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太陽光の「PID」現象、産総研が抑制技術を開発

2019/12/24 20:48
工藤宗介=技術ライター
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従来構造の太陽電池セル(左)と、今回開発した反射防止膜を透明伝導膜で被覆した太陽電池セル(右)
(出所:産総研)
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PID加速試験の結果
(出所:産総研)
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 産業技術総合研究所(産総研)は12月17日、太陽光パネルの不具合である「電圧誘起劣化(PID)」現象について、セル(発電素子)表面を透明導電膜で被覆することで抑止できる技術を開発したと発表した。

 PIDとは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)などに設置した太陽光パネルが、高電圧印加によって短期間で性能が大幅に低下する現象。

 メガソーラーなどシステム電圧が高い太陽光発電所では、太陽電池セルと太陽光パネル(太陽光モジュール)のアルミフレームとの間の電位差が1000V前後になり、この電位差によってPIDが発生することが報告されている。カバーガラスに含まれるナトリウムイオンが太陽電池セルに向かって移動することでPIDを引き起こすとされるが、そのメカニズムは明確になっていない点も多い。

 PID発生は、抵抗率の高い封止材やシリコン組成の大きい窒化シリコン反射防止膜の使用により、ある程度抑止されることが経験的に知られている。前者は封止材にかかる電解が大きくなり相対的に反射防止膜にかかる電界が小さくなる、後者は窒化シリコン反射防止膜の導電性が高くなるため反射防止膜にかかる電界が小さくなると考えられる。

 産総研は今回、反射防止膜を透明導電膜で被覆すれば透明導電膜とエミッタ層が同電位になり、両者の間に挟まれた反射防止膜に電界が掛からなくなってPIDの発生を抑止できる可能性があると考えた。これを実証するため、汎用の単結晶シリコン型太陽電池セルの反射防止膜上にスパッタリング法により透明導電膜であるスズ添加酸化インジウム(ITO)膜を100nmの厚さで形成した。

 温度85度、相対湿度2%以下でセルに2000Vの電圧を掛けるPID加速試験を実施した結果、従来構造の太陽光パネルは24時間後には出力が約10%程度まで低下したのに対し、ITO膜で被覆したパネルでは1週間後も出力が低下しなかった。実証結果とこれまでに得られた知見から、実環境下でもPIDを十分に抑止できると見込まれる。

 今後は、今回開発した技術の実用化を図るとともに、透明導電膜の膜厚を薄くした場合のPID抑止効果を確認するとともに、スパッタリング法よりも安価なウェットコーティングなどで形成した透明導電膜のPID抑止効果を確認する。また、反射防止膜に印加される電界とナトリウム移動の関係を詳細に調べ、PIDのメカニズムを一層明確にしていく。

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