ニュース

有機太陽電池で約10%の効率も、京大が新薄膜材料

2020/03/11 14:41
工藤宗介=技術ライター
印刷用ページ
有機薄膜太陽電池の構造模式図
(出所:京都大学)
クリックすると拡大した画像が開きます
今回開発した電子受容性材料TACICの構造
(出所:京都大学)
クリックすると拡大した画像が開きます

 京都大学は3月9日、薄膜化した際に励起状態が長寿命化する電子受容性材料を開発したと発表した。同材料を用いた有機薄膜太陽電池は、約10%と高いエネルギー変換効率を実現した。薄膜作製の際にナノレベルの制御が不要になるため、従来より簡便に有機薄膜太陽電池を作製できるという。

 有機薄膜太陽電池は、電子が不足している電子受容性材料と電子を豊富に持つ電子供給性材料の複合薄膜(発電層)を持つ。発電層に光が当たると、電子受容性材料または電子供与性材料がエネルギーを吸収して励起状態になり、その励起状態からプラスとマイナスの電荷が発生し電流が生じる。

 高いエネルギー効率を実現するには、電子受容性材料と電子供給性材料が光エネルギーを効率よく吸収することが重要となり、そのためには電子受容性材料のバンドギャップが小さいことが求められる。その一方、一般的にバンドギャップが小さい材料は励起状態の寿命が短くなり、電子受容性材料と電子供給性材料を混合するのにナノレベルでの制御が必要になるため、実用化への障害のひとつとなっていた。

 研究チームは今回、比較的電子の豊富な部位を強力な電子不足部位で挟んだ構造の非フラーレン型電子受容性材料ITICをベースに、比較的電子の豊富な部位にベンゼン環やピリジン環が二次元平面状につながった構造を組み込んだ電子受容性材料TACICを設計・合成した。

 二次元平面状の構造部位は薄膜中で強い分子間相互作用を示すことから、TACIC膜はITIC膜と同程度の小さなバンドギャップのまま励起状態の寿命は50倍以上長くなった。また、TACICを用いた有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率は9.92%で、ITICを用いた場合の9.71%より向上したという。

 励起状態が長寿命化することで、電子受容性材料と電子供給性材料をナノレベルで混合する必要性が原理上なくなり、より簡便に製作できるようになる。今回の成果は、実用化に向けた大きな一歩となると期待される。

  • 記事ランキング