宇久島の480MW、営農型は「1~2割」に、パワコンはTMEICなど検討

国内最大の太陽光プロジェクト、京セラなど9社が500億円出資

2020/04/28 19:53
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 京セラ、九電工など6社は4月28日、長崎県の五島列島の一つ、宇久島における出力約480MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)について、特定目的会社(SPC)「宇久島みらいエネルギーホールディングス」への出資に関する契約を締結したと発表した。

 国内最大規模の太陽光発電プロジェクトで、実現に向けて曲折があったが、ようやくSPCへの出資の発表まで進み、事業化に向けて本格的に動き出す。

 両社のほか、タイのSPCG、東京センチュリー、古河電気工業、坪井工業が発表に名を連ねた。この6社を含めた9社による出資が、すでに完了している。今回の契約に基づく出資額は、約500億円となっている。

 EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスを担う九電工は同日、建設工事の受注も発表した。

 6社の発表によると、プロジェクトの総費用は、2000億円程度としている。太陽光パネルの具体的な設置場所や設置手法など施工費が変動する余地が残っているため、実際には1500億円~2000億円と幅広く見積もっている中で、保守的な数値を公表しているようだ。

 2000億円程度の総費用は、金融機関による融資とSPCの資本金で賄うとみられる。今回の発表では、SPCの資本金が500億円としていることから、金融機関による融資額は1500億円程度を想定しているとみられる。融資は、みずほ銀行と十八銀行(長崎市)が取りまとめる。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価(税抜き)は、40円/kWhである。稼働後の年間発電量は、一般家庭約17万3000世帯分の消費電力に相当する、約51.5万MWhを計画している。

 発電した電力は、佐世保との間に新たに敷設する海底ケーブルを通じて送電する。海底ケーブルの距離は約64kmで、HVDC(高圧直流送電)と呼ばれる高電圧の直流で送電する。

 今回の発表では、「太陽光発電所の建設を、2020年度より開始」という表記がある。これは、発電設備の設置工事を指す。

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五島列島の北端に位置
南西にある寺島にも太陽光パネルを並べる(出所:京セラ)

 実際には、このための準備に当たる工事は2019年夏に始まっている。巨大な規模の発電所を、人口約2000人という規模でインフラに限りがある島に建設するには、いきなり発電設備の設置工事を本格的に始めることは難しく、さまざまな準備や環境整備が必要なためである。

 まず本格的な施工に備えた、準備のための工事が必要で、例えば、先行隊となる作業員向けの宿舎を建て、そこに作業員が住めるようになってから、ようやく本格的な作業員用の宿舎を建てる。こうして宇久島内に宿泊しながら作業できる従事者の数を増やしながら、土木や伐採、発電設備の設置に着手できる。

 こうした工事を、2019年夏時点で手掛け始めていた(関連コラム:480MWの「宇久島プロジェクト」、8月にようやく着工!)。

 これによって、経済産業省による「未稼働案件への措置」への対応もクリアできた。FITの当初3年間の認定分を、その買取価格のままで売電する権利を確定できる期限として、2019年8月中に着工し、かつ、同年9月末までに工事計画書が受理されている必要があった。

 9月以降に着工がずれ込むと、売電単価が40円/kWhから21円/kWhに下がり、事業性が大きく低下しかねなかった。宇久島のプロジェクトはこの条件を満たし、40円/kWhのまま事業化できた。

 この工事計画書の受理とほぼ同時期に、連系出力も変更した。従来の480MWから「400MW」に、80MW分引き下げた(メガソーラーランキング:宇久島の連系出力は「400MW」に縮小)。太陽光パネル出力もわずかだが変更し、480MWから「479.2788MW」に変えている。

島の中央の沿岸部から、海底ケーブルが敷設される
2019年7月に撮影(出所:日経BP)
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 九電工によると、工期は2023年6月末までを予定している。受注額は1400億円程度と公表した。工事の最盛期には、1000人~2000人が従事する見込みという。

 1400億円程度という工事費を大きく左右する一つは、「営農型」の比率となる。宇久島のプロジェクトは、地上設置型と営農型の両方からなる。

 営農型は、農地の一部に支柱を立てて、農地の上に隙間を空けながら太陽光パネルを並べ、農作物と太陽光発電で日光を分け合い、農業と太陽光発電事業を両立する手法である。基礎や架台のコストが高くなるため、営農型を採用する場所を少なくし、通常の野立て型太陽光を増やせれば、工事のコストは下がる。

 営農型を採用するのは、地主の意向や、農地転用に関わる農業委員会や県、国などの意向によって、恒久的な農地転用を実現しにくい場所である。

 現在のところ、営農型の比率は「1割~2割」にとどまるとしている。

 太陽光パネルは、京セラ製を採用し、約150万枚を並べる。

 パワーコンディショナー(PCS)は選定中で、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、ドイツのSMAソーラーテクノロジー製のどちらかを採用することを検討している。

太陽光パネルの設置を予定するエリアのひとつ
2019年7月に撮影(出所:日経BP)
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