美作市の「太陽光パネル新税」、市議会で4度目の「継続審査」に

特定納税者に加え、約160の小規模発電事業者にも事前説明へ

2020/03/26 22:28
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

 岡山県美作市の市議会は、3月25日に定例会本会議を開き、美作市が導入を目指している「事業用太陽光パネル税」を創設する条例案を審議し、「継続審査」とする提案に賛成多数で同意された。継続審査となったのは、これで4度目となる。

 継続審査となった理由は、市による事前説明が、納税対象となる約163事業者のうち、納税額の多い特定納税義務者に該当する3事業者に限定されているからだ。そこで、残りの小規模発電所の納税対象者に対しても、事前説明と意見集約を行ったうえで、その内容を踏まえて審議するとした。

 「太陽光パネル税」は、地方税法に基づく法定外目的税で、事業用太陽光発電所のパネル設置面積に応じ、発電事業者に課税するもの。具体的には、パネル1m2当たり50円を5年間、課税する構想を掲げている。課税対象は、出力10kW以上の野立てタイプの事業用太陽光発電所で、建築物の屋根上に設置した太陽光パネルは含まない。 税収は1年で約1億円、5年間で5億円を見込んでいる。 税収の使途(目的)は環境保全と防災対策のほか、町民の生活環境の維持向上としている。

 仮に導入されれば全国で初めてとなり、他の地方自治体にも広がる可能性が高いことから、注目を集めている。

 新税の条例案は、特定納税義務者からの質問に対して市側の回答が遅れるなどで、市議会で審議に入れず、2019年6月と9月の定例会とも継続審査となった。昨年12月の定例会では、初めて本格的な審議を行ったものの、納税対象者への説明が不十分などの理由で、継続審査となっていた。

岡山県美作市は「パネル新税」の創設を目指している
(出所:日経BP)
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専門家2人の見解は割れる

 その後、市議会では、この分野に詳しい弁護士と大学教授を招いて、市の目指しているパネル新税の実現性や課題など関して、意見を聞く機会を設けた。2人の専門家の意見では、弁護士がパネル新税には課題が多く懐疑的との立場だったのに対し、大学教授は、市の構想するパネル新税に概ね肯定的だった。

 両者の意見は割れたものの、「特定納税義務者以外も含め、広く納税者に対して事前に説明して理解を求めていくべき」との指摘は共通していた。しかし、現時点で市による事前説明は、特定納税義務者に限定されており、それ以外の約160事業者に対しては、事前説明や意見集約の場を設けていない。そこで、議会は、市に対して、特定納税義務者以外にも事前説明と意見集約を実施すべきと提案し、市行政当局もこれを受け入れた。

 こうした経緯から、3月の定例会では継続審査とし、市による約160事業者への事前説明と意見集約の内容を踏まえて、6月の定例会で審議することになった。市では、新型コロナウイルスへの対策もあり、どんな形で事前説明と意見集約の機会を作るかは、今後、検討してきたいとしており、その手法が注目される。

 このほか、3月25日の定例会では、2人の専門に対して、意見を求めた論点を紹介した。主なものは、「発電設備に課税する固定資産税と二重課税になるのではないか」「環境保全や生活環境の改善に活用するという税収の使途が正当なものか」「再生可能エネルギーを推進する国の政策と整合しているか」などが、挙げられた。

 これらの論点のなかでも、法定外目的税の創設で問題になりやすい「二重課税問題」が、今回の定例会でも、議論となった。

 パネル新税の導入を目指す美作市の行政当局では、この点に関して、「固定資産税の課税標準(課税する対象)は発電設備資産の評価額であるのに対し、パネル新税は、パネルの面積なので、二重課税ではない」と説明している。

 今回、招いた専門家のうち、大学教授は、この美作市行政当局の考え方を概ね支持しているものの、弁護士は、「金額と面積という違いはあっても、太陽光パネルは固定資産税が課税する発電設備全体の一部なので、事実上、二重課税といえる」との見解だった。

 パネル新税が「二重課税」となれば、パネル新税の導入後、納税者からの訴訟に対して、市が敗訴するリスクが高まることもあり、議員から、専門家の意見を踏まえてパネル新税が二重課税になるのかどうか、さらに理解を深めるべきという意見があった。