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理研が超薄型有機太陽電池、効率と長期保管性を両立

2020/03/12 21:22
工藤宗介=技術ライター
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今回開発した超薄型有機太陽電池
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長期保管安定性の改善
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高いエネルギー交換効率と長期保管安定性を両立するための設計指針
(出所:理化学研究所)
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 理化学研究所(理研)らの国際共同研究グループは3月10日、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型有機太陽電池を開発したと発表した。ウエアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエーターなどに安定的に電力を供給できる、軽量で柔軟な電源としての応用が期待される。

 超薄型有機太陽電池は、基板を含めた全体の厚さを数μm(マイクロメートル)まで薄型化したもので、衣服や皮膚に直接貼り付けても違和感がないのが特徴。一方で、基板や封止膜に薄い高分子フィルムを用いるため、十分なガスバリア性の確保が難しく、また安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため、エネルギー変換効率と長期保管安定性の両立が不十分だった。

 今回開発した超薄膜有機太陽電池は、基板から封止膜までを合わせた膜厚が3μmと超薄でありながらエネルギー変換効率は13%、大気中で3000時間保管した後もエネルギー変換効率95%以上を保持したという。従来は、エネルギー変換効率10.5%、保持率95%を満たすのは約200時間であり、これと比較してエネルギー変換効率が約1.2倍向上、長期保管安定性が15倍改善した。

 これまでは、発電層のドナー材料に東レが開発した熱安定性に優れる半導体ポリマー材料であるPBDTTT-OFTを、アクセプター材料にフラーレン誘導体を使用していたが、この組み合わせではPBDTTT-OFTの高効率や熱安定性といった特徴を十分に引き出せなかった。今回、アクセプター材料に非フラーレン誘導体のIEICO-4Fを用いることで、光捕集性と熱安定性により優れる発電層を作製した。

 また、素子作製後に簡単な熱処理(150度)を行うポストアニール処理によって長期保管安定性が大きく改善することを発見した。物性評価の結果、ポストアニール処理を施すことによって発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送が改善したことが判明した。他の発電層材料や正孔輸送層ではポストアニール処理後にエネルギー変換効率が低下しており、今回の素子構成でのみ高いエネルギー変換効率が保持されることが分かった。

 理研と東京大学、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校、豪モナシュ大学の国際研究グループによる研究成果となる。米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」の3月9日付オンライン版(日本時間3月10日)に掲載された。

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