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「光触媒太陽電池」革新に道、千葉大が性能向上因子を特定

2020/02/10 18:37
工藤宗介=技術ライター
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形状とサイズを制御したTiO2膜の分極率(上)と触媒活性(下)の違い
形が不揃い・紡錘状のTiO2の方が電子が流れやすくO2交換反応が遅い(ΔE1よりΔE2が大きい)(出所:千葉大学)
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ACS Sustainable Chemistry & Engineering誌の表紙
(出所:千葉大学)
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 千葉大学の共同研究グループは、光触媒を両極に用いる高電圧型太陽電池(光触媒式太陽電池)の性能を向上させる因子を特定したと発表した。光触媒結晶の分極率(電子の通しやすさ)と触媒活性(光酸化反応の起こりやすさ)を制御することで起電力と出力を高めることに成功した。

 既存の電池は、単セル(素子)での起電力1V以下がほとんどで、実用には直列に重ね合わせる必要があった。そのため光触媒式太陽電池によって高効率で低価格な太陽電池を実現する研究が進められているが、光電極の電気的、化学的特性の複雑なバランスに依存するため、性能の向上する因子が明らかになっていなかった。

 今回の研究では、光触媒結晶の形状や薄膜形成法に着目した。光触媒に酸化チタン結晶(TiO2)を用いて、負極上にさまざまな形状(紡錘状、立方体状、菱形状)やサイズを制御して合成した触媒結晶を配置した。また、薄膜形成法についても複数の方法(キャスト法、スライド法、粉砕&機械成膜法)を調べた。

 その結果、サイズを揃えた立方体状、菱形状TiO2はいずれも分極率が低かった。その一方、サイズが不揃い、あるいは紡錘状に合成したTiO2は分極率が高く、さらに触媒活性における酸素解離反応が遅いため、太陽電池の出力を85.2μWcm2、起電力を1.94Vまで高めることに成功した。

 同研究グループは、これまでにTiO2に有機色素を添加することで起電力を2.11Vまで高めることに成功している。今回の成果と組み合わせることで、屋外に設置でき、より環境負荷の少ないバックアップ用電源としての応用が期待される。今後は、起電力だけでなく、出力が生物電池以上のレベルとなる光触媒式太陽電池の実現を目指す。

 今回の研究成果は、米国化学会が1月27日に刊行した「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」第8巻第3号に掲載され、同号の表紙を飾った。

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