを用いて分析した。

 その結果、エネルギーシステムの変革などにかかる費用が従来考えられていたよりも大幅に小さいことを明らかにした。国際学術誌「Nature Communications」オンライン版に10月18日掲載された。

 「80%削減目標」の達成には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの大量導入などエネルギーシステムの大幅な変革が必要とされ、経済的費用の増大や電力システムの安定性低下を懸念する声もあった。

 今回の研究では、経済システム、エネルギーシステム、電力システムをひとつのシミュレーションモデルに導入し、エネルギーシステムの変革とそれに伴う経済システム影響を整合的に描くモデルを開発した。

 解析には、京都大学が中心となって開発した統合評価モデルAIM(Asia-Pacific Integrated Model:アジア太平洋統合評価モデル)を用いた。同モデルは、将来の人口、GDP(国内総生産)、各種エネルギー技術の将来的な費用やエネルギー効率などを入力し、GHG排出量、マクロ経済指標、エネルギー需給、蓄電池など再エネ発電に対する調整力を含む電力システムを推計する。

 解析の結果、2050年にGHGを80%削減する政策を実施した場合のマクロ経済損失(GDP損失)は、2050年において0.8%となり、従来の報告値である2~8%と比べて大幅に小さな値となった。その場合のエネルギーシステムは、太陽光と風力が合計で50%程度の電力を賄う形となった。また、再エネ大量導入に伴い電力安定化のために、現在の揚水発電の発電容量を超える水準の蓄電池の導入が必要になることが分かった。

 なお、この解析結果は、気候変動対策をしない状態が最適な資源配分と仮定した場合の推計となる。気候変動対策を行うことで技術イノベーションなどが起こる可能性などもあるため、必ずしも経済損失が発生するとは限らないと説明する。また、GHG排出量目標の入力条件として仮想的に炭素税を用いたが、実際の政策では補助金や直接規制などさまざまな手段が存在すると指摘する。

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