福島で世界最大級の水電解システム稼働、太陽光の変動出力に対応(page 2)

2023年ごろの商用化を目指す旭化成の開発戦略

2020/07/29 23:19
山口 健=⽇経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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高稼働率と低電気代が商用化の鍵

 水電解システムを使って経済合理性がある水素を生産するためには、稼働率を高く維持することと、安い電力を手に入れることが必須の条件となる。旭化成によれば、「10%の稼働率では経済性は成立しない。実際は60%以上ないといくら電気代が安くても事業は成立しない可能性が高い」という。

 電気代に関しては、現在、ドイツでは産業向けが17~18円/kWhで、大口需要家向けには8~9円/kWhのオファーがあり、北欧の水力発電には2円/kWhの実力があるという。2~3円/kWhが見えてくると、天然ガス改質による水素製造コストの20円/Nm3と同等レベルが実現できるようになり、設備の減価償却後にはコストはさらに低くなり、事業性が高まっていくと見る。

 こうした背景から、旭化成は同社の水電解装置を中心とするP2Gビジネスがまず欧州で立ち上がると見て、実証プロジェクトへの参画を活発化させている。同社が参加している代表的なプロジェクトが、「h2 Herten」と「ALIGN CCUS」である。

 このうち「h2 Herten」は、ドイツ・ヘルテン市が炭鉱跡を再開発するプロジェクトの一環として、水素の研究施設を建設したものである(図2)。同市は、この研究施設を水素の研究ハブとする構想を持っている。建設費用の大部分は、ヘルテン市がある、NRW(ノルトライン=ヴェストファーレン州)の補助金によって賄われている。

図2●「h2 Herten」の研究施設の全景
ヘルテン市が炭鉱跡を再開発するプロジェクトの一環として、水素の研究施設を建設。建設費用の大部分をNRW州政府が負担(Photo:RDN/Markus Mucha)
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 旭化成は、同研究施設の一角を借りて、200kW程度の実証用小型アルカリ水電解装置を設置し(図3)、実証実験を実施している。この実証そのものは同社単独の実証プロジェクトであり、政府からの補助金は受けていない。同社の目的の一つは、顧客向けのショーケースとして活用することである。

図3●「h2 Herten」に設置されたアルカリ水電解装置
200kW程度の実証用小型アルカリ水電解装置を設置。風力発電からの実データを基にシミュレーターを使った変動運転を評価。製造した水素は、現在は大気へ放出しているが、将来的には研究施設内にある水素貯蔵タンクに貯蔵または研究施設に併設される別プロジェクトで使用している水素ステーションに供給したりすることも検討(出所:旭化成)
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 現在、水電解装置の運転には、系統からの電力を使用しているが、研究施設の近くに風力発電所があり、ここからの実データを元に、シミュレーターを使って出力が不安定な電力を想定した変動運転の評価を計画している。製造した水素は実験装置であるため現在は大気へ放出しているが、将来的には研究施設内にある水素貯蔵タンクに貯蔵したり、研究施設に併設される別プロジェクトで使用している水素ステーションに供給したりすることも視野に入れている。

 旭化成としてはこうした実証プロジェクトを通じて、ドイツ地方政府や顧客のニーズを把握して、将来的な受注、商用化を目指したプロジェクトへの参加を働き掛けていく考えだ。同社の設備は最大出力10MW(定格出力6MW)が基本単位になり、最近欧州で計画が出始めている最大出力100MWの設備を建設する場合は、10MWの水電解装置を10基並列に繋ぐことになる。

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