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「赤錆」の超微粒子化で光触媒、高効率に水素製造、神戸大

2020/05/18 23:36
工藤宗介=技術ライター
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メソ結晶光触媒電極の構造と水分解特性
(出所:神戸大学)
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ヘマタイトメソ結晶の光伝導度
(出所:神戸大学)
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ヘマタイトメソ結晶における光水分解のメカニズム
(出所:神戸大学)
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 神戸大学は5月1日、光触媒の高効率化技術を開発し、安価・安定で幅広い可視光を吸収できる光触媒材料であるヘマタイト(赤錆)の変換効率を理論限界値(16%)の42%まで向上させることに成功したと発表した。

 太陽光と水から水素を作り出す光触媒の実用化には、現状数%にとどまっている太陽光エネルギーの変換効率を10%程度以上に向上させる必要がある。新材料の探索に加えて、光触媒自体のポテンシャルを最大化できる共通基盤技術の確立が求められている。

 光触媒反応の効率が低下するのは、光照射によって生成した電子と正孔が基質分子(この場合は水)と反応する前に再結合してしまうのが主な要因だった。これまでに研究グループは、光触媒の微粒子(数十ナノメートル)を精密に並べることで電子と正孔の流れを制御する「メソ結晶技術」を開発してきた。

 今回、メソ結晶を構成するヘマタイトを約5nmの超微粒子化し、さらにメソ結晶を透明電極基盤に集積・焼結することで導電性と水分解性能に優れたメソ結晶光触媒電極を開発した。超微粒子化によって粒子同士の接触面積が増え、焼結する際に生成する酸素空孔の量が増加。その結果、電子密度が増大し導電性が向上した。

 電子密度の増大は、メソ結晶表面に大きなバンドの曲がりを形成する。これにより初期の電荷分離が促進されるとともに、表面に正孔が集まりやすくなる。この効果は、超微粒子から構成されるメソ結晶で最大化され、水分解のボトルネックとされる水の酸化反応が高効率に進行することを見出した。

 メソ結晶表面に助触媒を付着させて疑似太陽光を照射した結果、1.23Vの電圧印加で5.5mAcm-2の光電流密度で水分解反応が進行することが分かった。これは、ヘマタイトにおける世界最高性能となる。また、100時間の繰り返し実験においても安定的に動作した。

 今回開発した技術は、ヘマタイト以外の金属酸化物にも適用できると期待される。今後、ヘマタイトメソ結晶光触媒電極の更なる効率化と再調光水素製造システムへの導入を産学協働で進めるとともに、人工光合成を含むさまざまな反応系に応用し展開する。

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