水素

都内に水素ステーションが着々、五輪で燃料電池車への供給に備え(page 2)

脱化石に向け「グリーン水素」狙うENEOS、低コスト化に奮闘

2020/08/03 00:35
宇野麻由子=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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将来的には「グリーン水素」

 これまでは主に化石燃料由来の水素を提供してきたENEOSだが、将来的に見据えるのは製造工程でも再生可能エネルギーを活用した「グリーン水素」だ。例えば、冒頭の東京五輪大会用車両に供給する水素の一部には、「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」で太陽光発電の電力を使った水の電気分解により製造される水素を利用する。

 ENEOSグループでは長期ビジョンとして「低炭素・循環型社会への貢献」を掲げており、2020〜2022年度を対象とする「第2次中期経営計画」などでも具体的な施策の1つとして「CO2 フリー水素の推進」をあげる。ただし再エネにとっても最適な環境とは言えない日本の場合、水素エネルギーが本格的に普及し需要が拡大した際には海外で製造された水素を海上輸送するのが現実的だ。水素の元となる資源や再エネが豊富な地域で水素を製造し、なんらかの形で日本まで輸送し、供給地の近くで水素を取り出すという方式だ。

 ENEOSは2018年8月に「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」に参画、オーストラリアの褐炭から水素を製造し排出されるCO2は地中に貯留(CCS)、水素は液化して海上を輸送する「褐炭水素プロジェクト」に加わり、同水素の商用化を検討している。

 また、2019年3月には水素の貯蔵・運搬に利用する有機ハイドライドを低コストで製造する技術の検証に成功したと発表した。用いたのはENEOSらが開発した有機ハイドライド電解合成技術で、有機ハイドライドの一種であるMCH(メチルシクロヘキサン)を水素とトルエンから合成するのではなく、水とトルエンの電気分解により直接製造するという手法だ。MCH合成に関する製造設備コストを約50%削減できると見込む(図2)(図3)。

図2●水の電気分解と有機ハイドライド電解合成技術との違い
水の電気分解では水の電気を与えて水素と酸素を作る。有機ハイドライド電解合成技術の場合は、トルエンと水に電気を与えてMCHと酸素を作る(図:ENEOS)
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図3●有機ハイドライド電解合成技術での合成の様子
今回の検証では、ペットボトルサイズで行った。今後、大規模化して検証を進めていく予定だ(写真:ENEOS)
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 今回の検証は、東京大学が主催する水素サプライチェーン構築に向けた社会連携研究に参画したもので、オーストラリア・クイーンズランド工科大学が開発した太陽光発電システムによる電力により電気分解し、千代田化工建設の技術によりMCHから水素を取り出した。実験ではペットボトルサイズだったが、その後スケールアップを進めているとする(図4)。

図4●有機ハイドライド電解合成技術によるサプライチェーンのイメージと従来法との比較
海上輸送技術の1つとして注目されているのが有機ハイドライド法だ。従来、CO2フリーのグリーン水素とする場合は、太陽光発電などで得られた電力を使って水の電気分解により水素を得る方法が想定されていた。今回の技術であれば、電気分解の際に直接MCHを合成できる(図:ENEOS)
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■変更履歴
1ページ第2段落の水素ステーション数、第6段落の東京大井水素ステーションの水素供給能力の表現に誤りがありました。本文は修正済みです。第10段落で誤解を招く表現がありましたので修正してあります。 [2020/08/03]
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