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太陽光で水から水素発生、多孔性の新触媒を開発

2019/12/26 13:35
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した硫黄を含むMOFの構造
(出所:関西学院大学)
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 関西学院大学と大阪大学、大型放射光施設SPring-8の共同研究グループは12月24日、光を照射することで水を分解して水素を発生させる新しい多孔性物質を開発したと発表した。クリーンな太陽エネルギーによる水素発生は、燃料電池の原料供給のための重要なテクノロジーにつながるという。

 近年、金属-有機構造体(MOF)もしくは多孔性配位高分子(PCP)と呼ばれる新しい多孔性材料が、水素や温室効果ガスの貯蔵や分離、各種触媒反応などの環境エネルギー問題の解決に有用な材料として世界中で研究開発が進んでいる。MOFが半導体としての特性を示せば、高い比表面積を利用した触媒や太陽電池などのエネルギー変換材料への応用が可能になる。

 これまで硫黄を含むMOFは半導体特性を示すことが知られていたが、結晶性の高い良質な硫黄を含むMOFの合成は難しく、その特性は十分に検討されていなかった。研究チームは今回、炭素と窒素を含む硫黄化合物を用いることで、鉛を含む新しいMOFの結晶を開発することに成功した。窒素が硫黄の反応性を低下させることで、結晶化に最適な反応条件を実現できたためと考えられる。

 開発したMOFの細孔には水のみが取り込まれてアルコールなどの有機分子は入らないことが分かった。さらに、MOFが光を吸収することで電気を流し、そのエネルギーを利用することで水を水素に変換する触媒としての能力を持つことを実証した。計算機を用いた研究により、鉛と硫黄が作るネットワークが触媒反応に重要な役割を果たしていることを明らかにした。

 従来知られていたMOFの多くは絶縁体であり、電気を流さず可視光も吸収しない。今回開発された新材料では、電気が流れ、光エネルギーを利用した触媒として機能するという知見は、MOFの新しい用途を示す成果になると期待される。

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