日本では「再エネ輸入」が経済的、米調査会社が試算

15種の「再エネキャリア」をコスト比較

2020/05/23 00:13
工藤宗介=技術ライター
川崎重工が開発・製造した液化水素運搬船
(出所:川崎重工)
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 米国の先端技術・市場調査大手のラックスリサーチは5月21日、再生可能エネルギーの「輸入」に関する調査結果を発表した。それによると、日本やシンガポール、オランダなどの国では、自国のエネルギー需要を国内の再エネ電力だけで確保することは困難であり、経済成長と非炭素化を同時に達成するには革新的な再エネキャリア(運搬媒体)を開発し、ゼロカーボンエネルギーのサプライチェーンを構築する必要があるという。

 調査報告書「Evolution of Energy Networks: Decarbonizing the Global Energy Trade(エネルギーネットワークの発展:世界のエネルギー貿易の脱炭素化)」では、電力、水素、合成メタン、アンモニアといった従来キャリアから、液体有機水素キャリア(LOHC)、バナジウム、アルミニウムなどのより先進的なキャリアまで、15種類の再エネキャリアの生涯コストを評価した。

 その結果、約1000kmまでの近距離では電力線の建設が、遠距離ではLOHCや液体水素などの船舶輸送が最も費用対効果が高かった。ただし、現行のエネルギーキャリアは、いずれも石油や液化天然ガス(LNG)を完全に代替するほどのコスト競争力は持っていない。

 また、すべての再エネキャリアにおいて、地理的に好ましくない条件下において自国内で太陽光・風力発電量を増加させるよりも、エネルギーを輸入する方が50~80%低コストであることが分かった。そのため、炭素排出削減にコミットする国々では今後、数十億ドル規模で「再エネ輸入」のためのインフラ構築に向けて動き出すと考えられる。

 再エネ輸入インフラを導入する最初の転換点は、新しい高圧直流送電線による輸入電力が低炭素天然ガスタービンより安くなる2030年頃と予測する。また、次の転換点は、液体水素の輸入が低炭素蒸気メタン改質より安くなる2040年頃としている。

 ゼロカーボンエネルギーのサプライチェーンの確立には数十年が必要だが、今後10年間で戦略提携やパイロットプロジェクト実施などの動きが活発化すると予想される。すでに川崎重工業、三井物産、ノルウェーのエクイノール、蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどは非炭素エネルギー貿易路の開拓に動いており、5000億ドル相当の再エネ輸入市場をめぐる動きが活発化すると見込んでいる。