福島県葛尾村、自営線マイクログリッド着工、「メガソーラー+蓄電池」で

電柱150本、総延長5kmの配電網を独自に構築

2020/04/20 15:08
金子憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

託送料金の負担なくす

 福島県葛尾村と福島発電(福島市)の出資で発足した地域新電力(小売電気事業者)である葛尾創生電力(葛尾村)は、村内でのマイクログリッド事業に使う自営線を敷設するための電柱などの設置工事に着手した。

 再生可能エネルギーを主体にしたマイクログリッド事業としては、国内で最大規模になる。

 葛尾村は、福島県北東の阿武隈山系に位置する緑豊かな高原の村。東日本大震災に伴う原発事故で帰宅困難区域に指定されたが、2016年6月に一部を除き避難指示が解除された。人口1410人のうち、約3割が帰村している。

 葛尾創生電力は、小売電気事業のほか、特定送配電事業(マイクログリッド事業)と、太陽光発電所に対するO&M(運営・保守)サービスの3つの事業を手掛けていく。村とともに出資した福島発電は、福島県などが出資する太陽光発電の事業会社。葛尾創生電力の社長は葛尾村副村長の松本弘氏、副社長は福島発電社長の鈴木精一氏が務める(図1)。

葛尾創生電力の事業イメージ
(出所:葛尾創生電力)
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 3事業のうち、特定送配電事業は、「葛尾村スマートコミュニティ事業」として展開する。同村中心部でエネルギー地産地消に取り組むもので、具体的には、メガソーラー(大規模太陽光発電所)と蓄電池を新設し、自営線などで構成するマイクログリッドによる電気供給サービスを展開する。自営線を持つことで東北電力の電力系統を経由せず、託送料の負担なしで顧客にメガソーラーの電力を販売できる。

テスラ製蓄電池を導入

 今年2月には、マイクログリッドに連系するEV(電気自動車)充放電器を設置するとともに、配電線を敷設するための電柱の設置を始めた。4月からメガソーラーと受変電設備、蓄電池の設置に取り掛かり、8月以降、試験運用を経て12月に完工する予定だ(図2)。

電柱150本、総延長5kmの配電網を独自に設置する
(出所:日経BP)
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 プロジェクト全体の建設については、葛尾創生電力が積水ハウスと請負契約を結んでいる。メガソーラーの出力は約1.7MW、蓄電池の容量は約3MWhで、太陽光パネルはアンフィニ製、パワーコンディショナー(PCS)はドイツ・SMAソーラーテクノロジー製、蓄電池は米テスラ製のリチウムイオン電池を導入する。

 自営線の総延長は約5kmで150本の電柱を建てて、配電線を高架で敷設する。この配電網は、きんでんが施工する。スマートコミュニティ事業の総事業費は約8億円で、そのうち約5億3000万円を補助金で賄う。

 自営線マイクログリッドでは、低圧需要家・約150件などをサービス対象に想定しており、年間の電力需要は約260万kWhになる。この需要に対し、年間予想発電量・約250万kWhのメガソーラーとその余剰電力を貯めた蓄電池で電力を供給する。

 自営線マイクログリッドは、東北電力の電力系統と連系しており、雨天が続いた場合など、太陽光と蓄電池だけで需要を賄えない場合、商用系統から供給を受ける。ただ、マイクログリッド側から商用系統に送電(逆潮)できないため、葛尾創生電力は、CEMS(地域エネルギー管理システム)で制御し、蓄電池の充放電を最適に管理する。想定では、総需要の5割程度は、マイクログリッド内のメガソーラーで賄えると見ている。

再エネO&Mで雇用創出

 特定送配電事業により電力を供給する需要家については、独自のスマートメーターを設置し、MDMS(スマートメーターの運用管理システム)を通じて、電気料金を管理して、請求業務までを担う。

 さらに、災害時に東北電力の商用系統が停電になった場合、系統から遮断して、マイクログリッドを独立して運用して給電するほか、メガソーラーからの電力をEVに充電して、マイクログリッド外の需要家などにも、EVを通じて電力を供給する(図3)。

電気自動車(EV)に充電して太陽光の電気を「運ぶ」
(出所:日経BP)
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 また、葛尾創生電力は、特定送配電事業とは別に須賀川瓦斯の取次として、「かつらおのでんき」のサービス名で営業し、電力を販売する。さらに、2021年4月からは、小売電気事業者として登録し、商用系統を使って自ら電気を供給する。契約電力量の目標は10MW。

 加えて、葛尾創生電力は、マイクログリッドに連系する1.7MWのメガソーラーのO&M(運営・保守)を自社で手掛けるほか、他社の再エネ設備のO&Mサービスや維持管理事業を手掛けることで、収益機会を増やし、地域雇用の創出を目指す。

 再生可能エネルギーによるマイクログリッド事業としては、宮城県東松島市の「スマート防災エコタウン」や千葉県睦沢町の「むつざわスマートウェルネスタウン」などがあるが、「葛尾村スマートコミュニティ事業」は、再エネの規模や供給戸数の面で国内で最大規模になる(関連記事:「千葉大停電」下でも、道の駅と住宅に電気と熱を供給)(関連記事:国内初! 太陽光と蓄電池による「自営線マイクログリッド」)。