沖縄科学技術大学院大学(OIST)は7月21日、高い変換効率と安定性を両立したペロブスカイト太陽電池モジュールを開発したと発表した。16.6%の変換効率で、2000時間の照射の後でも、初期性能の約86%を維持した。
ペロブスカイト太陽電池は、それぞれ特定の機能を持つ多数の層から構成される。研究チームは今回、1つの層だけに焦点を当てるのではなく、デバイスの全体的なパフォーマンスと各層の相互作業について研究した。5cm×5cmサイズ(面積22.4m2)の太陽電池モジュールを使用し、活性ペロブスカイト層と電子輸送層の間にEDTAK層を追加することで安定性が向上することを見出した。
EDTAKが、活性ペロブスカイト層と電子輸送層(酸化スズ)が反応するのを防ぐ。効率についても、EDTAK内のカリウムが活性ペロブスカイト層に移動し、ペロブスカイト表面の小さな欠陥を「修復」することで、移動中の電子と正孔をトラップするのを防ぎ、より多くの電気を生成できる。また、EDTAKが電子輸送層の導電性を強化することで、ペロブスカイト層から電子が収取されやすくなった。
同様に、活性ペロブスカイト層と正孔輸送層の間にEAMAと呼ばれるペロブスカイト層を追加することで、正孔輸送層が正孔を受け取る能力を向上した。EAMA処理されたデバイスは、湿度と温度のテストでも優れた安定性を示した。EAMAペロブスカイト材料が粒界を満たすことで、活性層表面のクラック形成を防止することを確認したという。
さらに、正孔輸送層自体にも変更を加え、PH3Tと呼ばれる少量のポリマーを混合した。PH3Tポリマーは、層に撥水性能を与えて耐湿性を高めるとともに、上部電極の金の微小粒子が正孔輸送層を通って活性ペロブスカイト層に移動するのを遅らせることでモジュール寿命を大幅に伸ばした。このほかにも、保護コーティングにガラス層とともにポリマーのパリレン薄層を追加した。
ペロブスカイト太陽電池は、製造コストが安価で変換効率はシリコン太陽電池に匹敵するが、モジュールサイズを拡大すると材料の欠陥がより顕著になり効率が急激に低下するのが課題だった。研究チームは今後、大規模な商業用太陽電池技術の開発に向けて、より大きな太陽電池モジュールに今回開発した技術を導入することを目指す。