世界最大4GWのP2Gプロジェクト、再エネ由来アンモニアを製造

サウジアラビアのスマートシティの一環、1日650tの水電解水素

2020/07/31 17:34
藤堂 安人=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ
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 米Air Products、サウジアラビアACWA Power、サウジアラビアNEOMの3社は2020年7月7日、サウジアラビア北西部のスマートシティ「NEOM」のサイトに、世界最大となる4GWの再生可能エネルギーからの電力を使うP2G(Power to Gas)プロジェクトを建設・運営する契約を締結した、と発表した。

 Air Productsは大手産業ガス事業者、ACWA Powerは、エネルギー事業者、NEOMは「NEOM」の建設を進める政府系企業で、事業規模は50億米ドルに達する。事業形態としては、この3社が同プラントを均等に所有する形になる。

 ACWA Powerが同サイトで建設を進めている太陽光発電や風力発電といった再エネからの電力を使って、水電解装置でCO2フリー水素を1日あたり650t生産し、それを基に年間120万tの再エネ由来の「グリーンアンモニア」を製造するプラントとする。2025年に稼働予定で、世界各地にグリーンアンモニアを輸出する計画である(図1) 。

図1●NEOMで建設される計画のCO2フリー水素およびグリーンアンモニア製造プラントのフロー
再エネからの電力を使い、水電解装置で水素を製造し、ASU(Air Separation Units)で空気中から窒素を分離。水素と窒素でアンモニアを製造(出所:Air Products)
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 水電気分解装置には、独thyssenkrupp Uhde Chlorine Engineersのアルカリ型を採用するという。thyssenkruppのアルカリ型水電解装置は、1モジュール10MWでモジュールを連結することで大型化しやすく、今回の4GWクラスにも対応できるとする。

 アンモニア製造に必要な窒素については、Air Productsが開発したASU(Air Separation Units)設備を導入して、空気から分離する。水素と窒素からアンモニアを製造する設備には、デンマークHaldor Topsoeの技術を使うとしている。

 アンモニアを水素キャリアとして使って、タンカーで海外の需要地に運搬し、陸揚げ後は港湾施設に貯蔵して、トラックで水素充填ステーションに運搬する。ステーションでは、CO2フリー水素を分離して取り出して、燃料電池トラックやバスなどに充填して使うことが想定されている(図2) 。これにより、年間300万tのCO2と大気汚染物質の削減効果があり、これは70万台分のガソリン車が排出する量に相当するとしている。

図2●グリーンアンモニアの国際サプライチェーン構想
アンモニアを液化してタンカーで輸出し、需要地の港湾で貯蔵しトラックで水素充填ステーションに運搬。そこで水素を分離して、燃料電池トラックやバスに充填(出所:Air Products)
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 「NEOM」は、サウジアラビア政府が国家プロジェクトと進めているデジタル技術を駆使したスマートシティであり、2030年までに8万人が居住する新都市を建設する。エネルギー面では、域内の消費を再エネ100%で賄うほか、同国政府が強力に進めている脱化石燃料型の新しい経済システムのモデルケースにする狙いがある。その意味で、今回発表したグリーンアンモニアおよびCO2フリー水素を輸出するビジネスモデルは、同スマートシティ計画にとって、重要な位置づけとなる。

 ⽇経BP 総合研究所が発行した「世界⽔素ビジネス-全体動向編-」によると、欧州を中心に数十MWクラスのP2Gの実証プロジェクトが活発化しており、商用化に移行しつつある(「世界⽔素ビジネス-全体動向編-」の案内サイト)。P2Gを採算ベースに乗せるためには、量産規模とプラントサイズの拡大によるCAPEX(設備投資)の低下と、電気代の低下によるOPEX(運用コスト)の低下が重要になる。

 プラントサイズについては、欧州では現在、100MWクラスの検討が始まっているが、本格商用化はGWクラスが出てくる2023年以降という見方が多い。再エネの価格については、3セントユーロ(約3.5米セント)/kWhならば、化石燃料由来の「グレー水素」と競合できるという試算がある。

 今回、NEOMは再エネの価格や採算性については公表していないが、NEOMの立地は日照、風況ともに再エネ適地として優れていると強調している。同じ中東のアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビ首長国では、2GWのメガソーラーで、1.35米セント/kWhという世界最安の単価で売電するケースも出てきており(関連記事)、NEOMでも安価に再エネ電力を調達できる可能性は十分あるとみられる。

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