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福島の太陽光から水素、MCHで貯蔵→ディーゼル混焼

2020/03/25 22:08
工藤宗介=技術ライター
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 産業技術総合研究所(産総研)と日立製作所、デンヨー興産(東京都中央区)は、福島県の再生可能エネルギー電力で製造した水素を貯蔵、輸送して水素混焼発電機システムで発電するサプライチェーン技術の実証成果を公表した。出力300~500kW、水素混焼率40~60%で合計1000時間以上の稼働実績を達成した。3月18日に発表した。

 今回実証した水素サプライチェーン技術は、太陽光発電電力を用いて水を電気分解して製造した水素とトルエンを水素キャリアであるメチルシクロヘキサン(MCH)に化学変換して輸送するもの。MCHは、常温常圧で液体の有機化合物であり、理論的には1Lの液体MCHに500Lの水素ガスを貯蔵できる。

福島産水素サプライチェーンのイメージ
(出所:産総研)
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 産総研・福島再生可能エネルギー研究所(福島県郡山市)は今回、最大30Nm3/hの水素製造能力のアルカリ水電解装置、凝縮器、水素化反応器からなる水素キャリア製造システムを開発した。工程を可能な限り省いたシンプルな構成で製造コストを半減させたという。

 アルカリ水電解装置は電力変動に応じて製造される水素の流量や純度が大きく変動することから、従来は水素生成装置、水素タンク、圧縮機などの付帯設備により変動の影響を緩和させていた。

水素キャリア製造システムの違い
(出所:産総研)
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 再エネ発電電力に合わせて変動する水素流量に対応してリアルタイムで反応条件を最適に保つために、MCHを製造する水素化反応器内で起こる物理・化学現象の定常データをもとに作成した操作条件の最適化制御マップを制御器に組み込み、反応を制御する手法を確立した。これにより、水素が変動して製造されても水素化反応の選択率を99.6%以上とし、反応複製物を少なく抑制することに成功した。

 さらに産総研、日立製作所、デンヨー興産は、ディーゼルエンジンをベースとした水素混焼発電機システムを保土谷化学工業の郡山工場に設営。日立製作所が開発した脱水素ユニットを用いてMCHから水素を分離し、同工場で生産された水素をともに水素混焼試験を実施した。

 発電出力300kWの条件では発熱量割合60%の水素を軽油と混焼させ700時間、500kW条件では同40%の水素を300時間燃焼させ、合計1000時間以上を稼働した。また、300kW条件では、水素割合を短時間80%以上とすることで軽油の使用量を80%以上削減できることを確認した。大きなCO2排出削減効果が期待できるとしている。

福島県水素サプライチェーンの実証設備
(出所:産総研)
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 福島県の2017~2019年度「福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業(再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業)」に関連して実施した。今後は実証成果をもとに、MCH水素キャリアを活用することで再エネを平準化して需要家に電気と熱を安定的に供給したり、石油コンビナート・鉄鋼・化学プラントから生成される副生水素を燃料として地産地消する事業モデルの普及拡大を目指す。

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