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阪大、海水を原料に太陽光でアンモニア合成

2020/04/09 22:35
工藤宗介=技術ライター
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今回開発したBiOCl-OVs触媒の模式図と反応メカニズム
(出所:大阪大学)
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照射時間とアンモニア生成量、太陽光変換効率の関係
(出所:大阪大学)
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 大阪大学は4月3日、太陽光を用いて、海水と窒素ガスを原料に常温・常圧下で非常に高いアンモニア合成活性を示す光触媒技術を開発したと発表した。豊富な天然資源である海水を用いた人工光合成反応の実用化が期待される。

 アンモニアは水素キャリアとしても有望視されており、最終的にアンモニアから水素を取り出して利用すれば、太陽光由来の水素エネルギーシステムの一翼を担える可能性もある。

 従来のアンモニア合成は、非常に高い水素圧力と温度下で行われる。それに対し光触媒反応は、原理的には太陽光を用いて水と窒素ガスからアンモニアを製造(1/2N2+3/2H2O→NH3+3/4O2)できる。しかし、通常の光触媒では、水の四電子酸化(2H2O→O2+4H+4e)と、N2の六電子還元(N2+6H+6e→2NH3)を進めることが難しかった。

 研究グループは今回、ビスマスオキシ塩化物半導体に表面酸素欠陥を形成させたBiOCl-OVs光触媒を開発した。この粉末触媒を、海水などの塩化物イオン(Cl)を含む水溶液に懸濁させ、窒素ガス流通下で太陽光を照射することで、極めて効率良くアンモニアを合成できることを見出した。

 この触媒は、紫外線を吸収することで電子と正孔を生成する。触媒表面の酸素欠陥はN2の還元サイトとして働く(N2+6H+6e→2NH3)一方、正孔は触媒層間のClを酸化してCl2を生成する(2Cl→Cl2+2e)。この反応は水の酸化反応(2H2O→O2+4H+4e)よりも極めて進行しやすいことから、生成したCl2は速やかに次亜塩素酸(HClO)になり(Cl2+H2O⇌HClO+H+Cl)、紫外線を吸収してO2とClに分解される(HClO→1/2O2+H+Cl)。

 これらの一連の反応により、結果的に水の電子がN2還元に使われ、水を電子源とするアンモニア合成が可能になる。正孔による酸化反応で触媒層間のClは失われるが、溶液中のClが補填されることで光触媒活性が維持され、安定的にアンモニアが生成される。海水を反応溶液に用いた場合でも、太陽光の変換効率0.05%以上と、一般植物による天然光合成(−0.1%)に匹敵する効率を実現した。

 太陽光の化学エネルギーへの変換は古くから研究されていたが、水の酸化は極めて進行しにくい反応のため、高効率変換の妨げとなっていた。今回開発した、正孔によるオキシ塩化物層間Clの酸化、生成したHCIOの光分解、Clの補填による触媒構造の維持、を組み合わせることで、水の酸化を促進できる。今回の技術を応用することで、さらに高性能なアンモニア合成触媒の創製が期待される。

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