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「水素インフラの進展は大手電力の姿勢がカギ」、都内で水素シンポ

2020/05/19 16:04
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」
川崎重工が開発・製造した(出所:川崎重工)
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世界最大の再エネによる水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」
東芝エネルギーシステムズ、岩谷産業、東北電力、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する(出所:東芝)
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 5月15日、「水素エネルギー社会の実装とグローバル連携」と題したシンポジウムがオンラインで開かれ、エネルギーの研究者のほか、水素インフラに取り組む企業幹部などが参加し、講演やパネルディスカッションを行った。

 これは、日本経済新聞社と日経BPが主催する「日経SDGs大丸有フェス 日経イノベーションフォーラム」の一環で開かれたもので、新型コロナウイルス感染症の感染拡大対策の観点から無観客で行い、インターネットを通じて全国にライブ配信された。

 シンポジウムでは、冒頭に東京工業大学の柏木孝夫特命教授が基調講演を行い、日本の水素戦略についての解説のほか、「電気事業法の改正により、配電ライセンス制の導入とVPP(仮想発電所)のアグリゲーターが正式に位置づけられたことで、地域社会でも水素エネルギーの利活用が進む下地ができた」との見解が示された。

 これを受け、日本水素ステーションネットワークと岩谷産業の幹部が講演し、日米で燃料電池自動車(FCV)向けの水素ステーションへの投資が活発化するとの見通しを明らかにした。国内では2030年に900カ所を計画しているが、米加州やドイツ、中国ではそれを上回る計画を掲げており、国内外で普及が加速する見通しという。

 また、神戸市長と川崎重工業、J-POWER(電源開発)からは、オーストラリアの褐炭から製造した水素を液化して、神戸市に運搬してコージェネレーション(熱電併給)システムの燃料に使う「国際水素サプライチェーン」計画の進捗状況などが紹介された。

 昨年12月の川重による液化水素運搬船の進水式に先駆け、オーストリアでは昨年7月に水素・液化積荷基地の起工式を開催。神戸では、国内最大となる2500m3の液化水素タンクなど液化水素荷役基地の完成が間近で、今年度下期の実証運用を目指しているという。

 一方、東芝エネルギーシステムズは、今年3月に開所式を行った「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」などを説明した。FH2Rは、敷地内に併設した20MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)の電気で水電解により水素を製造し、まずは東京オリンピック・パラリンピックの会場で使うFCVなどに供給する計画という(関連記事:20MWのメガソーラーを「自家消費」、浪江町で水素製造)。

 また、清水建設は、太陽光など再生可能エネルギー由来水素を建物や街区で利用するシステムに取り組んでおり、産業技術総合研究所・福島再生可能エネルギー研究所(FREA)と連携した研究活動などに関して紹介した。

 最後のパネルディスカッションでは、これら企業幹部のほか、国際大学大学院の橘川武郎教授、オーストラリアの水素プロジェクトに関わってきたリチャード・ボルト氏(Nous Group・Principal)が加わり、水素社会の実装に向けた課題などを議論した。

 現在、オーストラリアでは、日本と連携した褐炭による水素製造など、主なもので9つの水素プロジェクトが進行中という。ボルト氏は、「水素エネルギーの普及には、政策協調により水素需要を拡大し、大規模な投資を促すことで価格を低減することが必要」と指摘。

 橘川教授は、「水素コストを下げるには、燃料電池の普及による需要拡大だけでは不十分で、カギを握るのは大規模な火力発電の燃料に水素を使うこと。しかし、国内電力大手は電源開発を除いて、水素発電に消極的」と指摘した。今後の方向性として、「ガス業界と連携して、都市ガスパイプラインに水素を混ぜる手法も検討の余地がある」とした。

 今回の水素シンポジウムの様子は、日経チャンネルでもオンデマンドで配信している( https://channel.nikkei.co.jp/e/suiso0515 )。

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