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アップル、「サプライチェーンまで 100%再エネ」、2030年までに実現

自社の再エネ発電はすでに1GW

2020/07/27 21:36
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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自社の風力発電所
(出所:アップル)
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再エネ電力の80%以上は、自らの発電プロジェクト
(出所:アップル)
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太陽光発電所の例
(出所:アップル)
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 米アップルは7月21日、2030年までに同社のサプライチェーン、製品ライフサイクルまで包括して「カーボンニュートラル」を実現すると宣言した。

 「カーボンニュートラル」とは、事業活動における二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を相殺(差し引きゼロ)することを指す。実現に向けた手段は、再生可能エネルギー発電電力の活用と、エネルギー使用量の削減が主となる。事業活動に必要な電力すべてを再エネで賄うことが望ましいが、現実的には証書の購入といった取引を含めた手段で相殺される。

 アップルは2018年4月に、自社グループの全世界における拠点で、事業活動に関して「100%再エネ」を実現したと発表していた(関連ニュース)。これによって、自社グループではカーボンニュートラルを達成している。

 今回の宣言は、調達先の部材・部品メーカーを巻き込み、その範囲をもっと広げたものだ。同社の製品製造や販売・サービスに関するサプライチェーン、製品ライフサイクルを通じて実現するとした。今後、サプライヤーに対し、再エネ利用や脱炭素型製造プロセスへの転換を要請する圧力が強まっていくことが予想される。

 アップルは、オバマ政権で環境保護庁長官を務めたリサ・ジャクソン副社長を迎えて以降、自社のブランド力や影響力を生かし、再エネ活用や地球環境の悪化抑制策を自社だけにとどまらずサプライチェーン全体に広げる施策を進めており、先鋭的な存在となっている。

 ただし、こうした動きはアップルだけの特殊な方針ではない。今後は幅広い分野で取引先まで含めた再エネ電力の活用が大きく求められると予想される。

 アップルの動向が大きく影響する電子部品・材料分野では、それがいち早くはじまった。関連メーカーの製品やサービスの品質、信頼性、価格などが拮抗している場合には、自社グループの事業活動を賄う「再エネ比率」によって採否が左右される状況が顕在化している。

 再エネ活用を、自社だけでなく取引先にも求めていく方針は、他の分野においても今後、世界的に広がっていくことが時間の問題となっている。

 今回の発表によると、アップルが使っている再エネ電力の80%以上は、自ら手掛けている発電プロジェクトによるものである。

 米国アリゾナ州、オレゴン州、イリノイ州などにおける再エネ電力プロジェクトが主なもので、その調達規模は1GW以上に達している。年間の調達量は、一般家庭15万世帯の消費電力量を上回る。

 こうした発電プロジェクトには、自社の出資比率が低い案件もある。今後はこれらマイナー出資案件の出資比率を高めると強調している。1億米ドル規模を投じる予定のRacial Equity and Justice Initiativeの一環として実行する。

 再エネ発電プロジェクトは米国以外にも広げている。例えば、スカンジナビアにおける世界最大規模の太陽光発電所の開発に着手した。フィリピンとタイでは、行政サービスが行き届いていない地域に再エネ電力を供給するプロジェクトに取り組んでいる。

 一方で、事業活動そのものにおける温室効果ガス排出量の削減にも取り組んでいる。この取り組みでは、製品への低炭素・再生材料の採用、電力利用効率を向上する製品設計、リサイクル技術の改善による磁石・タングステン・鉄の回収と再利用率の向上、さらなるリサイクル技術の革新を挙げている。

 この中には、アルミニウム関連のサプライヤー2社に投資・協力し、脱炭素型のアルミニウム精錬プロセスの開発を支援している例もある。この成果を、同日発表したノートPC「MacBook Pro」16型ディスプレイ搭載品に採用した。

 サプライチェーンにおけるエネルギー利用効率の向上にも踏み込む。アップルが採用済みの手法を導入するように働きかける。また、アップルが関与するUS-China Green Fund による1億米ドルの投資を通じてサプライヤーにおける省エネ活動を支える。

 アップル自身のさらなるエネルギー効率の向上も進める。同社が利用している新築と既築ビルの延床面積640万平方フィート以上の場所で、省エネに寄与する新たな投資によって電力使用量を約5分の1減らし、2700万米ドルの削減効果を生んだ。

 サプライチェーンにおいて、「100%再エネ」を公約したサプライヤーは70社以上に増えた。これらの企業によるアップル向け製品製造に要する電力は「8GW」としている。

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