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「石炭を2038年までに全廃」、ドイツ政府が計画の概略を発表

2020/01/28 10:18
大場 淳一=日経BP総研 クリーンテックラボ
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 ドイツ政府は1月23日、スイスのダボスで開催された「世界経済フォーラム」において、石炭の全廃計画の概略を発表した(関連記事)。

 ドイツは現在、世界最大の褐炭産出国である。石炭火力発電に占める低品位な褐炭の比率は、現在も約60%と多い。しかし、同国内で最近成立した炭鉱や電力などの関連業界との合意により、石炭の全廃という目標に向けた具体的な取り組みを2038年までの今後18年間で進めることが可能になったという。

 同国の炭鉱では、褐炭は露天掘りで採掘される。このとき、景観や生態系の破壊などの公害も引き起こしているが、今後同国で褐炭を採掘しなくなることによって、こういった公害の防止も可能になると見込む。

 ドイツ政府は総額400億ユーロの賠償金を予算化し、今後、炭鉱や石炭火力発電所の閉鎖のために使用する計画である。同国で現在石炭産業に依存しているザクセン州、ザクセン=アンハルト州、ノルトライン=ヴェストファーレン州、ブランデンブルク州などの地域の炭鉱や発電所が賠償の対象となる。

 賠償金の使途としては、石炭や石炭火力の電力による収益の喪失に対する補償に加え、それらの各地域における新しいインフラ開発プロジェクトや影響を受ける労働者に対する職業訓練といった再就職の支援などを見込む。

 同国における褐炭関連産業の就業者数は約2万人で、そのうち約1万5000人が炭鉱、約5000人が発電所に雇用されている。さらに約5000人が無煙炭などの火力発電所に就業しているという。

 一方、再生可能エネルギーは今後も同国の電源構成に占める比率の拡大が確実な情勢である。

 同国の電源構成のうち、太陽光や風力などの再エネの比率は2018年に約35%だった。欧州連合(EU)全体では、約20%という。過去8年間で再エネの発電電力量は2倍以上に増加した。同国政府は、2030年までに電力需要の少なくとも65%を再エネ由来の電源で賄うことを目指している。

 雇用に関しては、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査によると同国の再エネ産業は約28万4000人を雇用しており、その大半が風力発電という。今後2038年までに再エネの比率をさらに拡大するため、再エネ関連産業におけるさらなる雇用の創出が期待されている。

図●世界経済フォーラムでドイツの取り組みについて述べるメルケル首相
(出所:World Economic Forum)
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 同フォーラムに出席したアンゲラ・メルケル首相は、気候変動を回避するためのパリ合意の目標達成について「パリ合意は世界全体で合意している。残念ながら、反対している人もいるが、多くの人々が賛成している。誰もがそれぞれの責任を果たす必要がある」と述べている()。

 EU域内では、ドイツだけでなく他の国も脱石炭に向けた動きを加速させている。

 例えば、フィンランドは燃料としての石炭の使用を禁止する法律を可決しており、2029年5月以降の施行が決まっている。オランダも同年までの石炭火力発電所の全廃を発表した。アイルランド、デンマーク、フランスなどの各国もそれぞれ石炭の全廃に向けた期限を策定している。

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