小売電力市場メカニズムの枠組み、早大とMITが開発

2020/05/29 10:29
工藤宗介=技術ライター
今回提案する電力市場の概念図
(出所:早稲田大学)
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 早稲田大学、米マサチューセッツ工科大学らの研究グループは、配電系統上にある各地点の電力量に対して適切な価格を提示する包括的な小売電力市場メカニズムの枠組みを世界で初めて開発したと発表した。主に経済学で取り組まれてきた市場メカニズムとシステム制御分野で開発された最新の分散最適制御の理論を電力分野に応用した。

 家庭やオフィスビルにおける太陽光発電や蓄電池などの分散型エネルギー源により生じる各地点の電力の過不足を、各地点の電力利用者の意思を反映しながら、近所とのコミュニケーションだけで配電ネットワーク全体で経済的に最適融通する。こうした方法を、市場メカニズムに基づいて技術的に可能にした。

 各地点の小売価格は、卸電力市場の価格とその時に必要な地点ごとの需要量と供給量の計画値の差によって決定される。各地点の近傍と情報を交換し続けることで最適な小売価格が決まり、同時に各地点の計画電力量と小売電力市場が最適化されるという。電力市場で合意された計画量に基づき実際に電力が送配電される。

 電力利用者の分散意思決定の下で高速約定が可能なアルゴリズムを用いることで、最適化への収束を理論的に保証する。送電系統の市場設計と、配電系統の市場設計を分離して行うことができ、実応用に展開しやすい仕組みとした。

 MATLABによるシミュレーションを用いて、実際にある日本の配電系統を模擬したモデルと、米国電気電子学会配電系統モデルを用いた実時間実装の可能性を検討した。日本の配電系統モデルではデマンドレスポンス(DR=需要応答)の効果として市場導入前の電力消費量に比べて約5%削減でき、米国の電力システムにも適用可能であることを確認した。

 今回の研究成果により、米国や日本で実現可能な小売電力市場を含めたリアルタイムで行う市場運用基盤モデルの仕組みを提案していく。特に、日本で現在進められている卸電力市場構築に対する技術的解決の理論的な基礎となることが期待される。