「水素発電」に大きく前進、神戸市でメガワット級を実証

ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの安定稼働に成功

2020/07/29 07:01
山口 健=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
印刷用ページ

 天然ガスの代わりに水素を燃料として発電する「水素発電」技術が、実用化に向けて大きく前進した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業、大林組は、川重が開発したドライ低NOx水素専焼ガスタービンを使った市街地における実証試験を2020年5月に開始、順調に稼働しており、この技術に世界で初めて成功したと発表した(図1)。ドライ燃焼方式は従来式よりも発電効率が高く、NOx排出量も低減できるという。

図1●ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証試験プラント
(出所:NEDO)
クリックすると拡大した画像が開きます

 効率の向上幅は、計算上は1%近くを見込み、NOx排出量は排出規制基準以下となることを目指している。具体的な数値目標としては、発電効率として27%(ISO条件)、NOx排出量として35ppm以下としている。引き続き2020年度末まで、今回の水素ガスタービンから発生した熱と電気を病院やスポーツセンターなどの近隣施設に供給するシステムの技術実証を神戸市ポートアイランドで実施し、ドライ燃焼方式による水素発電の安定運用、および発電効率や環境負荷低減効果などの性能を検証していく。

化石燃料に代わる究極のクリーンエネルギー

 水素は、ガスタービンによる発電や燃料電池自動車(FCV)などさまざまな用途で利用が可能で、エネルギーとして利用する際にCO2を排出しない特性があるため、究極のクリーンエネルギーとして将来の中心的な役割を担うことが期待されている。この水素に関しては、日経BP 総合研究所が7月31日に発行する「世界水素ビジネス-全体動向編-」の中で、「作る」「運ぶ/貯める」「使う」ための各種技術の解説のほか、中国・韓国・欧⽶豪の戦略を分析、2050年までの水素普及シナリオを紹介している(「世界⽔素ビジネス-全体動向編-」の案内サイト)。

 今回の水素ガスタービンと排熱回収ボイラを組み合わせたコージェネレーション(熱電併給)システムからは、約1100kWの電力と、約2800kWの熱を蒸気または温水にて周辺の公共施設へ供給できる。1100kWの電力は一般家庭約400世帯分をカバーできる。この時、毎時、約200kgの水素を消費する。この水素消費量は、トヨタ自動車のFCV「MIRAI」を想定すると、約50台分を満充填することが可能となる。

 NEDOは水素社会の実現に向けた取り組みの一環として「水素社会構築技術開発事業」を進めている。その中で、水素と天然ガスを併用する発電方式を水素発電導入期に需要が見込める技術と捉え、2017~2018年度にかけて、川崎重工と大林組は、神戸市や関西電力などの協力を得て、局所的な高温燃焼によるNOx生成を抑制するため「水噴射方式」を採用し、天然ガスと水素の混焼から水素専焼まで対応できる水素ガスタービンの実証試験を実施してきた。この実証を通して、世界で初めて神戸市ポートアイランドにおいて水素専焼による市街地への熱電併給も達成している。

 2019年度から、ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの技術開発を実施しており、今回、その実証試験に成功した。

 従来の水噴射方式では、NOx排出量を抑えるために火炎の高温部へ水をスプレー状に噴射していたため、水の蒸発によって発電効率が低下するという問題があった。ドライ燃焼方式は水噴射方式に比べて発電効率が高くNOx排出量も低減できる一方、燃焼速度が速い水素燃焼において火炎の逆流を抑えながらいかに燃焼を安定させるかが課題だった。そこで、川崎重工が開発を進めてきた微小な水素火炎を用いた燃焼技術「マイクロミックス燃焼」を生かし、ドライ低NOx水素専焼ガスタービンを開発した(図2)。

図2●ドライ低NOx水素専焼ガスタービンと「マイクロミックス燃焼」のイメージ
(出所:NEDO)
クリックすると拡大した画像が開きます
  • 記事ランキング